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【Confrontation with a helicopter.②(ヘリとの対決)】

 俺にとって大切なのは、敵の狙撃手を倒す事ではない。

 むしろ、その逆。

 夢中にさせる事だ。

 相手に俺がグリムリーパーである事を分からせた上で、いま自分が有利な状況にあると思わせる事が出来たなら、ヘリ相手にグレネード弾を撃っている事に気が付いたとしても「バカな攻撃、当たるはずもない」と決めつけて自らの狙撃を優先しようとするはず。

 更に俺がグリムリーパーである事も大きい。

 なにしろ俺の命に関しては、昔そうだったように賞金が掛けられているに違いないから。

 奴らの人を操る戦術は全て金。

 例外もあるだろうが、一旦金に目が眩むと大事な事が見えなくなる。

 俺は敵を撃ち抜くことよりも、撃ち抜かれないように細心の注意を払って応戦した。

 ヒュッ。

 直ぐ傍で弾の通り抜ける音が聞こえる。

 バシッ。

 ヒュ~ン。

 近くの岩に弾が当たり、岩の欠片が飛び散って来るのと同時に跳弾の音も耳を霞める。

 敵もナカナカ腕がいい。

 このまま我慢するよりも、さっさと奴とまともに勝負をして片付けてしまいたいが、そうなると二度とヘリを堕とすチャンスは来なくなる。

 それに、そろそろ山の裏手に降りた奴が、こっちに顔を出す頃だ。

 どこに現れるかは分からないが、この場所が分かっている以上、ここを見下ろせる場所に来るのは確実だ。

 もしもその時までヘリを堕とせないでいれば、俺は何とかなるが、トーニの命が危ない。

 “トーニ!早くしろ!!”

 喉まで出かかっている言葉を、口に出す訳にはいかない。

 焦らして良い結果は期待できるはずもなく、だいいちグレネード弾による攻撃は俺自身がトーニに任せたはず。

 言って、どうにかなるような事でもない。

 “……!”

「わっ!!」

 偽装のために外して岩の隅に置いていたスコープが、敵の銃弾の直撃を受けて跳ね飛ばされキィーンという高い金属音が響く。

 その音が聞こえたのだろうか、トーニが雄たけびを上げながら隠れていた岩陰から飛び出した。

 エンジン音で聞こえないはずなのに、何故かヘリは俺から離れるように横腹を向けたまま水平に後ずさりを始める。

 このままでは、トーニが狙撃手に発見されて撃たれる!

 ヘリとの距離を詰めるために走っているトーニの足元に、銃撃による砂埃が舞う。

 ヘリは移動の為に腹を向けているので、この銃撃はヘリからの物ではない。

 後ろだ!

 振り返ると、150mほど離れた岩の上から2人の男がトーニを狙って撃っているのが見えた。

 ここからだと角度が悪くて頭しか見えない。

 丁度、ヘリの狙撃手も今は機が傾いているため撃って来ないだろうから、俺もトーニと同じ様に大声を上げながら岩場から飛び出した。

 俺の声に気が付いた2人は、直ぐにターゲットをトーニから俺に切り替えて、身を乗り出してきた。

 パン、パン。

 銃を撃ったと同時に、俺の直ぐ傍の地面からも砂埃が上がる。

 岩場に立っていた敵は、俺を撃つ前に俺が倒した。

 と、言う事はこの砂埃はヘリの狙撃手!

 奴は後退の為に傾斜が付いたヘリのキャビンで、腹ばいになっていた射撃姿勢を替えてまでして俺を狙っていたのだ。

 ヘリとの距離は300m。

 走れば直ぐ3m先に身を隠すのに丁度いい大きさの岩がある。

 だが俺は走らずに、そのままの姿勢でヘリのキャビンに開いた僅か5㎝程の隙間を目掛けて引き金を引く。

 俺が撃つよりも一瞬早く、3m先の大きな岩の奥に砂ぼこりが舞い、次の瞬間には遂にグレネード弾が空中で炸裂する爆発音が山に轟いた。

 “やったか!?”

 水平に横移動をしていたアグスタウエストランド AW139が、ゆっくりと旋回をするように傾く。

 しかし旋回をしているのではない事は、直ぐに分かった。

 トーニの攻撃で、テールローターが思う様に回らなくなり、バランスを保てなくなっているのだ。

 “やったなトーニ!”

 トーニの方はと言うと、スッカリその気になっている様で、俺の方に向かって“やったぞ!”と合図を送っている。

 トーニの背後で、ゆっくりと180度ターンするヘリ。

 反対側のキャビンのドアは開いていた。

 パーン。

 次の瞬間、再び銃声が響く。

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