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壊滅させることは

アリシアがゴーディンやラウルに待ち受けているであろう<運命>に顔を曇らせてしまうのも、おそらくは<感情>のなせる業だっただろう。


多くの人間は、ゴーディンやラウルのような、反社会的な者がどのように厳しく報いを受けたとしても、


『自業自得だ!』


と切り捨てるに違いない。


しかし、アリシアにはそれはできなかった。


<感情>を持ちつつも彼女はメイトギアだからだ。


メイトギアは、人間を憎まない、恨まない、嘲らない、蔑まない。ただただ人間の幸福のために資するように自らを律するだけなのだ。


だから、ラウルが、彼女が放った魔術で昏倒していくことさえ、そのままにはできなかった。


彼の体を受け止めて、けれどそのまま地面にそっと寝かせる。


普通のメイトギアであれば、すぐさま自身に内蔵されている電話機能などを使って救急要請するところだ。


とは言え、アリシアはこれがVRアトラクションであることも承知しているから、そのままにする。


するとそこへ、


「全員! 動くな!!」


強い口調で声を掛けられた。


彼女が声のした方に振り向くと、何人もの兵士の姿。伯爵が抱えている正規の兵士達だった。


さすがに騒ぎが大きくなって、黙ってもいられなかったのだろう。


けれど、兵士達がラウルに、


「起きろ!」


と声を掛けた時には、アリシアはもういなかった。正規の兵士相手に揉め事を起こす気はないので、全速で離脱したのである。


それに、兵士達を率いていた隊長らしき人物は、ラウルを捕縛するでもなく、


「荷車を徴発してそれに乗せろ。詰所にまで運ぶ」


随分と丁寧な対応を命じた。


当然か。ゴクソツは伯爵家が抱えている、ある意味では<非合法な私兵>でもあるのだから。


実際、表の兵士である自分達よりも伯爵が信頼を寄せているのは、それなりの立場の者ならだいたい誰でも知っていることだった。


アリシアが宣告したように、組織としてのゴクソツを壊滅させることはできなかった。


が、まあそれ自体がゴクソツの幹部をおびき出す罠の意味も兼ねているので、最初から壊滅させる手順についても特に考えてはいない。


それよりも、より強く自分の存在をアピールすることになるという狙いもあった。




とは言え、ボーマの街での戦いについては、ここまでで終わりである。


ラウル以上の幹部が、揃っていなかったからだ。


こうしてラウルを倒したアリシアは、コデットとナニーニが避難しているはずの宿へと向かった。


「アリシア様!」


宿に着いて部屋のドアを開けると、ナニーニが跳び上がらんばかりに立ち上がって、ホッとした表情になったのだった。



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