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妖かしの使い方  作者: 総督琉
革命
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第49話 全員集合(後編)、

クロウを撃った仮面の女性の正体が七海才花だと判明し、無邪気祓現は動揺していた。


「なぜあいつが……。それにまさか……今さっき例の妖かしに飲まれたのか。なら今日まで耐え続けてきたということか。それほどのメンタルと忍耐を有するか」


無邪気祓は遠目から彼女を見て感心していた。

しかし、すぐに無邪気祓は危機を感じた。


七海才花、彼女はかつて逢魔時(おうまがとき)に呪われた。それを無邪気祓現は祓ったーーはずだった。

だが彼女はそんなに優しい人ではない。そう簡単に人の呪いを祓うなどということはしない。祓ったかに見えていた彼女にはまだ根強く逢魔時が侵食していた。

故、今彼女は完全に逢魔時に支配された。つまり今の彼女は彼女であるが彼女ではない。


彼女は黒い霧を全身に纏い、その霧に少しでも触れた者は次第に全身に漆黒が体を蝕み、殺す。


「すまないな、クロウ。君がしようとしていたことでは世界は変わらない。だからといって、この選択を選んだ私は大馬鹿者だな」

無邪気祓は嘆いていた。


だが一度選んだ選択肢はもう曲げることができない。それに後悔をしていた。

今の彼女は無邪気祓ですら止められない。それほどまでに狂暴化した逢魔時を、どうすれば止められるだろうか。


「すまないね。私は間違っていたようだよ」

彼女を前に、無邪気祓はそう言い、ただ静観する。


だがそこへ、無数の足音が。何かと思って振り返れば、そこには何名もの妖かし語りが妖器を構えて立っていた。


「深上副会長。やはりいました。白鳥美伊紗はあそこにいます」


「やはり現れたか」


そこへ現れたのは深上歩。その他にも、木更津や交太といった精鋭の妖かし語りが集っている。

深上は意識を失って倒れている開闢を発見し、静かに歩み寄る。


「開闢。よく頑張ったな。あとは全部私に任せておけ」

深上は白く美しい刀を構える。


「七海才花。なぜ君があの日、私のもとへ来たのか大体理解したよ。君はもう自分ではいられなくなるのだな。だから君は、私へ託したのだろ。その夢を、希望を、野望を」

深上の刀には純白の火炎が纏われた。


「七海才花。君は先日言ったな。私を殺してくれと。だから躊躇はしても、必ず君を殺す」


深上は刀を握り、黒い霧の中へと飛び込む。だがその前に、白鳥美伊紗は立ちはだかる。


「なぜ!?」


「邪気の根源、そこへは近づけさせない」

美伊紗は黒い剣に操られ、そう言う。


「なるほど。邪気はお前の力の源だもんな。そりゃ近付けさせたくないよな。だけど、お前が決定的に邪魔なんだよ、黒天剣(ヤタガラス)。過去の世代のお前が、今もノコノコとしゃしゃり出て来るな」

深上は美伊紗の握る剣を粉々に粉砕した。


「木更津。美伊紗様を逢魔時から引き離せ」

木更津は剣を破壊されて朦朧としている美伊紗を抱え、遠くへ離れる。


そして深上は刀を握り締め、黒い霧の中へと飛び込んだ。その瞬間に体は漆黒で蝕まれる、しかし純白の火炎が漆黒に蝕まれた体を燃やし、すぐに治っていく。

その火炎には熱はない、それ故彼の体が業火に焦げることもない。火炎はただ彼が負った傷を治すのみで、体を殺すことはしない。


妖かしは困惑し、妖かし語りは動揺に身を浸す中、駆けつけてきた妖かし語りたちは来巣警備会社の社員を逃がしていく。


「白夜ちゃん。また傷を負っちゃったね。でもね、」

今々は黒く蝕まれた白夜の腹部へ触れると、黒は次第に晴れていき、もとの素肌へと戻っていった。


「相変わらず何だその妖術は」


「にゃんでしょうね。ひとまず逃げるよ。クロウくんは、いやクロウちゃんはまだ生きているようだし、私はまだ彼に話があるから」

今々は白夜も傷を治し、すぐにクロウのもとへ向かう。


「やはりまだ生きていたんだね。クロウちゃん」


「今々……とどめを刺しに来たのか」


「さあね」

今々はさりげなくクロウの胸元へ手を当てた。たちまち胸に空いた穴は塞がり、傷は癒えていく。


「今々。何を……」


「クロウちゃん。君の目的はさ、自分が悪役となり、もう一つの部隊で姿を隠している妖かしの部隊が君たち暴れている妖かしたちを殺す。そこで君たちを殺した妖かしは英雄となり、妖かしと人は手を組んで平和な世界を創る」


「そこまで知っているのならば、何故君は計画の邪魔をした?」


「そんな終わり方じゃ、クロウちゃんらを殺して創った世界で楽しく暮らせるはずもない。無意識にも重りを背負い続け、やがて彼らは悪霊になる」


「そうか……」

クロウは嘆くように、ため息を吐くようにそう呟く。


「まあ、結局突然現れた妖かしか人間かも分からない奴に敗れたけどな」


「まああのイレギュラーには誰であろうと敵わなかったよ。これは本当に仕方ないことだよ」


「なあ今々、この先お前らはどうやって世界を変えるつもりだ?」


「変える?そんにゃことをしなくても大丈夫だコンコン」

今々はそう言い、黒い霧の中心へ目を向けた。


「ほら見て。クロウちゃんはさ、怖かったんだよ。向き合うことが。だから話し合いもせず殺し合って、一方的な計画を企てた。けどさ、その上でできた世界よりも、やっぱ話し合って出来上がった世界の方が長続きするし面白いでしょ」


「なるほど。そんな考え、私にはなかったよ」

クロウはそう呟き、黒い霧へと立ち向かう深上へ視線を向けた。


深上は純白の火炎を纏い、黒い霧の中を進んでいく。そして次第に黒い霧の中心へ進み、そこにいる七海才花を見つけた。彼女を見つけるや、深上は彼女の心臓目掛け刀を突き刺す。

純白の火炎が才花を飲み込む。次第に漆黒は消えていく。


「不死鳥の刀よ、焼き払え」

黒は晴れ、周囲には純白が広がる。


逢魔時、その妖かしに支配されていた才花は解放された。

黒より解放された才花、彼女を抱え、深上は刀を掲げる。


「世界はこれより新たなものへと変えていく。妖かしも我々とともに生き、そして変えていこう。革命を」

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