友人が自分の幼馴染と絶縁したらしいですが俺は自分の幼馴染と付き合います
そろそろ流れが終わってる気がしないでもないですが息抜きがてら書いてみました。
「俺、朱香と縁切ったから」
「は?」
自販機へ一緒に飲み物を買いに来た友人の川崎優希の言葉に俺こと桐永秀晴は自販機からジュースを取り出す体勢のまま固まる。
「だから、俺は朱香と縁切ったって言ってんだよ。もう耐えられない」
怒りを込めたその言葉に俺はゆっくり体を起こしてため息を吐く。
優希には美少女の幼馴染がいる。
名前は神蔵朱香。
勉強も運動も優秀で誰にでも分け隔てなく優しい彼女は学校でも人気者だ。
「……一応聞くが、理由は?」
「はぁ? そんなの決まってるだろ? あいつの俺への扱いにもう耐えられないからだ」
そう憎々しげに言う優希に再びため息を吐く。
誰にでも優しい神蔵だが優希にだけは暴言を吐く。
言っちゃなんだが優希は勉強も運動も得意という訳では無い。
そこをついて神蔵は優希に対して暴言を吐いている。
しかしそれは神蔵の優希への好意の裏返しだ。
それはクラスの全員がわかっていることで生暖かい視線が2人に注がれている。
それをどうやら優希はわかっていなかったらしい。
誰よりも長く近くにいたくせに。
「あ〜話し合ったりしなかったのか?」
「は? なんでそんなことしなきゃいけないんだよ。悪いのはあいつだぜ? もう関わり合いたくない」
「…………あっそ」
もうこいつはダメだな。
俺はそう思った。
長年の付き合いがあるくせに相手の表面上しか見ずに分かり合おうとも話し合おうともせずただ関係を切る優希に見切りをつける。
もちろん神蔵も悪い所はたくさんあるだろう。
好きな相手に付き合いが長いとはいえ暴言を吐いたのは悪い。
好意を素直に伝えることもどうやらしていなかったようだし。
だからといってこの対応はないわ。
「お前も滝瀬と縁切るなら早い方がいいぜ。貴重な高校生活棒に振る前に」
「はぁ?」
俺がそんなことを考えていると優希が変なことを言い出した。
「お前も幼馴染の滝瀬に色々嫌なこと言われてただろ? だからさっさと縁切っちまえよ」
何言ってんだこいつ。
もはや俺は呆れを隠しきれていたか分からない。
優希の言う通り俺にも幼馴染がいる。
名前は滝瀬夕姫
神蔵に負けず劣らずの美少女だ。
残念ながら勉強と運動は平均的でいつもテスト前は俺に頼っている。
そんな彼女だが口が悪い。
俺に対してはもちろん俺の双子の弟やクラスメイト達にもだ。
だが、夕姫はいじめられも嫌煙もされず人気がある。
何故か。
それは夕姫がかなりのポンコツだからだ。
ツンデレであることが誰の目にも明らかで、暴言を吐いたあとは「言い過ぎたかな」「嫌われたかな」と心配そうに相手を見つめる。
怒ったフリや傷ついたフリをした時の反応は実に可愛らしい。
実に弄りがいのあるのでみんなして夕姫で遊んでいる。
これもある意味いじめかもしれないが夕姫も満更でもなさそうなので別にいいだろう。
小動物みたいだとか妹みたいだとか言われて男女共に人気あり可愛がられている。
しかし、節穴アイを持つ優希には分からなかったらしい。
「ああ、そうだな。そのうちな」
「そうか。なるべく早くしておけよ」
もうこいつ馬鹿なんじゃないかと思い始めた俺は適当に返して、教室に戻るために歩き出した。
その最中、話しかけてきた優希に適当に返しながら、双子の弟である秀和にこのことをLONEで伝えた。
秀和は神蔵のことを狙っていたし秀和が神蔵を慰めれば神蔵も立ち直り秀和に彼女ができて一石二鳥だろう。
俺も秀和もそこそこ顔はいいしな。
実は俺も秀和も夕姫のことが幼い頃から好きだったんだが夕姫は俺を好いてくれていた。
それを知っていながらなぁなぁにしていた秀和は中学のラストで夕姫に告白してフラれた。
今では新しい恋を模索中だ。
兄として弟を応援したい。
夕姫はやらないが。
そう考えてそろそろ夕姫に告白するかと思い至る。
今の友達以上恋人未満の関係も悪くないがそろそろ関係を進展させよう。
絶縁すると思ってる優希に恋人になったと報告するのも悪くない。
一体どんな顔をするかな?
