私はそのためにここに
「アリシアくん。この事態については我々も想定していなかった。なので、サーバーそのものを他のサーバーから切り離し隔離する。これにより、ここから先のプレイは他のサーバーには一切記録されず、もし、本編を続けたとしても、ナニーニとコデットの二人はここから先のことを覚えてもいないだろう。
我々としても、正直、なるべく傷を小さく抑えて損失を最小限に済ませたかったというのもあった。だからこんな回りくどい形を取った。本当なら、サーバーそのものを初期化して、すべてをなかったことにしてしまうのが一番だったと思う。その決断ができなかったのは、私の不徳の致すところだ。それについては私もいずれ役員会で責任を問われることになるだろう。
だが、頼む。いや、君にしか頼めない。この奥にあるものをすべて暴いてくれ。それが今後に活きるはずだ。
アリシアくん……!」
ダイアログがポップアップしないプライベートモードでのメッセージだったが、宿角からのそれを受信し、
「もちろんです。私はそのためにここに来たのですから」
彼女も躊躇うことなくそう応えた。
ただ、宿角の言葉には、表現されていない部分があることも、彼女は悟っていた。つまり彼は、
『全容が解明された後はサーバーそのものを初期化する』
と言っているのだ。それはつまり、ここから先のナニーニとコデットの存在は、消えてなくなるということでもある。
いくらイベント前までの二人については残ると言っても、このイベントの中にいる二人も、確かに<ナニーニ>と<コデット>なのだ。
サーバーそのものが汚染されていることは確実になったので、現時点でサーバー内にあるデータはバックアップさえ取られることはない。完全に確実に汚染を取り除くためだ。バックアップに不正コードを紛れ込ませるタイプのウイルスも確かに存在する。
バックアップは、コピー元に不正コードが存在しない場合にしか行われない。
だから今ここにいるナニーニとコデットは、間違いなく消されてしまう。
「……」
自分についてくる二人の気配を背中に感じ、アリシアは泣きそうな表情になっていた。
ロボットだから泣けないけれど、間違いなく泣き顔だった。
二人を含めた、ここで起こることの全ては、後に消えてなくなることが確定している現実が悲しくて。
それでも役目は必ずこなす。
そのために自分はいるのだから。
三人の前には、街の入り口。
幼い頃のジュゼ=ファートとファリ=ファールが暮らした街だ。血縁上の父親が囲っていた母親を住まわせていた街でもある。
それがアリシアには、まるで魔王か何かが暮らしている場所のようにも思えたのだった。




