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【Result of the battle①(戦いの結果)】

 あの日から10日経つ。

 結局、最後の水蒸気爆発が起こりビルは完全に崩壊した。

 消防と警察がやって来て、捕まえた奴らを引き渡し、消防隊が科学消火器を掛けたが火が完全に消えるまで丸2日を要した。

 ハンスたちの怪我も思ったより大したことは無く、火が消えた頃には皆の生活は日常に戻ったが、俺たちには謹慎の処分が下され今は寮でゴロゴロしている。

「1回の水蒸気爆発でヘリはもう近付くことは出来ないと言うのに、なんで4回も起こした!」

 珍しくオカンムリのハンスがトーニを叱る。

 俺たちは、それぞれ1度ずつの事情聴取と査問委員会で済んだが、部隊長のハンスは連日事情聴取と取り調べを受けているのだからストレスも半端ないだろう。

「隊長。そうは言っても、俺は鉄粉とアルミ屑を集めるように指示しただけで、見境なしにジャンジャン持って来たフランソワたちにも言って下さい」

「分かった。じゃあ、何故、何度も水蒸気爆発を起こさせた。元になる水が無ければ、水蒸気爆発は起こらん。それくらいはコントロール出来ただろう」

「そっ、それはモンタナたちが、面倒だからと言って消火栓を根元から叩き壊してしまったから水が無くなるまで続いただけで……」

「まったく。行う前に確り原理を説明しておかないから、こうなる。今回ばかりは俺も責任を負いかねるぞ」

「それにしてもハンス、どうして計画を知った?君には計画の事を話していなかったはずだが」

 計画を仕切っていたニルスがハンスに聞いた。

「なにか企んでいる事は分かっていたから、レイラに頼んで情報を漏らしてもらった」

「ちっ、裏切り者が居やがった……」

「バカヤロー! 勝手な行動をしておいて、何が裏切り者だ!」

 トーニの呟きに、治まりかけていたハンスの怒りが再び爆発した。

「隊長、これから俺たちは?」

「知らん。休日に許可なく武器を持ち出し、廃工場を爆破した罪は重い! これで森林火災にでもなっていれば、完全に社会の悪者だ」

「でも、反社会組織と黒覆面の男を潰しましたぜ」

「……」

 確かにモンタナの言う通りだが、彼等は街中で俺相手に小競り合いを何度か繰り返しただけで、戦争やテロを企てたと言う証拠はない。

 言ってみれば俺たちの部隊は、ただのチンピラ相手に過剰な大立ち回りを演じた事になる。

「すまない。すべて俺の責任だ」

「軍曹……」

「ナトーは、ただ奴らに狙われた被害者だぜ。何にも悪くはねえ!」

 トーニが俺を庇って言ってくれた。

「ニルス、行くぞ!」

「行くって、どこに?」

「将軍の所だ」

「テシューブじゃなくて?」

「ああ、今回の件は全て将軍の裁量に任された」


   ***


 ハンスとニルスが将軍の所に行ってから、暫くするとパリ警察のミューレ警部が俺を訪ねて来て、見張りの憲兵が2人付き添った部屋での会見となった。

「なんで憲兵付き?」

「一応、謹慎中だからな」

「ナトーは逃げも隠れもしないから、こいつはつまり護衛って訳だな。さすがだぜ」

「ミューレ揶揄うなよ。彼らは純粋な見張りだ」

「そうなのか?」

 ミューレが憲兵の方に振り返って聞くが、彼等は何も答えない。

「ところで、何か分かったのか?」

「ああ、一つだけな」

「一つだけ?」

「そう。あの廃工場にあった黒いスポーツカーの中から葉巻が見つかった」

「葉巻……」

「そうDavidoffダビドフと言うドミニカ共和国産の葉巻。しかもアニベルサリオシリーズの最高峰、No.1 チューボだぜ」

「いい葉巻なのか?」

「いいって言うもんじゃあねえぜ。なにせ1本70ユーロ(1ユーロ約122円)もする代物だぜ」

「その葉巻が、ザリバンの地下司令部に残っていたものと同じ銘柄と言う訳なのか?」

「そうだ。ここに来る前にDGSEのエマの所に寄って、それは確認した。この葉巻は流通量が少ない高級なやつだ」

「じゃあ、やっぱり奴が黒覆面の男?」

「ところが、どっこい。話はそう簡単じゃねえんだ。確かに黒のスポーツカーから同一の葉巻は見つかったが、それが何の証拠にもならねえ」

「証拠にならない?」

「そう。ザリバンの地下司令室からは葉巻も見つかり、灰皿からはたった一つだけだが指紋も取れている。だが車からは指紋一つなくて、あったのは葉巻だけだ」

「しかし、奴は逃亡するはずだったから、上着のポケットに葉巻くらい入っていそうだが、それも無いのか?」

「それもないどころか……その、奴の死体自体が未だにみつからねえ」

「死体が見つからない?」

「そう。俺たちパリ警察は現場から締め出されたが、DGSIのリズ達の調査によると、奴の痕跡は跡形もなく消し去られたと言う事だ。まあ鉄も溶けるくらいの熱だから仕方ないだろうな」

「しかし、奴が居た事は確かだ」

「それは、捕まえた一味の証言からも確認は取れている。だが……」

「だが?」

「それがだなあ。誰も奴の事を知らないんだ。奴が何所で生まれた誰なのか、名前も何も。分かっているのは組織の幹部と言う事だけ。なあナトー、おまえ死に際の奴から何か聞いていることは無いか?」

「聞いた事は、全て話している」

「じゃあ、他に奴が喋ったことで、何か話していない事は?……どんな小さなことでもいいんだ。なにせ情報が少な過ぎて何にもできねえ」

「リズに聞いたら良いんじゃないのか?」

「いや、今回のヤマはDGSIが主導らしく、俺たちパリ警察は現場から締め出されちまって、それ以降一切情報を貰えない」

「現場から締め出された?」

「俺が知っているのは。いち早く現場について知り得た事だけ。葉巻の事だって俺が現場からコッソリ持ち帰ったから情報得る交換条件として使えたが、それが無かったらパリで起きた事件なのに何も分からないままになっていただろうな」

「何故DGSIは、そこまで秘密にする必要があるんだ?」

「さあな。純粋に国民の安全を守る事が指名の警察と違って、あちらさんは政治も絡んでくるから、色々あるんだろうぜ」

 誰にも話していない事は一つだけあった。

 それは、奴がザリバン高原を脱出したあとミヤンの故郷に寄った事。

 だが、それを話せば、捜査の手はミヤンの御両親にも及ぶだろう。

 最愛の息子が戦死すると言う哀しい出来事を乗り越えようとしてしている老夫婦の心に、捜査員たちは土足で踏み込むことになる。

 しかも、亡くした息子に瓜二つの悪人が居たなんて……。

「他に、聞いた事はない。事情聴取で話したことが全てだ」

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