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妖かしの使い方  作者: 総督琉
革命
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第47話 これで世界が変わるのなら、

天城は灰となった。いや、それは天城ではない。それを誰もが理解した。


「妖かしと入れ代わっていただと……」

開闢は呟いた。


白鳥美伊紗は何が起きたのか理解できずにいた。

開闢と木更津は理解していた。天城聖華、彼女はこれまでずっと牢の外で生きてきたのではないか。

だとすれば、彼女はその間に何をしていたのだろうか。


「木更津。お前はこのことをすぐに赤羽へ伝えろ。俺は美伊紗を部屋に連れて警護する」

開闢は即座に指示を出す。


木更津は動揺をしつつも、開闢に言われた通りに赤羽のもとへと向かいに部屋を飛び出した。

開闢はもしかしたら天城が美伊紗を狙うかもしれないという疑念を抱えていたため、美伊紗を部屋へと連れていこうとする。


「美伊紗様。今日は部屋へ帰りましょう」


「ねえ開闢。もしかしてさ、天城聖華はまだ死んでないの?」


怖い。そう開闢は感じていた。

まるでメンヘラのような、そんな雰囲気を美伊紗は漂わせている。


「いえ。彼女は今死んだではないですか」


「じゃああの灰は何?確か天城は人間だよね。何で人間のはずの天城が妖かしが死ぬ際のように灰になっているの?ねえ、どうして?」

美伊紗は開闢へと詰め寄る。

初めて感じた美伊紗の恐ろしさに、開闢は返答に詰まって口を閉じた。


「私はあの女に復讐するんだ。これじゃ死んだ父さんが報われない。優しかった父さんが、これじゃ可哀想だよ」


美伊紗が部屋を出ようとするのを察知し、開闢はすぐさま扉の前に立ち塞がる。


「美伊紗様。ここはどうか耐えていただけないでしょうか」


「もう嫌だよ。私は私自身の手であの女に復讐がしたい。もう私を止めることは誰にもできない。だから私は、」


美伊紗が手にしていたものを見て、開闢は驚愕した。

美伊紗が手にしていたのは三種の妖器最後の一つ、黒天剣(ヤタガラス)であったから。

その剣はかつて白鳥南雲が所有していた物、それは天城聖華が白鳥南雲を殺害してから消失していたが、それをなぜか彼女が持っていた。


「美伊紗様……」


「退いてよ。開闢」

低い声でそう言い、美伊紗は剣を開闢へ向けた。

剣には黒い稲妻が駆け抜け、開闢目掛けて放たれた。稲妻が宙を駆け、妖かし連盟本部の近くには巨大な穴が空く。その奥深くに開闢は重傷を負って倒れている。

その隙に美伊紗は剣を持って本部を抜け出した。


「美伊紗……。そして南雲会長。あなた方の人生は、その剣によって壊された。そんな剣……捨ててしまえば良いのに……」


黒天剣(ヤタガラス)を手に入れた美伊紗へ、開闢はそう呟いた。

既に美伊紗はどこかへと去っている。

開闢はその状況に耐えかねてか、一人その穴の奥で嘆いた。


「だから世間知らずのお嬢様の面倒は、本当に嫌なんだよ」



それから二日。

妖かし連盟会長ーー白鳥美伊紗は行方不明となっていた。各市にある妖かし連盟の支部で白鳥美伊紗を捜索するも、彼女が発見されることはなかった。

一体どこへ行ったのか、生存しているのかも分からない状況が続く中、妖かし連盟副会長ーー深上歩はある企みを開始していた。


圦峠(いりとうげ)。私が会長の座へ就くための作戦、そろそろ始めるぞ」


「分かりました」


妖かし連盟本部の副会長へ与えられた特別な部屋で、深上と圦峠は話をしていた。

だが窓を割り、そこへ仮面を被った一人の女性が手に持っていた拳銃を副会長と圦峠へと向けた。


「深上歩、ならびに圦峠。大人しく投降しろ」

銃を向けながら彼女は言う。


「何者だ?」

深上は椅子に座りながら、先ほどと同じ低いトーンでその女性へ言う。


「その前に私の質問にっ……」


彼女は声を漏らし、後ろへと後退した。深上が刀を持って斬りかかって来たからだ。

深上の刀を何度もかわす彼女であったが、引き金を引けず、とうとう肩に刀を突き刺された。

血が周囲には錯乱し、女性は力が抜けて銃を落とした。落ちた銃を深上が拾おうとした時、銃は妖器化が解除され、姿を現した黒猟犬(ブラックハウンド)によって深上は肩を噛まれた。


「ちっ」

深上は舌打ちをしつつ、黒猟犬(ブラックハウンド)を薙ぎ払って吹き飛ばした。


だが肩を噛まれ、まともに戦うことはできなくなっていた。だがもう片方の腕は残っている。

深上は再度刀を握り締め、倒れる彼女へと斬りかかる。


拳銃(ブラックハウンド)

黒猟犬(ブラックハウンド)は黒い霧状に変化し、深上の手元へと向かう。そして霧は黒色の光沢のある拳銃を創製する。


すぐさま彼女は拳銃を深上へ向けた。

瞬間、二人の動きは止まる。

彼女は深上の握る刀を首もとへ当てられ、深上は彼女の握る拳銃を額へと向けられている。

互いに絶体絶命、そんな中、彼女は口を開く。


「なぜ刺さない?」


「気まぐれだ」

そう言いつつも、深上はまだ刀を振るわない。


「お前こそ、なぜ撃たない?」


「奇遇だな。私も気まぐれだ」

そう言いつつも、彼女は引き金を引くことはない。


「なるほど。やはり君が会長になろうとしているのには、何か裏があるようだな」


「あなたこそ、どうやら無差別に人を殺すような人ではないらしいな」


両者ともに武器を下ろした。


「では紅茶でも飲みながら、ゆっくりと話でもしましょうか。この先の未来の話を」


「ああ。仮面をつけていれば紅茶も飲めない、か。紅茶を飲むかは別として、君と話をしてみたい」


「それはどうも」


妖かし連盟本部、その一室で巻き起こった事件。

だがもうじき迫る終焉に、この一連の事件は終焉を防ぐ大きな一手となっていた。

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