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【Confrontation with a helicopter.④(ヘリとの対決)】

 岩場を登ってゆくと、向こうから先にヘリから降りて俺に撃たれて負傷した2人が下りてくるところだった。

「今度はどうする?!」

 銃を構えるトーニに、おそらく彼らにもう戦う意思はないとだけ告げて、そのまま近づいて行った。

 2人とも一応銃はぶら下げていたが、俺たちの姿を見るなり、それを地面に落とし手を上げた。

 怪我をしている方の手が思う様に上がらなくて、プルプルと宙ぶらりんに震えているのが痛々しい。

 2人の前に立ち、弾帯を外しナイフを取り上げた。

 ボディーチェックをすると、1人は服の中に装着していたサスペンダー型のホルスターに拳銃を隠し持っていた。

 ホルスターから拳銃を抜く時、止めようとして男の手が少しだけピクッと動こうとしたのを目で制止する。

 かなり大きな銃。

 ブローニングM1911、ガバメントモデル。

 もっとも人気のある銃の一つ。

 しかもシリアルナンバーから、かなり初期型に近い事が分かる。

 整備上体は素人なりだが、外装は磨き過ぎて角の部分に円みが出て、刻印も霞んでいる。

「大切なものなのか?」

「お爺さんの形見です」

「お爺さんはアメリカの軍人だったのか?」

「ええ、朝鮮とベトナムに従軍しました。階級は歩兵曹長でした」

「お父さんは?」

「親父は只のサラリーマンです」

「君たちは?」

「僕もジョニーも同じ大学で、今はアーノルド・シュマイザーと言う民間軍事会社のアルバイトでここに来ました」

「アルバイトの募集は何で知った?」

「大学のサークルに連絡が来て。こう見えても、僕たちサバゲ―の世界では少し有名なんですよ」

「成程、身のこなしは良かったぞ」

 軍人なら落第に近いが、一般人としてはかなり優秀だろうと思い、一応褒めておいた。

「君もアルバイトなの?射撃の腕からすると屹度ロシアの諜報員や特殊部隊専門の養成所の生徒でしょっ?僕たちに怪我をさせたお詫びに、メアド交換しない?」

 “メアド!?”

 俺は驚きを表情に出さないで、首を横に振った。

「分かった!映画だ!君21石器フォックスの新人女優さんでしょう。そしてこの映画は君が主演のスパイアクションヒロインもの!そー言えば、こっちのオジサンどっかで見た事あると思っていたらターナーの親友役で出ていた役に立たない人じゃなかった?」

「なんだとぉ!?」

 怒ろうとするトーニを宥めた。

「残念だが、俺たちは学生でも映画のスタッフでもない。軍人だ。そしてこれはサバゲ―なんかではなく、撃たれたら本当に人が死んでしまう戦場だ」

 2人の傷の具合を見た。

 2人ともチャンとしたボディーアーマーを身に着けていたので、肋骨の骨折と、鎖骨の脱臼で済んでいる。

 一応捕虜になるのなら、基地で医者に診てもらう事も出来るが、どうするか聞いた。

「山を下りて国に帰ります。僕たちは実弾射撃が可能なサバゲ―として案内された。相手は首に賞金の掛かった“ならず者のザリバン兵が数人”だけどもしも君の言ったことが本当なら、僕たちは同じ白人同士で、しかも本物の軍隊と戦争ごっこをしようとしている事になる。これじゃあ僕たちの仲間が300人居ても犠牲者が増えるだけ。そう言うことだよね」

「ああ。麓についたら、皆にもその事を伝えておいてくれ」

「OK!」

「ああ。これ」

 預かっていたM1911を渡した。

「弾は抜いてあるし、ストッパーのノックピンが腐食で折れかかっているから、国に帰って銃砲店でメンテナンスして貰え。そのままの状態で撃つと大怪我をする」

「いいんですか?」

「家の宝なんだろう。その銃は飾ってこそ価値がある。お父さんにも屹度自慢の銃なのだろうからな」

「どうして、それが分かるの?」

「銃の磨き方が素人だから。だけど玄人とは比べ物にならない程、愛情に満ちた磨き方だ。君のお父さんも本当は軍人になりたかったのかも知れんな」

「でも何故軍隊に入らずに、会社員なんかになったんだろう?」

「君のお父さんの生まれ年は?」

「1966年ですが」

「お爺さんの行っていたベトナム戦争が終わったのが1973年だ。あとは自分で考えろ」

「わかった。じゃあGood Luck!」

「Good Luck!」

 自分も痛いだろうに、友人の肩を担いで山を下りて行く青年の後ろ姿を見ながら、敵の怖さと、我々の怖さを思い知らされていた。

 POCは今回も罪のない人たちを巻き込んでいる。

 ノートルダム大聖堂を焼き払おうとしたメヒアの腹心、ジュジェイのやり方と同じだ。

 と、言う事はやはりジュジェイもPOCの人間だったに違いない。

「親父がベトナム従軍者だと、子供は軍隊に入りたがらねえだろうな」

「分かるのか?」

「歳を聞いて分かったぜ。英雄だと思っていた親父の戦場は毎日ニュースで叩かれ、終戦で帰って来ても歓迎もされず、近所から薬中毒などを疑われて変な目で見られるんだ。まだ物事の本質を考えられねえ7歳の子供にとっては辛い状況じゃねえか」

「そうだな……」

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