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【Strategy meeting①(作戦会議)】

 その場で、直ぐに作戦会議を行った。

 リズが居るのは厄介だけど、牢屋のないこの地下トンネルの中で、早々安心して放置できる場所もない。

 かといって誰かに見張らせれば、トーニの二の舞になるのは目に見えている。

 まったく女と言うヤツは、男にとって扱いが難しい。

 いや、これはそもそも男たちの意識が、女に対して甘く見過ぎている事が原因なのだ。

 仕方が無いのでトーニが持っていたミュージックプレーヤーを使って耳を塞ぐことにした。

 イヤフォンが外れないように、メンディングテープで固定して、その上から目隠しのためにタスキを巻く。

 目隠しが必要な訳は、もしもリズに読唇術の能力があった場合、会話の内容を読み取られてしまうから。

 まがりなりにもDGSIのエージェントだ、読唇術の心得くらいは有るとして対応しておいた方が良いだろう。

 準備が終わり会議を始める。

 先ずは、救援の事から。

「サオリ、昨日P子を飛ばした様だが、P子はいつ日本に着く?」

「?……日本になんてつかないよ、バグラム空軍基地に居る仲間に知らせたの」

「だったら直ぐに連絡を受けた人が部隊を連れて応援に来るのね!」

 エマが喜んで言った。

 ヤザとレイラの顔も明るい。

「直ぐって言うのは難しいと思うわ、だって私が連絡したのはSISCONシスコンの情報部員で、しかもその人の下には戦闘の出来る部下はいないのですもの」

「SISCONって何?」

 レイラに聞かれたのでSecret Intelligence Service Control:秘密情報制御部の略で、サオリたちは世界のあちこちに情報員を潜伏させて、戦争や紛争の火種をいち早く察知してそれが起きないように対応している事を教えた。

「ガモーには?」

「もちろん、彼からガモーに状況を伝えるように連絡はしてあるわ」

「じゃあ後はP子からの連絡待ちね」

 安心してエマが言うと、サオリは「いいえ」と答えた。

 当分P子は帰ってこないと。

「どうして?」

「いくら鳥だからと言っても、同じ生き物よ。こんな狙い撃ちにされそうな戦場の空なんて飛ばせないわよ」

「でも……」

「分っている。だけど、これは人間同士のイザコザよ。人間じゃない鷹を巻き添えにしたくないの」

 第二次世界大戦の独ソ戦。

 独ソ不可侵条約を破棄して急に襲い掛かって来たドイツ軍機甲師団に、ソビエト軍は手を焼き総崩れとなった。

 ドイツの優秀な戦車に対抗する手段に乏しく、急遽ソビエト軍が戦場に投入したのが“対戦車犬”

 これは訓練された犬に爆弾を背負わせて、戦車の下に潜らせて破壊するもので、これにより多くの犬が犠牲になった。

 普通に戦っても、戦争と言うのは凄まじい自然破壊と人間を含めた全ての動物に対する虐待行為に他ならない。

 もし俺たちの身勝手な行為のせいで、目の前でP子が撃ち落とされるところなど見たくもない。

 だからサオリの意見には全面的に賛成だけど、得られる情報が無い以上、俺たちの方でも最悪の事態を考えて行動しておかなければならない。

「救援がいつ来るかは分からないが、情報がガモーの元に繋がった以上、必ず来る」

「何故、そう言い切れるの?」

「だってエマたちも、そのガモーの匿名電話を受けて、ここに来たんだろう?」

 自分の言葉に物凄く勇気が湧いて来た。

 “ハンスが来る!屹度LéMATの仲間を連れて”

 来るのは確実だろうと思ったが、問題は、その時期だ。

 サオリが何度も言っていた1週間持ちこたえられるかと言うのは、次に行われる交渉までの期間。

 POCが躍起になって阻止してくる目的も、次の交渉が決定的なものになるからであろう。

 昨日、ガモーがハンスに連絡を行ったとしても、部隊を動かすためには先ず将軍の許可が必要になる。

 将軍は、俺の居る間は隊を離れていた。

 ひょっとしたら、これもPOCが仕組んだ事なのかも知れない。

 だけどハンスは屹度来る。

 たとえ将軍が居なくても。

 俺は、それを信じて、ここを守り抜く。

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