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今日だけ不良になります。

キーンコーンカーンコーン... ガヤガヤ..ガヤガヤ..


『ちょっと、モモちゃん。 あんた一体、朝から何やってんのさ! おばさんからジョギングに行った先で人命救助してるって聞いたよ! 大丈夫だったの?』


『モモさん、おはよ。 命救えたのか?』


1限後、早速ナヨ君と寧ちゃんが声を掛けてきた。

「おはよう。ナヨ君、寧ちゃん。 それがさぁ、人命救助っていうか、結局のところ相手はただ寝てただけだったんだよ。でも、何だかんだおじさんの世話をしてて、気が付いたらもう時間がなくなっててさぁ~。頑張って急いだんだけど遅刻しちゃった、、テヘッ♡」


『もう! テヘッ♡じゃないでしょ! 先生に凄く怒られたのに! それにしても、とんだ迷惑おじさんだね。そんなの放っておけば良かったのに。』


「イヤ、でもさ、リストラされて可哀想なおじさんだったんだよ。 ずっと外で寝てたのに、財布も持ってなくて水も飲めない状況でさ、そんなのもう放っておけないじゃん。」


『モモさん、人が良すぎだね。 でも、そういうところがモモさんの良いところ。 そのおじさんもきっと感謝してるよ。 いつか恩返ししてもらえるかもね。』


「フフッ♡ ありがと、寧ちゃん。 でも、水を1本あげただけで、名前も教えてないし、恩返しなんて望んでないよ。」


『ふ~~ん。 あっ、そう言えば!モモちゃん、朝先輩に連絡してなかったの? 何時もの公園で待ってたみたいだけど。』


「え? 先輩居たの?」


『後ろ姿だったけど、先輩だったよ。声をかけようかと思ったんだけど、モモちゃんの代わりに朝の学級委員の仕事しなきゃいけないと思って、急いでたから声掛けれなかったんだよね。』


「そっか、、先輩待っててくれたんだ、、(ホッ)」


『連絡しなきゃダメじゃん! 今日は、昼休みも先生に呼び出しくらって時間ないと思うけど、ちゃんと後で謝んなよ~~!』 


連絡ならちゃんとした。 でも、出てもらえなかった。 さすがに、ここまで連絡がつかないと良くない方向ばかり考えて、正直電話をする度に心はズタボロだった。 先輩を信じていない訳じゃない。 でも、私は人の気持ちに絶対なんてない事を知っている。 


先輩に避けられていた訳じゃなかった。 そうとなれば、時間が空く放課後まで大人しく待つなんて出来るわけがない!


「ごめん、ナヨ君。 私、今日だけ不良になります!」スチャ..

『は?? 不良って、何言って、』

「先生には上手くいっておいて!」ビューーーーンッ...


『ちょと、モモちゃん! どこ行くのさーー!!』


「信じている」は、結局は「信じたい」なんだ。 その「信じたい」を限りなく、「信じている」に近づけるために、人は日々大切な人に言葉や行動で自分の思いを伝え続ける。


先輩に会いたい。 連絡取れなかった間、何をしていたのか、私がどれ程先輩に会いたかったかを話したい。 気持ちを確かめ合って、この不安な気持ちを消し去りたい。



ドタタタタタタタ... 廊下を一心不乱に駆け抜ける。


『モモ! どこに行くの?! もう直ぐ休憩時間が終わっちゃうよ!』


おっと、ブライアンのこと忘れてた。 ブライアンとの中途半端な関係もどうにかしなきゃだけど、今は時間がない。 ごめん、ブライアン。


「ブライアン、私、今忙しいから後でね!」 ドピューーン..


『え? 、、モモ?』







ドタタタタタタタ... ピタッ! 


ーーー《2年 特進クラス》ーーー 


「スゥーーッ、、ハァーーッ、、、よし、行くぞ!」 ガラッ!!


『『『・・・・・・。』』』 シーーーン...ジロジロ..

『え?何?』『あの子、1年生の広瀬さんだよね?』『授業始まるのに何しに来たんだろ?』 ヒソヒソ..


うっ、、アウェイ感、ぱっねー!! ドキドキ..


『ちょっと、あなた何しに来たのよ! もう、授業が始まるわよ! 自分の教室に帰りなさい!』 

出たな! 南夏音! 今日も、クソ綺麗だなぁ!! でも、もうお前には怯まんぞ!! 


