第50話 革命。
深上は才花を漆黒の中から救い出した。
そして三種の妖器最後の一つ、黒天剣が砕かれたことにより白鳥美伊紗も自らの意識を取り戻した。
「ようやく……戦いは終わったのか」
木更津はそう呟く。
「あれ?ここはどこですか!?」
美伊紗は自分がいる場所に困惑し、周囲をキョロキョロとして先ほどまで自分が何をしていたかを忘れているようだった。
「美伊紗様。大丈夫です。もう戦いは終わったのですからーー」
「ーーいいや。まだだよ」
そう言い、そこへ一人の女性が姿を現した。
美伊紗は彼女を見た瞬間、目の色を変え、その女性を睨んだ。
「なぜお前がここにいる。天城聖華」
彼女は恨まれていることを知りながらも、堂々と美伊紗の前に姿を見せる。
美伊紗は先ほどまで握っていたはずの黒い剣を持っていると錯覚して天城へと走り襲いかかるも、手には何も握られておらず、美伊紗は天城に腕を捕まれ一回転し、背中から地面にぶつかって転がった。
「白鳥美伊紗。それで妖かし連盟の会長が務まると思うなよ」
辛辣にも、天城は言う。
「そんなことは分かっている。妖かしすらも従えておらず、妖かし語りとしての才能もない私なんかが、妖かし語りをまとめ上げることなんてできはしないんだ」
美伊紗は天城に押さえつけられながらもそう叫んだ。
「それでも、私は白鳥南雲の娘だから、押し付けられる。その仕事を嫌でも押し付けられる。私はやりたくなくてもやらされるんだ。やりたくないのにだ、他にやりたいことがあるのにだ。私はいつだって、縛られ続ける。白鳥南雲の娘だから。妖かし連盟会長の娘だから」
美伊紗は心の内を打ち明けた。
叫びながら、感情をさらけ出しながら、そこで生まれた涙を流しながら。
「美伊紗。そんなことを思っていたのか」
美伊紗の発言に、深上副会長や開闢たちは驚いていた。
「それでも私に会長の座をーー」
「ーーそれで良い」
「、、、、、、え!?」
分からなかった。
美伊紗は深上の発言に理解できなかった。
「美伊紗。やりたくなかったらそれで良いんだ。あなたがやりたくないのなら私が会長をやりますから。あなたが会長の座を重りに思っているのなら私はあなたの重りを背負いますから」
「でもそれじゃ……」
「美伊紗様。世界には多くの人や妖かしがいるんですよ。だからあなたが重りに思っていることでも、私にとっては大歓迎なことなんです。だから無理にあなたが会長になる必要はないのですよ」
「そうか……。私は……」
「美伊紗様。たまには自分をさらけ出してください。あなたが抱える悩みは私が全力で受け止めますから。私たちが受け止めますから」
「ありがとう。深上」
美伊紗は笑顔でそう言った。
美伊紗は立ち上がり、クロウのもとへ向かった。
「私が剣で操られている時、全部聞こえてたよ。クロウ、君は妖かしも楽しく生きれる世界を創りたかったんでしょ。一緒に変えよ、世界をさ」
美伊紗はクロウへ手を差し伸ばす。
「人間というものは、私が考えた以上に優しく、温かい生き物なのだな」
クロウは美伊紗の手を掴み、そう呟いた。
戦いに幕は閉じ、世界が変わる幕が上がる。
人間と妖かしは手を組み、旗を掲げる。
世界を変える、その旗を。




