遅刻
拙い文ですが気楽に読んで頂ければ幸いです。
ファンタジー要素も多いので現実では起きないような事も起こります。ご了承の上お読み下さい。
キーンコーンカーンコーン... ダダダダダッ...!
「はぁ、はぁ、、」 私は今、必死に教室に向かう廊下を駆け抜けている。
キーンコーンカーン... ドダダダダダダッ!!
「はぁ、はぁ、はぁ、、」 大丈夫。 奴は何時も始業の鐘がなり終わってから現れる。 まだ間に合う。 間に合わせてみせる!!
コーーン、ガラッ!!!
「ふぅ~~っ、セ、セーフ。」
『じゃないな。 遅刻だ、広瀬君。」
「はぁ、はぁ、、へ?」
苦しい息を押し殺し顔をあげると、、デデーーンッ!!
東大寺先生が仁王立ちでこちらに睨みを効かせていた。
なぬ?!! 何故、もう教室に??
「せ、先生!! 何故、ここに?!! 何時もならもう少し後に、、ハッ!!」
ゴオォォォォォォ...
『ほう、、可笑しな質問をする。 自分の受け持つクラスに何故私が居ては行けないんだ?』
「い、いえ! そう言う訳ではなくて、今日は何時もよりお早いので、、ゴニョゴニョ...」
『そんな事はどうでもいい。 広瀬、特進クラスの学級委員ともあろう者が、遅刻とはいい度胸だなぁ。』
うっ、聞いたの自分じゃん! それに『広瀬』って、素が出ちゃってますよ、先生!!
「申し訳ありません! 今日は朝から色々とありまして、始業ギリギリの時間になってしまいました!!」
説明しよう。 普段から品行方正な行い、先生方や生徒達からの信頼も厚く、遅刻なんて言葉に無援な私が何故遅刻なんてしてしまったかと言うと、話しは早朝5時にまでさかのぼる。
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「うっ、、全然眠れない。」
ブライアンへの今後の対応策は然ることながら、先輩に今日は会えるのかとか、連絡が取れなかった間何してたのかとか、考え出したら次々に悩み事が出てきて収集がつかなくなり悶々として全然寝れない。
「よし、、こういう時は無理に寝ようとしても時間の無駄だ。 寝るのは諦めて時間を有効活用しよう。 先ずは、、走りに行くか。」
朝5時といえばまだ外は暗く女の子が一人で外に出るんなんて危険があるのでは?と、思うかも知れないが見くびるなかれ。 私はハイスペック女子を目指しているのだ。当然、護身術も中1の頃から護身術教室に通って身に付けている。最近は体型維持も兼ねて週末1時間のボクシング教室も増やした、そこら辺のヒョロッヒョロ男子より絶対に強いと自負できるだろう。
え?何だって? 彼氏持ちのリア充に習い事、勉強の時間がそんなにとれるのかって?
取れるんだよ!! 何せ、先輩は付き合った当初から忙しくて、会える時間は学園での少しの時間と、ごく稀にある先輩の予定が空いた休日の日だけだからね!! 時間ならたっぷりとあるのさ!!
クッ、、自分で言ってって悲しくなってきた。
良いもん! それでも、先輩が好きだから側にいるんだもん!!
う、うわぁ~~んっっ、、 ダダダダダダッ.....
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ...」
少しキツメのペースで走っていると余計な事を考えずに、自分の呼吸と足から伝わる地面の衝撃に集中できて落ち着く。
静かだ。 日課にしているジョギングタイムより1時間早いだけで、随分街の雰囲気が違って見えるもんだな。 この時間だと車通りも殆どなく、人も歩いていない。 まるでこの世界に自分一人しかいないようだ。
気持ちがいい。 時間もあるし、少し遠出でもしてみるか。
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ...」
私は隣町のかいかい海岸まで走った。 ここ迄で約1時間弱。ここで折り返せば家に着くのは7時頃になるから丁度良い。 よし、そろそろ折り返すか。
「ハッ、ハッ...ん?」
折り返しは折角だから浜場を走ろうと砂浜に降りると、何やら黒い大きい塊が見える。
「不法投棄か?」
全く。 こんなに綺麗な海沿いに不法投棄なんて常識のない輩がいたもんだ。 何が捨てられているのか気になり黒い塊に近付いていくと段々形が明確になっていく。
「え?、、まさかだよね? え、ええ??」 ドキドキドキ...
黒い物体まで100M。 間違えない!! あれは、、人だ!!
「ギャ~~ッッ!! 大丈夫ですかぁぁ~~ッッ!!」 ドドドドッ...
人命救助をしようと急いで倒れている人物に駆け寄る。
倒れていたのは40代後半から50代位のスエット上下の中年男性だった。
事件?? それとも急病??
「大丈夫ですか!! しっかりしてください!! 意識はありますか!!」
『・・・・・・・。』 反応がない!!
「ワ~~ッッ!! どうしようぉぉ~~!!」 オロオロ..
周りには私とこの人以外誰もいない。
落ち着け!! 今、私がしっかりしないと!! この人を助けられるのは私しかいないんだ!!