「フッ、、授業なんてどうでも良いんっすよ! 私、不良なんで!!」

『は? 何言ってんの?』

「すいませんけど、南さんに構ってる暇はないんです。 すっこんでてもらえますか!」

『なっ、、!!』


構わず、南さんを素通りする。 私が目指すはただ一人!  


スタスタスタスタ.. バンッ!!

目的の人物が座る机に不良らしく手を叩きつける。


「先輩、話があるんで、ちょっと顔貸してもらえますか!」 グイッ!

『え? ちょ、、モモ?!』 先輩の手を引き教室から連れ出す。



スタスタスタスタ.. クルリッ..

「東大寺先輩をお借りします! 全ては私の責任なので先輩は何も悪くありません。 先生へは1年の広瀬に連れ去られたと言ってください。 それでは、お騒がせしました。 失礼します。」

クルリッ.. スタスタ.. ガラッ、ピシャン!!


『広瀬ちゃん、やっる~~♪』

『ちょっと、陽造! 何悠長なこと言ってんのよ!』

後ろから安倍さんと南さんの声が聞こえたが、気にしてられない。 先生達に見つかる前に人目のつかない場所に先輩を連れ去らねば!



キーンコーンカーンコーン... 授業が始まる鐘がなっている。


スタスタスタ..スタスタスタスタ..


『ちょっと、モモ!』


授業をサボるなんて初めてだ。 こんなことしたからには、この後先生方にこっぴどく怒られるだろう。 最悪、首謀者として停学になるかも。 でも、それでも良い。 もう、我慢するのなんて嫌だ。 嫌なんだ!!


『 モモ!! 』


ビクッ!!


『どうしたんだよ、こんなことして。 電話出来なかった事を怒ってるのか? それなら理由を説明するから、』


ギュッ.. 先輩に抱きつく。 


『、、モモ?』

「スゥーーッ、ハァーーッ、、、」


先輩がいる、、先輩の匂いがする、、先輩の体温を感じる!


「合いたかった、、。 何してたんですか? 何度も電話したんです。 先輩に何かあったのかもとか、もう私と一緒に居たくないのかもとか、考えたくないのに1人でいると良くない考えばかり浮かんできて、、怖くて、、寂しかったです。」


ギュ.. 先輩が私を抱きしめ返してくる。

『、、ごめん。 寂しい思いをさせて、本当にごめんな。 俺はモモと一緒に居たくないなんて絶対に思わないよ。俺にはモモが必要だから、俺から離れるなんて出来ない。ちゃんと説明するから、一旦花壇に座ろう。』


先輩が腕の力を弱めて私から離れようとする。

ギュ.. 「嫌です。 、、まだ足りない。 寂しかった分、もっと愛が欲しいです。」


『クスッ..何か、ちょっと連絡が取れなかった間に随分甘えん坊になったな。』

「嫌、、ですか? 教室まで押し掛けて、皆の前であんなことまでして迷惑でしたよね。 、、ごめんなさい。 でも、もう我慢の限界だったんです。」


ギュ..『全然嫌じゃないよ。 寧ろ、、ちょっと嬉しい。 何時ものモモと違って、余裕ない感じが頭の中が俺でいっぱいって言ってるみたいで、凄く可愛い。』


「、、悪趣味ですね。」

、、とは言ったものの先輩が無理してないか不安になり先輩の顔を見上げる。 表情がいつもの優しい先輩だ。 勝手に授業から連れ出したのに全然怒った様子はない。


『フフッ、、知らなかった? 俺、好きな子にはとことん愛して貰いたいし、自分もとことん愛したい質なんだ。 それで? どうしたらもっと俺の愛をモモに伝えることが出きる? どうして欲しい?』


