VRアトラクションサービス<ORE-TUEEE!>
VRアトラクションサービス<ORE-TUEEE!>は、二十一世紀初頭頃に、日本で人気だったとされる、
<俺TUEEE!系アニメ>
を再現したVRアトラクションであり、昨今の、
<二十世紀・二十一世紀コンテンツリバイバルブーム>
に乗って開発されたものであった。
コンセプトは、
『気軽に異世界体験』
『気軽に無双体験』
とされ、とにかく難しく考えなくてもサクサク話を進められる体験型VRゲームである。
もっとも、フルダイブ式であるため、厳密には<ゲーム>ではなく<アトラクション>に分類されるそうだ。
ちなみに、それまでのフルダイブ式のアトラクションはとにかくリアル志向でクリアにはそれなりの技能と忍耐力を求められるものが人気だったのだが、リアルさや難易度ばかりを追求するあまりにごく一部のヘビーユーザーしか満足できないものが多くなり、それに伴ってライトユーザーや初心者がついていけず敬遠され、気軽に遊べる<ゲーム>へと人気が移ってしまったということだった。
「だって、たかが<遊び>でそこまでムキになるとか疲れるじゃん?」
「自分らアスリートじゃないから。ライトに楽しみたいだけだから」
「暇潰しでするものじゃなくなってるもんな~」
VRアトラクションを敬遠するようになったユーザー達の意見を要約するとそのような感じになるらしい。
そういう意見をヘビーユーザーらは
「軟弱だ!」
「お気楽に結果を得ようとするとか人生を舐めてる!」
「努力の果てに得たものこそが本物だ!」
などとしてバカにするものの、そのヘビーユーザーらの高圧的な態度が余計に反発を招いてさらに印象が悪くなるという悪循環まで発生していた。
それについて、宿角領閣から説明を受けた千堂京一は、
「そ…そうか……」
と困惑したように応えただけだったという。
基本的にゲームもアトラクションも子供の頃にやったきりで学生になってからはロボティクス工学等の技術の勉強と、気分転換のためのスポーツに打ち込んだ彼には、まったく理解できない分野の話だったのだ。
正直、地球と火星両方の経済圏を合せれば、フットボールやテニスといったメジャースポーツの方が市場規模が圧倒的で、アニメと漫画とゲームを合せても、やっと野球に並ぶかどうかというものだった。
一応、JAPAN-2における売り上げ比率で言えば逆転もするのだが、しかし他の都市ではやはりスポーツの方が優位であることの方が多く、ましてやエレクトロニクス及びロボティクス部門の売り上げはさらにその数十倍であって、アニメや漫画やゲームにばかり打ち込んではいられないというのが現実なのであった。