告白した時の夕姫の反応も面白そうだ。
俺は2人の反応を想像してニヤニヤしながら夕姫に放課後に体育館裏に来るようにLONEで連絡した。
◆◆◆
そして、放課後。
何やら挙動不審の夕姫を後目に一足早く教室を出て、体育館裏に来た。
しばらく待っていると、夕姫が挙動不審に現れた。
「ききき、来てああげたわよよ? ははははるのクセに私をよびっ、呼び出すなんて……な、生意気よ?」
挙動不審にもほどがあるだろ。
思わず半眼を向ける俺に夕姫は涙目になる。
…………マジでどうした。
「今日はお前に大事な話があるんだよ」
「ッ!?」
とりあえず未だかつて見た事のない挙動不審さは置いておいて本題に入る。
すると夕姫はビクリと大きく体を震わせ、大粒の涙を目に溜める——ってはぁ!?
「いや、お前マジどうした!? なんでそんな怯えて泣いてんだよ!?」
「だ、だってぇ……だってぇはるがぁ、ひっぐ、うぇぇぇぇん!」
ついに泣き出した夕姫に俺は慌てる。
というかこれどうしたらええねん!
「お、おい! 落ち着け! 俺がどうしたってんだよ!」
「はるがぁ、はるがぁ、ひっぐ、うぐ、うぇぇぇぇん!」
「やかましい!」
「むぐっ!」
ガキみたいに泣きじゃくり話にならない夕姫にイライラしてきたので口を手で塞ぎ強制的に黙らせる。
そうしながら背中をさする。
しばらくして落ち着いた夕姫から手を離す。
「落ち着いたか?」
「……うん」
鼻をすすりながら小さく頷いた夕姫を見て俺は改めて話を切り出す。
「さっき言いかけたけど大事な話があるんだよ」
「……うん」
それを聞いて夕姫は俯いて頷く。
「夕姫……俺、お前のことが好きだ」
「へ?」
告白した俺を夕姫は顔を上げて呆ける。
「だから俺と付き合ってくれないか?」
構わず続けた俺に夕姫は呆けた表情のまま固まる。
たっぷり1分そのままだった夕姫は唐突に顔を赤く染めた。
そして、驚愕羞恥歓喜等顔を百面相させたあとやっと声を絞り出した。
「あ……え……ちょ……え……?」
うん、声を絞り出した。言葉じゃなくて。
というかこいつのおかしな挙動の理由に大体予想が着いてきたんだけど……。
「……お前もしかして——盗み聞きしてた?」
「し、してないよ! 縁切るとかそんな話知らないよ!」
「知ってんじゃん……」
なるほど、確かにあれを聞いた直後に呼び出されて大事な話だとか言われたら不安にもなるか。
「とりま、返事は?」
「え? ……あ、そ、その……えと……」
真っ赤になってモジモジする夕姫を見つめていると、意を決した顔をしてこちらを見つめ返した。
「しょ、しょうがないから付き合ってあげるわ!」
「意を決した顔で言うことじゃねぇ……」
「うるさい!」
ポカポカと俺を叩く夕姫をいじりながら、俺は初恋の相手が彼女になったことの喜びに笑った。
なんかいくらなんでも雑すぎると反省。
まぁ、息抜き息抜き。
質はどうでもいいのよ別に。