うぉ~~い! なんすっか、このご褒美タイム! しかも愛とか言っちゃってるし~~!! ハァ、、ハァ、、苦し。


先輩が私を見つめてくれる。抱きしめてくれる。 それだけでも幸せだけど、、もっと欲しい。 もっと、先輩に触れたい。


「キ、キス、、したいです、、ポッ♡」

『クスッ..俺も、したいと思ってた。』 、、チュウ♡


チュ.. ヌルッ.. チュパ.. チュパ..♡


ここが屋外だとか、学園の裏だとか、授業中だとか、そんなのは全部どうでも良い。 頭の中が甘くとろけて、可笑しくなるくらい、私たちはキスをした。 




『落ち着いたか?』

「、、はい。 勝手な事してすいませんでした。」

『全く。 本当だぞ! こんな無理して! モモに何かあったらどうするんだよ!』

「う、、すいません、、。」

『ハァ、、でも、そうさせたのは俺が原因だよな。 モモ、不安にさせて本当にごめんな。』 ポンッ..ナデナデ♡


先輩が優しく頭を撫でてくれる。 撫でられた頭がとても心地良い。



私達は取り敢えず近くの花壇に座って話をすることにした。


『ばあちゃんのカフェから帰った後、中国支社の視察に急遽動向することになったんだ。 直ぐにモモに連絡したかったんだけど、携帯が行方不明になっちゃって、連絡出来なかった。 行方不明って言っても、多分母さんが秘書の堂島に言って携帯を取り上げたんだろうけど、、。』


「え? 、、それって私が原因ですか?」


『嫌、モモの事だけじゃないと思う。 多分1番の原因はばあちゃんだよ。 俺とばあちゃんが会ってたことが気に入らなかったんだと思う。 あの人は昔から俺がじいちゃんとばあちゃんに会うことを嫌っていたから。』


「何でですか? 仮にも義理のお義母様ですよね? あ、、不躾にすいません。 答えられない事だったら良いんです。」


『いや、良いよ。モモには話そうと思ってたから。 じいちゃん達と俺の両親が中が悪かったって言うのは前に言っただろう。 原因は会社の経営方針なんだけど、他にもじいちゃん達は俺と兄貴の教育方針でも両親と揉めたんだ...』


先輩は私にお爺様達とご両親の間に何があったのかを教えてくれた。


先輩のお祖父様はまだ子供だった先輩と東大寺先生が、ご両親の英才教育に雁字搦めになっているのをあわれみ、事あるごとに外の世界に連れ出した。

そうしてるうちに、一番会社を継いで欲しかった長男である先生が教員への道に勝手に進み、ご両親はその原因がお祖父様達にあると考えたのだ。

そして、先輩にも同じ事が起こらないよう、お祖父様達と関わる事を禁じた。


う~~ん。思った以上に、根が深く何の力もない今の私にはどうすることも出来ない話だ。 孫に自由に育って欲しいお祖父様達の気持ちも分かる。

でも、やり方は行きすぎているかも知れないが、会社を継いで欲しいご両親の気持ちも分かる。 


うむむ..難しい。 どう考えても、これは私が口を挟める事ではない。 でも、これだけは出来る。 


「先輩、私は先輩が選ぶ道を全力で応援します。 先輩が心からやりたいと望む道の手助けがしたいです。 だから、私に出来ることはもっと頼ってください。 私は先輩が望む限り、先輩のそばに居ますから。」


『モモ、ありがとう。 モモ、俺さ、実はやりたいことがあるんだ。』


「やりたい事?」


『そう、やりたい事。俺、ばあちゃんのカフェを継ぎたいんだ。ばあちゃんのカフェをもっと活気付けてさ、あそこをいろんな人が笑顔になれる場所にしたい。 そして、そこにはモモも居て欲しい。 勿論、モモはモモのやりたいことをやってくれて良いよ。でも、帰る場所は俺の側であって欲しい。 あ、何かこれプロポーズみたいだな! ダメだな俺、モモが好きすぎてどんどんバカになっていく。高校生でプロポーズとか夢見がちすぎだろぉ~~、、カァァァ..』


うわっ、赤面した先輩可愛い♡ 尊♡ 先輩の言葉と行動でどんどん気持ちが満たされ、幸せな気持ちが溢れてくる。幸せだ。この幸せを手放すなんて考えられない。 


知っていますか、先輩。 私なんてとっくの昔に先輩の事を、バカが付くくらい大好きなんですよ。


「フフッ♡ 先輩、そのプロポーズ、お受けします!」


『な~~にが、そのプロポーズお受けしますだ!! この、バカ者!!』


『「(ビクッ)!!!」』


「ゲッ、、先生!!」『兄貴!!』

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