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妖かしの使い方  作者: 総督琉
第二十六回語り部
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第16話 語り部は始まった、

妖かし語り学校での修行は終わった。

そしていよいよ始まったのが、妖かし連盟による妖かし語り同士の戦いーー語り部。


「聖。お金稼ぐチャンスだね」

黒猟犬(ブラックハウンド)は気合い十分と言った具合に走り回り、聖華へと言う。


「ああ。三位になって、百万持って帰るとしよう」



第二十六回語り部。

今年の大会は一味違う。


「聖華、聞いた話によるとね、今年の大会にはこれまで上位を取ったことのある妖かし語りが三名も参加しているんだって」

才花は聖華へと言った。


聖華は難しい顔をしつつも、才花へと言う。

「まあ大丈夫だろ。私はこれまで多くの妖かしを倒してきたんだ。上位を取っていようと相手にはならないよ」


「今回の大会で絶対に賞金を取りましょう」


「ああ。絶対だ」


そこへ偶然通りかかった一人の男の足は止まった。聖華と才花の話を聞いていたからだ。

男は嘲笑うような笑みを浮かべつつ、聖華の方へと歩み寄る。


「おいおい。まさかだけど、お前らが上位に入ろうとしてんの?現実を見ないと」

がたいが良く全身に鉄の鎧を身に纏った大男は見下すように聖華へ視線を送る。


「君は誰?」


「俺は二回前の大会で四位を取っている。お前など相手ではない」


「なるほど。お前じゃ私の練習相手にもならないということを自分で理解しているのだな。それならそうと素直に言えば良いのに。ツンデレだな。君は」

聖華は男の挑発に笑みを見せながらそう返答を返した。


男はその言動に腹を立てる。だがその怒りを隠すようにしながら聖華へと言う。

「大会で戦うことになったら覚えていろよ。俺がお前の心をバキバキに砕いてやるから」


「やってみなよ。おっさん」

聖華はそう言い放ち、立ち去った。


聖華が立ち去った後、男は怒りを露にして地団駄を踏む。足を振り上げ地面を叩き、それを何度も繰り返す。その幼稚な行動には周囲にいた者たちは笑みを浮かべて通り過ぎる。

それに動じず、男は込み上げた怒りを吐き捨てるように呟いた。

「必ず後悔させてやる」



語り部は始まった。

今妖かし語りたちの力を試すように、その大会は始まった。


「ではこれより、語り部を始める。参加者は集まってください」


聖華と才花は足を運ぶ。

案内された場所にて、彼らを集めた少年は空飛ぶ絨毯(じゅうたん)に座り、語り部へ参加する者たちへ明るい声で言った。

「じゃあいつも通りに行くよ。君たち参加者にはこれから六つの会場で戦ってもらうよ。それぞれの会場から生き残った一人ずつだけが次のステージへ上がれる」


四方には六つの大きな扉があった。

それが恐らく六つの会場へと繋がっているのだろう。


「聖華、どうする?」

才花は不安になりながら聖華へと問う。


「今の才花の実力ならば十分に残れると思う。それに六つも会場があるのならそう簡単に強い者と当たることもない。才花、一人で行けるか?」


「はい。頑張ります」

才花は胸を張り、適当に一つの扉の奥へと入る。


聖華は才花を見送り、黒猟犬(ブラックハウンド)とともにまだ扉を通っていない妖かし語りたちを見ていた。


「賞金がかかっているんだ。少なくとも最後の一人になれるように相手を見極めないとな」

聖華は最後の一人となった。


「早く決めてください」

絨毯に座る少年は聖華へと言う。


「じゃあここにするか」

聖華は扉をくぐった。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



「ではこれより妖かし語りたちによる戦いを始めたいと思います。あなた方のいる場所は現実であり現実ではない。だから殺しても実際には死なないので安心して殺してください。では、開戦」

少年の一声により、各会場での戦いは始まった。


聖華がいた会場は市街地のようだ。銃を使う聖華にとっては良いフィールドでもあるが、死角や障害物も多く悪いフィールドとも言える。

そんなフィールドの中、聖華は拳銃を片手に物陰へと潜む。


「見つけた」


建物と建物の間に身を潜める聖華、だが彼女の背後には建物の大きさを遥かに超越する大きさの剣を持つ男がいた。その男は剣を振り下ろす。

聖華は宙へ身を投げて回避するや、銃口を男へと向けて銃弾を放つ。


「そんな……」

早速一人脱落した。


「デカイ武器を振り回すのも良いが、もっと自分に合った武器を考えろ」


聖華は今度こそ身を隠そうと建物の中へと入る。その直後、入った建物の壁が爆発する。

聖華は爆発によって飛んだ瓦礫を銃弾で砕き、家具に身を潜めて爆発によって空いた壁を見た。そこには弓を構えた一人の青年が立っていた。


「さて、狩りの時間だ」


聖華は拳銃を片手に床を走ってその青年のすぐ側まで移動する。そこから銃口を青年の腹へ当てて銃弾を放つ。だがその直前で聖華の腕は宙を舞う。

銃を握った腕は宙を舞い、そして地に落ちる。

聖華は冷や汗をかき、動揺に体を支配される。


「残念、俺は一人じゃない」


聖華の腕を吹き飛ばした矢は明らかに青年の背後から飛んできたものであった。

それにくわえ、当たらなかったものの足元には矢が一本刺さっている。


「三人か……」


「君は狼。だから狩られる」

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