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フードを目深に被った何か

村人の男のピッチフォークの先を指でつまんだアリシアは、ただ憐れむように男達を見た。


現実世界の地球でも、かつてはこのような形で社会を変えようとしたのだという。


それが悲しかったのだ。


無論、すでに起こってしまったことをいくら嘆いてもなかったことにはならないし、それらが繋がって現在が作られているのだから、頭ごなしに否定するのも違うとアリシアも分かっている。


分かっているものの、その動きに伴って出た被害の大きさが悲しくて……


とは言え、火星においても三度の大戦によって十万を超える犠牲者が出ているという。


地球での<世界大戦>に比べれば数こそは少ないとはいえ、仮にも戦争を永久に放棄したと宣言された後の、


『火星にまでは地球での合意は及ばない』


などという、<詭弁>と称するにもあんまりなそれの下に行われた戦争としては、当時の火星の総人口に占める割合で考えても決して小さくはないのも事実。


何より、人間の死を数の大小で語ることがどれほど人の心を無視しているか……


<心>を得たからこそ、アリシアにとっても悲しい事実だった。


何故なら、その十万人すべてに<人生>があり、<想い>があり、<失いたくないもの>があり、大切な人を残してこの世を去らねばならなかったのだろうから。


それを想像するだけで、アリシアのメインフレームは激しく揺さぶられてしまうのだ。


だからこそ、ただの<VRアトラクションの中の設定>に過ぎないと言っても、アリシアにとっては悲しい現実であることには違いなかった。


『実力で対処します』


と宣告はしていても、割り切ることはできない。


だから泣きそうな表情で、アリシアはピッチフォークを捩じって男の手から奪い取り、唖然となった男の胸を軽く押していた。


それだけで男は吹っ飛び、壁に叩きつけられる。


アリシアにとってはほとんど<攻撃>とも言えないようなそれだったが、ただの人間にとっては強力過ぎた。


加えて、このまま室内にいてはいろいろと被害も出るだろう。


だからアリシアは窓から外へと飛び出した。そこに<あれ>がいることを知っていたからだ。


それは、男達と共にやってきた、


<フードを目深に被った何か>


だった。


アリシアはそれが何であるのかを知っている。ゆえに、今度はまったく容赦のない蹴りを放った。


普通の人間であれば一撃で骨は粉砕され内臓はことごとく破裂するであろう恐ろしい一撃だった。


なのに<それ>は、彼女の蹴りを易々と受け止め、逆にそれを掴んで彼女を振り回してみせたのだった。



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