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妖かしの使い方  作者: 総督琉
黒妖街
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第44話 一瞬の攻防、

闇本警備会社の社員たちは立ち上がった。再び摩天楼へ攻撃を仕掛ける。だが摩天楼の圧倒的な防御力と攻撃力に、社員たちはただ無意味に吹き飛ばされるのみ。

赤羽は攻撃をやめ、ずっと戦いを眺めていた雪平のもとへと向かった。


「おい雪平。なぜ戦わない?」


「別に。ただ戦う理由がないから戦わないだけですよ」

雪平は退屈そうに瓦礫の上に座り、そう赤羽へ言う。


「戦う理由か。お前はここ黒妖街を守るために闇本警備会社の社長より派遣されたのだろう」


「社長ね。君は妖かし連盟の者だろ。今の俺は妖かし連盟の妖かし語りではなく闇本警備会社の社員。お分かりいただけただろうか?」

雪平は怖じ気づくことなく赤羽を挑発するようにそう言う。


「なるほど。外部の人間が口を出すなと」


「大正解。君にような人間には口出しされたくないのですよ。故に赤羽心、私の行動に口出しするな」

鋭い視線で雪平は赤羽を睨む。


「おいおい。お前、そんな口を利ける状況だと思うのか?」

そう言い、雪平の背後には木更津が二本の刀を構え、立っていた。


「何のようだ?」


「いい加減偽るのは辞めておけ。我々妖かし連盟は気付いているぞ。君たち"妖かし殺し"の存在に」


ーー妖かし殺し

その名を聞いた雪平は、何を抱いたのか無表情へ変わる。

かけていた眼鏡を外し、静かにため息を溢すとともに、両手に手袋をはめた。


「で、あなた方の目的は何でしょうか?」

雪平は立ち上がり、いたって冷静にそう問う。


「雪平、君をここで()()


「捕まえる、ではないのですか?」


「これまで君たちは多くの命を奪ってきたんだ。その報いに、これより貴様の命を頂く。これでもあまい方なんだよ。本当はこれまで死んでいった者たちが味わった痛みを君へ送りたかったが、そうもいかない。だからせめて、死ね」

赤羽は冷酷にそう言うと、黒紫色の羽を広げ、雪平へと飛び進む。


「来たか」

雪平は拳を構え、空より飛来してくる赤羽の攻撃へ備える。


赤羽は羽を広げて雪平へと降下し、重たい蹴りを雪平の腹へと入れた。雪平の体は舞い上がり、残っていたほぼ全壊に近い家屋の壁にぶつかった。

通りすぎる赤羽であったが、雪平のつけている冷気を纏う手袋に触れられたのか、右足が少し氷に侵されていた。


「俺の速度についてきたか」


「当たり前だろ。裏世界の支配者ーー妖かし殺しの一人であるこの俺、雪平を、ユキヒラを少々舐めすぎだ」

ユキヒラは服についた汚れを払い、拳を赤羽へと構える。


「さあ来なよ。正義のヒーローさん」



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



その頃、摩天楼を止めることはできず、既に闇本警備会社の社員の半数以上が力尽き、倒れていた。

残るはコタツを筆頭とした社員のみだが、それだけでは摩天楼は止められない。


「止まれえぇぇぇぇぇえええ」

コタツは刀を強く握りしめ、摩天楼の足へと刀を振るう。だがその硬い装甲に弾かれ、攻撃は無意味と化す。


摩天楼は足を振り上げ、コタツを吹き飛ばした。


「もう……戦えないよ……。申し訳ありません。白夜様……」

コタツは地へ転がる。

丁度そこへ摩天楼が大いなる一歩を踏み出そうとしていた。


動くこともできず、力尽きてコタツは指先すらも動かせない。

ただ視界を埋め尽くした巨大な足の裏に仰天するのみ。

だがそこへ、一人の女性は現れた。


「もう大丈夫。ここで、摩天楼は討たれる」

闇本警備会社副社長ーー来巣妃芽、彼女の準備は整ったのか、居合いの体勢で刀を構え、摩天楼の足元へ立つ。


「副社長……」


「ありがとな。この一瞬のためにその命をも犠牲にしてくれて。だがもう大丈夫。ここで今、摩天楼を討つ」


鞘へ収められた赤紫色をした美しい色の刃が顔を出した瞬間、来巣は地を駆け、摩天楼の体を走り抜け、摩天楼の体へと傷をつける。

遥か天まで届くかのような巨体、それほどの摩天楼の体の上を走り、腕を斬り落とした。だがもう一方の腕が来巣を捕らえようと進む。それに対抗し、来巣は真っ向から腕を粉々に切り裂いた。


「無駄だ。今の私に、斬れぬものはない」


まるで閃光。

目に見えぬ速さで駆け抜ける来巣は摩天楼の足をも斬り飛ばした。そして宙で身を翻し、空を蹴って摩天楼の心臓部へと飛び込む。刀は円を描いて傷を刻む。周囲には摩天楼の残骸が散る。

摩天楼の心臓部を貫き、来巣は背中を走り抜け、雲の上にある摩天楼の頭部目指して足を駆け出した。


「一刀、龍魔狩り」


雲を抜け、摩天楼の背後より来巣は首を斬り飛ばした。巨大な頭部は宙を舞い、そして地へと落下する。それとともに、摩天楼の体は灰とかし、空の彼方へと風に流れて消えていった。


「決着はついた。この勝負、闇本警備会社(我々)の勝ちだ」

来巣は笑みをこぼし、雲の上よりそう叫んだ。

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