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妖かしの使い方  作者: 総督琉
妖かし連盟の反逆者
33/53

第32話 故に、

天城聖華は散弾銃を白鳥南雲へと向ける。

だが白鳥南雲は笑みを浮かべ、黒い何か禍々しいオーラを放っている剣を手にし、天城聖華へと呟いた。


「天城。この前は確かに俺が負けた。だがな、残念ながらこちらは用意が整っている。お前を殺すための作戦が」

白鳥南雲は立ち上がり、剣を片手で構えて聖華へとかざす。


「消え失せろ。流黒(りゅうごく)

剣からは黒い禍々しいオーラが放たれる。そのオーラは聖華を飲み込もうと放たれた。

聖華はもう一方の手で構える槍を振るい、黒い禍々しいオーラを吹き消した。


「その槍……神木のか……」


「南雲。私が背負っているのは死んでいった闘妖の者たちの意思なんだよ。だから、絶対に負けてあげないんだよ」

聖華は槍で黒いオーラを弾きつつ、南雲へと突撃を仕掛けていた。


南雲は苛立ち、オーラを放つのを止めた。すぐに剣を両手で構え、槍を持って駆け寄ってくる聖華へ備える。

オーラが消えたと同時、聖華は散弾銃を南雲へと向け、放つ。


「何……」

南雲は机を蹴り上げて弾丸を防いだ。だが数発、机を貫通した弾丸が体をかすっていた。


「早く来い……。早く」

焦りながら、安勢理ながら南雲はそう呟いた。

聖華は周囲へ警戒を払いつつ、天井へ足をつけ、南雲へ向けて飛びかかる。


「仕方ない。爆弾(トモシビ)

南雲は腰に下げる札を取り出し、天井へ向けて投げ飛ばす。札はある妖器を創造し、その直後に爆破する。

爆炎に飲まれ、聖華は体が黒こげになりながら佑果へ転がる。


「爆弾の妖器……何だそれ……」


「世界は広い。故に、天城、お前はまだ世界を知らなすぎる。お前が今敵に回しているのが誰か、よく考えろ」

南雲は黒い剣を握りしめ、倒れる聖華のもとへ歩み寄る。


「爆弾だけで終わると思うなよ。感電爆弾(カミナリコゾウ)

南雲は腰に下げている札を一枚手に取ると、それを倒れる聖華へと投げた。聖華は力を振り絞って立ち上がろうとしていたが、間に合わない。


札が妖器を創造すると同時、電撃が聖華へと流れる。

全身に電撃が走り、聖華は動けず床へ倒れる。起き上がることすらもできはしない。


「さあ、まずは三種の妖器の一つ、あの白い剣を返してもらおうか」


「ざ、残念だったな……。あの剣なら、マグマの中に消えて今頃欠片も残さず消えてるよ。どうせお前が裏で繋がっている何者かが欲しがっているのだろう」

電流がまだ全身へ残っている中、その痛みに耐えながら聖華は言う。


「あの剣を……白月剣(ツキノウサギ)を……ふざけんな。小僧が。あの剣がないと、俺は裏の世界で生きられなくなるんだよ」

南雲は憤怒し、勢いよく剣を聖華へと振り下ろす。振り下ろされた剣は、一人の男の心臓を貫いた。


「何をしている。お前は!?」


南雲の振り下ろした剣を木更津は聖華をかばってその身に受けた。既に銃弾を浴び、意識を保っているだけで限界だったはず。そんな彼が、しかも敵であった聖華をかばう。

その行動に南雲も聖華は驚いた。


「天城聖華。どうやら俺は勘違いしていたようだ……。全部……話は聞いていた……」


「木更津。私をかばう理由はないはずだ」


「あなたは俺のライバルですから……。あなたは俺に二度も勝利した。だからあなたには……生きていてほしい……。妖かし連盟を変えてくれ。俺の後輩を……どうか護ってほしい…………」

木更津は最後に聖華へとそう言うと、静かにゆっくりと倒れた。


聖華は隣に倒れている木更津を見て、思わず言葉を失った。

命懸けで自分を護ってくれたその少年に、聖華は動揺していた。その少年とは敵同士、そこまでの信頼関係もないはずだ。それでも彼は聖華を信じた。彼女を信じ、自らの命を懸けた。


「…………」


「ちっ。邪魔が入ったが、まあ良い。今度こそは死ね。天城」

再度、南雲は剣を聖華へと振り下ろす。


(ああ。このまま動かなければ私は死ぬ。だが動けるのならとっくに動いているさ。動けないから私は死ぬ……。

なあ木更津、お前は、なぜ私を護った?私は臆病でやる気のないただの妖かし語り。才能があったから妖かし語りになっただけで、正直闘うなんてこと、面倒だと思っていた。今も思っていたーーはずだった。

だがお前が私をかばったせいで、私は私が分からなくなったよ。

今までの私は金さえ手に入ればどんな依頼でもこなしてきた。だけど神木という男に出会ってから、私の人生は一変した。金も得られず闘う日々、そんな毎日に私は思っていた。面倒だと。

面倒だ、本当に面倒だ。

それ故、私は自分に素直になれない。

それ故、私は闘うことを拒んでいる。

それ故、私は命すらにも執着がない。

だけどもう、私はやめる。

私は、私は天城聖華。妖かし語り。

それ故、私は闘う。)


「なあ南雲、お前、ちょっと調子に乗りすぎだよ」

聖華は足を振り上げ一回転し、しゃがみこむようにして床に立つ。


「まだそんな気力が……」


「私は私を全うする。故に、私はお前をここで倒す」


南雲はすぐさま聖華へと剣を振り上げた。聖華は飛び、剣の上に着地するや剣が振り上げられると同時に更に飛び上がる。天井に足はつく。

聖華は散弾銃を腰に下げ、槍を両手で握り、南雲へと降下する。


「貫け。(イッカク)

天井から飛来せし聖華の握る槍、その槍は南雲への怒りを晴らすかのように心臓を貫いた。


「終わりだ。白鳥南雲」

白鳥南雲、今彼は討たれた。

天城聖華によって。

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