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【From Japan to Afghanistan③(日本からアフガニスタンへ)】

 ひとりになったコクピットで、操縦マニュアルを読んでいた。

 読み終わると、渡されたバッグの中に飛行に関する教科書が何冊か入っていたので読んだ。

 全て読み終わった時、珈琲とクッキーを渡された。

「サオリ……いつから?」

「わりと直ぐ、ナトちゃんが2冊目の教科書に夢中になった時くらいかな」

 本を閉じて、サオリに聞いた。

「ねえ、これから何があるの? そして国が発行するはずの免許証迄作れるサオリたちの組織って一体何?」

「これから私はターニャとして、アサムと最後の交渉に向かう。そして私たちの組織はSISCON(シスコン:Secret Intelligence Service Control:秘密情報制御部)」

「それは?」

「国際的に暴発した、もしくは暴発しそうな案件を素早く捉えて、戦争や紛争になる前に未然に解決してしまうって事をやっているの」

「それはつまりPOCの正反対のことじゃ……」

「そうね、ハッキリ言って“敵対”って事になるわね」

「じゃあ俺の役目は」

「ナトちゃんの役目は、私と交渉する人の身を守る事」

「他に組織の人間は?」

「私たちの組織は日本で話した通り、元々情報を集めるだけだったの。正確な情報さえ手に入れる事が出来たなら紛争は未然に防げると思っていた。だって誰でも戦争は願っていないのだもの」

「POCの台頭で事情が変わった。と言う訳か」

「そうね。だから優秀なエージェントと、国を問わず戦う事の出来る突撃隊員を只今募集中と言う訳」

「なるほど」

「どう?」

「俺はいいけれど、他の者たちは知らない。じゃあ彼らがイイって言えばナトちゃんは反対しないの?今よりも更に危険な任務になるのよ」

「危険かどうかは、個人の興味の問題だ。俺が登山家のようにエベレストには登らないように、登山家たちは拳銃を持つような仕事はしないだろ」

「ナトちゃんって、頑固な割には面白い事も言うのね」

「ねえ、なんで俺が日本に来ることが分かった?」

「ハンスが2週間の休暇をくれたでしょ。それに部隊の解散やDGSEのエマとレイラの解雇もあったし、仲間のためになんとかしようと考えるなら“交渉人”としての私を頼って来るのではないかと思ったの」

「じゃあ、ハンスも仲間なのか!?」

 休みの事やエマたちの事は前日に聞いたばかり。

 それを既に知っているので、休暇申請を出したハンスを疑った。

「違うよ。彼は未だ何も知らない」

「じゃあ……」

 俺の知っている関係者の誰かが、既にサオリの仲間になっている事は間違いない。

 だが、それが誰なのかは少しも分からなかった。

「でも何故、こんな手の込んだことをした? 事前に連絡してくれればアフガニスタンで落ち合う事も出来たし、エマたちに協力を求める事も出来た」

 愚問だという事は分かっていた。

 案の定、サオリから「ナトちゃんはマークされているのよ」と回答が返って来た。

「今頃は、ナトちゃんのフライトに気が付いて、遥々日本に追いかけて行っている頃よ。それにしてもハンスと食事に行った帰りに、そのまま飛行機に乗ってしまうとはさすがね。一日遅れで日本に着いた時は、私たちはもう居ないのだから」

「しかしそれじゃあ、ガモーが危ない!」

「大丈夫よ、石神井駅には監視カメラが有るから、そこで貴女が降りた事は彼等の情報網を使えば半日で分かるけれど、その後の足取りは分からない」

「でも監視カメラはあったよ」

「個人宅や町内会の監視カメラはローカルが殆どだから、奴らの手には負えないわ。それに石神井からは監視カメラのない道路でタクシーを拾って現金で支払っているから空港に向かった事も分からないし、空港にはパイロットとして入場しているから旅客ターミナルの監視カメラ網には引っかからないし、そもそも貨物ターミナルからの入場でも監視カメラを避けて姿を隠して入出しているから映像の自動判別装置には掛からない。おまけに変装もしているから、彼らは私たちを追おうとしても追いきれない」

 サオリが窓の外の景色を見て笑った。

「さあ、自動操縦を切って着陸態勢に入るわよ。出来るわね」

「やってみる」


 無事カブール国際空港に着陸し、貨物ターミナルに移動させて機を降りた。

 後はサオリに付いて行くだけ。

 勿論、俺もサオリも変装している。

「これから仲間と待ち合わせか?」

 空港のパーキングに向かったサオリに聞くと、仲間は居ないと答えた。

「仲間がいないと困るだろう。移動は全てタクシーか?もし必要な時に見つからなかったらどうする?それに俺たちは二人とも銃も持ってはいない」

「情報員ならここにも何人か居るけれど、孤立した場所に居る仲間は敵に懐柔されている可能性も有るから信用できないわ。交通手段は後で考えるけれど、敵に出くわすまで銃は必要ないでしょ」

 振り返ったサオリの目が笑っていた。

 “なるほど、銃は敵から奪えば事が足りると言う事か”

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