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妖かしの使い方  作者: 総督琉
革命
48/53

第46話 革命を、

黒妖市。そこでの戦いに終止符は討たれた。

ユキヒラは死亡し、恐れていた大厄災であった摩天楼も討伐した。だがまだ一つ問題はあった。

摩天楼との戦いから二週間、妖かしは出現することがなくなり、平穏が訪れた。白夜と今々も怪我より復活し、闇本警備会社へと戻ってきた。だが未だに闇本警備会社社長ーー闇本滅王が帰還することはない。

そして闇本滅王が闇本警備会社へ送り込んだユキヒラ、彼が妖かし殺しの一員だったことにより、闇本警備会社の者たちは皆薄々勘づいていた。


「我ら闇本警備会社社長、闇本滅王はやはり黒だ。あの男は妖かし殺しと繋がっている」

今々は会議室にて、集められた社員たちの前で言った。


もし間違えていれば大問題だ。だが皆分かっている。

黒妖市がこれほどの危機に陥っても尚姿を見せず、そして闇本警備会社へ反逆者を送り込んだ。敵と言わず何と呼べば良い。

闇本警備会社の社員は静かなる怒りを抱えていた。


「来巣副社長。あなたが社長になり、新しく闇本警備会社を、いえ来巣警備会社として皆を率いて頂きたい」

幹部の一人である群々は来巣へとそう言った。


それは皆も同じように思っていたのか、誰も反論することはない。

来巣はその空気を感じ取り、言った。


「ああ。私がこの警備会社を改革し、黒妖市を守る剣となる。それが今我々ができる黒妖市への最善の恩返しだ」


来巣は誓った。

この警備会社を自らが率いることを。そして社長となることを。


それを聞き、既に黒妖市から去っていたクロウへタイタンは言う。

「クロウ様。これでよろしいのですか?」


「ああ。仕方ないだろ。いつまで経っても人と妖かしが共存することはできない。我々警備会社がどれだけ頑張ろうとも、それは変わらない事実なのだから。ひとえに、我々は戦うことしかできない」

切ない翼を広げ、彼は言う。


「ですがクロウ様。黒妖市の征服は失敗、これにより我々の多くの仲間が貧困に苦しんでおられます。早くどこかの市を奪わなければなりません」


「そうだな。赤妖市を噴火で失い、それにより多くのはぐれ妖かしが出現した。一人暴走した白鳥南雲を止めはしたものの、その被害はまd形となって残っている。この先どうすれば良いか、もはや私には分からない」


悩むクロウ。

だが彼のとる選択肢は一つしかなかった。


「タイタン。最後の仕事だ。これまで私のようなはぐれ者についてきてくれてありがとな。後は全部俺の仕事だ」

そう言うと、クロウは背後にいるタイタンへ振り向いた。


「本当にありがとう」


クロウはビルの屋上より飛び降りた。

地面すれすれで翼を広げ、大空へ飛び上がって夜景の中へ消えていく。少しずつ小さく消えていく彼の姿を、タイタンは虚しげに見つめていた。


「これで全てが終わってしまうのですね。これまで長きに渡って続いた妖かしと人との戦い、それはじきに終止符が討たれる……ことになるのだろうか」

タイタンは静かに夜空を眺め、考えた。


「クロウ様。あなたが世界を変えたいということは分かるのです。けれど、それではあなたが報われないじゃないですか。だけど私には、何もできない。クロウ様、どうか生きて帰ってきてください。その時は妖かし殺しのリーダーとしてではなく、ただの一人の妖かしとして」

そう思いを馳せ、タイタンは未来へ希望を向けた。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



それはある人物の処刑が行われる日。

白鳥南雲、かつて妖かし連盟の会長であった彼を殺した大罪を背負った彼女は、今木更津亜図人によって殺されようとしていた。

妖かし連盟の地下室の壁に鎖で縛られ、大罪人である彼女はーー()()()()は木更津亜図人が構える二本の刀を前に、笑みを崩さず立っている。

木更津は躊躇いを見せる。そんな彼の背後から、現在の妖かし連盟会長である白鳥美伊紗は木更津へ叫ぶ。


「早く殺してよ。その大罪人を。私の父を殺したその女を殺してよ」


木更津は刀を握る手を震わしていた。

彼は迷っていた。天城聖華、彼女を殺すということに。


「木更津。君が彼女を殺す役を背負いたいというから託したのに、それ以上躊躇えば僕が殺すよ。木更津亜図人」

開闢は鋭い視線を向け、空飛ぶ絨毯に横たわりながら木更津を見ていた。


覚悟を決めるしかなかった。

木更津は刀を握り直した。


「すまない。天城、この先の世界はきっと苦しいものにならないようにするから。だからどうか、安らかに眠れ」

最後、そう言って木更津は天城の顔を見た。

その表情からは何の感情も窺えない。まるで、これから死ぬことを理解していないようだった。


木更津は覚悟を決め、天城の首を刀で切り落とした。もう一方の刀で天城の心臓を突き刺す。

それが妖かし連盟独自のやり方であった。

首は宙を舞い、地を転がる。確実に彼女は死んだ、その場にいた誰もがそう思っていた。しかし首から血が出ることはなく、そも代わりに出たのは灰。そして体は少しずつ灰となって消えていく。

驚愕し、木更津は転がった頭へと視線を移した。









だがそれはーー灰となった。

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