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【Hideout①(隠れ家)】

 しばらく休憩した後に、山を下りる。

 偽物の警察官たちは、まだその場に留まっていて俺たちが通り過ぎる時に手を振っていた。

 街に戻りレンタカーを返したときには、もう辺りは暗くなっていた。

「これから、どうする?」

「とりあえず食事にしましょう」

「食事の後は?」

 サオリが笑って「慌てないの」と、俺を嗜める。

 近くに何軒か食堂があったのに、サオリはどこにも入らずに街中を歩く。

 屹度、何かを探しているのだ。

 探し物が見つかったらしく、ようやく下町のレストランに入って食事をした。

「何を探していた」

「バイクよ」

「盗むのか?!」

「しっ、声が大きい」

「いい……」

 店の中で、これからの事を説明してもらった。

 まず、ホテルの部屋には盗聴器や隠しカメラが仕掛けられている可能性も有るから油断できない事。

 もちろん車の時と同じで、それを探そうとすると、こちらの素性が疑われてしまうのでNG。

 部屋で何もしないでジッとしている手もあるし、何も隠されていない可能性だってある。

 しかしジッとしていたのでは、ここに来た目的が果たせない。

 そこで、部屋に帰って仲違いのための喧嘩をして、どちらかが部屋を飛び出す芝居を打つ。

 つまり、二人のうちどちらかが自由に行動できるようにするため。

「ところで、ここに来た目的と言うのを詳しく聞かせて貰えないか?」

 サオリは周りを見渡した後、声を小さくして説明してくれた。

「ナトちゃんがザリバン高原での戦いを終えた後、軍法会議に掛けられたでしょ」

 そう。

 あの時は、部隊から無断で離れ、敵の首領であるアサムと行動を共にしたことで、脱走罪と国家安全法違反などの罪を疑われていた。

「その時、アサム自身がビデオでナトちゃんの無実を伝えた時、彼は他になんて言ったか覚えている?」

「“あとで、もっといい情報を教えてやる”と言った」

「その良い情報とは?」

「……停戦……いや、和睦?」

「そうよ。でも現実に未だ和睦は出来ていない」

「つまりPOCが邪魔をしているという事なのか?」

「彼らの本業は武器商人だからね」

 どちらが夜中に抜け出すかはジャンケンで決めた。

 ゲンを担いで勝った方が、P子の行った先を追う。

 サオリがパーで、俺がチョキ。

 それからホテルに帰って喧嘩をして外に飛び出た。

 10分程闇雲に走った後、目星をつけていたバイクを奪い出発。

 上等なバイクじゃないが、配線を直結するとキック1発でエンジンが掛かった。

 図体は華奢で、おそらく200㏄クラスのオフロードバイク。

 燃料タンクには消えかけたHONDAの文字が書いてあった。

 持ち主には悪いが、平和のために勝手に拝借させてもらう。

 市内でガソリンを満タンにして、あの峠を目指して走る。

 治安が悪いこの地方は夜になると交通量は殆どないから、追手が居たとしても直ぐ分かるが、バックミラーには何も映らない。

 “旨くいった”

 バグラム空軍基地の傍はアメリカ兵の検問の可能性があるので、脇道を使って迂回した。

 そして峠の手前からはヘッドライトを切って走った。

 満月ではないが、少しの月明りでも目が慣れれば何とか走れる。

 用心のため所々でエンジンを止めて、慎重に走る。

 ここまで来て、検問に引っかかったら元も子もない。

 幸い検問は行われていなくて、P子の消えた場所近くまで辿り着くことに成功した。

 道を逸れ、しばらくガレ場の斜面を暴れるバイクを抑え込みながら登り、バイクを隠せそうな場所を探していると大きな岩の重なり合った所に穴が開いているところがあり、そこにバイクを押し込んだ。

 ここからは徒歩。

 しかもP子が何所に行ったのか、正確な場所は分からない。

 不用意に歩いていると、ザリバン兵の見張りに撃たれる危険性もある。

 ここからは焦りは禁物。

 用心しながら斜面を探す。

 おそらく隠れ家の入り口には見張りが居るはず。

 それが目印だ。

 P子の降下の角度とスピードの記憶だけが頼りだ。

 それを俺が、どこまで正確に覚えているかが、探し出すカギになる。

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