【Dissolution of the 4th Squad(第4分隊の解散)】
「時期が悪かったので勘違いが有るだろうが、この事は事件云々よりも前に決まっていた事だ」
“事件よりも前に……”
確かにハンスは将軍の退官に対して、責任を取ってとは言わなかった。
だが、俺たちが無罪放免と話した後では、必ずその様な勘違いが起こる事は分かっていたはず。
”何かある”
それにハンスはこの部屋に入って来た時から、一回も俺と目を合わせようとしない。
いくらさっき口喧嘩みたいになったからと言って、それほど小さい男ではないのは分かっている……。
おそらく、隠している事のキーワードは、冒頭に言った言葉“個人には何の処分も下されない”という所。
裏を返せば、個人以外には処分が決まったと言う事。
個人以外の処分、それは部隊。
いや、分隊と言う事か?。
「さっき“我々個人には何の処分も下されないことが決まった”と大尉は言われたが。それは個人以外には処分が下されると言う事ですか?」
俺と同じ所に気の付いたのが、もう1人いてハンスに質問をした。
衛生兵のメントス。
答えは……。
「ああそうだLéMATは第3分隊迄、定員は31名として、今後テロなどの特殊任務には就かないことが決まった」
「中隊の中核となる話は、どうなったのですか?」
「それは、もう無い」
「それは、規模を縮小するという事ですか?」
「その通りだ」
「再編成と言う事ですか、それとも……」
最後に俺がこの質問をぶつけた時も、ハンスは目を合わせず「再編成はない。フランス外人部隊からLéMAT第4班は無くなる」とだけ言った。
皆がざわつく中、トーニが言った。
「じゃあ、俺たちは、どうなるんですか?」
「それぞれ、普通科部隊に編入。それが嫌なら再就職先を探すことだ。再就職先については事務長のテシューブが探してくれる」
「なんてこったい!話が違うぜ!他所の特殊部隊に負けない組織を作るって言い出したのは将軍だろ。それに隊長だって……」
「LéMAT第4班は最強だろ!それが何故、解散して普通科部隊に編入なんて、どうかしてるぜ」
「これまでの功績は?」
「そうだ、リビア、パリ、コンゴ、アフガニスタン。いったい、この実績の何が気に入らないって言うんだ!」
「俺たちに普通科に行けって言うけど、隊長はどうするんです?」
「計画通り中隊長の座に収まるんですかい?」
皆が口々に不平不満をぶつけ、それはハンスにも飛び火した。
ハンスは、それについて何も答えない。
答えないまま「これで話は終了だ。謹慎は今日で終了だが、これまでの功績と心の整理も考えて、お前たちには各自2週間の特別休暇が与えられる。ゆっくり身の振り方を考えろ」と、そう言って部屋を出て行った。
俺はハンスを追って部屋を出た。
しかしハンスは足早に廊下を駆け抜けて、遠ざかろうとするだけ。
「ハンス!」
走って追いかけて、階段の踊り場で肩を掴み止めた。
「一体どういうことだ!」
「さっき、皆の前で言った通りだ」
「嘘。言っていないことがある」
「何故、そう思う」
「勘だ」
ハンスはフッと笑い「くだらない」と言って立ち去ろうとした。
「じゃあ、当てよう」
「当てる?」
「そう。LéMAT第4班が解散に追い込まれた経緯を」
そこまで言ったとき、階段を他所の隊員が通り、話を止めた。
「ここではマズイ。他所で聞こう」
「じゃあ、初めて入ったレストラン」
「時間は?」
「18時10分」
「分かった。じゃあその時間に車を正門にまわす」