ガバッ!! 迷わず胸に耳を当て心臓の音を確かめながら、同時に呼吸があるかを確かめる。
ドクン、、ドクン、、『スーー、スーー..』
よし。 心臓は動いているし、呼吸もある! 見た感じでは外傷もなさそうだ。
「良かった~~、、えっと~、次は~、、そうだ! 救急車!!」
ジョギング用ポーチの中から携帯を取り出し救急車を呼ぼうとするが手が震えてスムーズに行かない。
『う、うう~~ん...』
ーーー !!! ーーー 気が付いた?!!
「大丈夫ですか?!! 今、救急車を呼びますからね!!」
『きゅ、、きゅうしゃ、、?』
「はい! 救急車、今すぐ呼びますから安心して下さい!!」
『え?! 救急車?!!』 ガバッ!!
「ギャッッ!!」
突然、倒れていた男性が起き上がったので変な悲鳴を上げてしまった。
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結局、目を覚ました男性は、至って健康で何の外傷も無かったので救急車は呼ばないことになった。 今は意識もしっかりしていて私は男性と2人、石段に腰かけている。
『いやぁ~~、脅かせて悪かったね。 水まで買ってもらっちゃって、本当に申し訳ない。』
「いえ、気にしないで下さい。 でも、何でこんなところで倒れていたんですか? しかも、お財布も何も持たずに。」
『あぁ、良い年した大人が恥ずかしい話なんだが、昨日少し仕事で嫌なことがあってね。 その後、昔の仲間とこの近くの居酒屋で飲んでいたんだけど、そこでも喧嘩別れして、荷物も全部置いたまま出てきちゃったんだ。 ここまで歩いてきて気分転換にと、少し夜風に当たってたら、そのまま寝ちゃったみたいだね。 ハハッ♡ 、、、。』
ハハッ♡って、、笑ってる場合か!! 本当に良い大人が何やってんだよ!! 私、本当に重大事件か何かに巻き込まれたかと思ったかんね!!
でも、笑ってるのに何か寂しそう。 仕事で嫌なことがあったって言ってたな、この身なりからしてリストラか?
そうなら、この年で再就職なんて難しいだろうし、可哀想。
「はぁ。 まぁ、でも何事もなくて本当に良かったですよ。 仕事で何があったのか分かりませんが、人生笑ってなきゃ損ですよ! 必要以上に怒ったり、落ち込んだりして過ごすより、少しでも楽しい事を見つけて無理にでも笑う時間を作ったほうが人生得した気分になれるでしょ? そうすれば、いつか本当に笑えるようになってくるもんですよ!」
『フフッ♡ そうだね。 私なんかより、君のほうが人生の先輩みたいだ。 君も何かそんな経験があるのかい?』
「あ! すいません、、生意気な事を言って。 私も良く落ち込んだりすることがあるんですけど、私の周りには何時も私を笑わせてくれる人が沢山いて、その子達と笑っているうちに悩みもいつの間にかどうにかなっていくんです。」
そうだ。私にはナヨ君も、寧ちゃんも、セナ君もいる。先輩の事もブライアンのこともきっとどうにかなる。私は1人じゃないんだ。
「だから私も周りの人たちを笑わせたい。 その為に自分も笑っていたいと思ってます。 私一人では解決出来ないことも、仲間が一緒ならどうにかなるから。 おじさんも、喧嘩した仲間が大切なんでしょ? だから、喧嘩したのを後悔してここで頭を冷やしてたんでしょ?」
『私が、、後悔してる? ただ、気分転換にと思ってたんだが。、、そうか、私は後悔してるのか、、。 ハハッ、、思ってもみなかったな。』
「フフッ♡ 早く、仲直り出来ると良いですね!」
「あっ、ヤバい!! 私、この後、学校があるんです! おじさん、帰りは大丈夫ですか? なんなら、電車賃あげますよ!」 ガサゴソ..
おじさんに電車賃を上げようと財布を出す。 ポロッ
『いやいや、電車賃までは大丈夫だよ! 迎えが来てると思うしね。 でも学校って、もう7時だけど今から帰って間に合うのかい? お礼もしたいし、家まで送っていこうか?』
「いえ、お礼なんて必要ありません! 帰りも電車に乗るので大丈夫ですよ! それじゃあ、おじさんお元気で!!」 ビューーンッ..
と、まぁこんな感じで今に至ります。 急いで電車で帰って、学校の支度をしたがタッチの差で間に合わなかった。
本当なら、何時もの待合せ場所で先輩の事を待つ予定だったがそれも出来なかった。
はぁ、、何やってんだ、私。 先輩、待合せ場所に来たのかな、、。
『ーーてるのか、広瀬! (ピキッ)』
ピキッ? 「へ?」
『俺が話しているのに、呆けているとは。 本当に、良い度胸だなぁ、、広瀬。(ピキキッ)』
ヤバッ!! そうだ! 今は東大寺先生の説教中だった!!
『よ~~し、分かった。 どうやらお前は、私の指導をゆっくり受けたいようだ。 その望み、叶えてやろうじゃないか。 今日の昼休み、理化学室に来るように!!』
ガーーーーンッッ!!
や、やってしまった! 昼休みこそ先輩に会おうと思ってたのに!!
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ザザーーン...ザザーーーン...
『ご無事で良かったです。 随分、探しました。 皆さんも心配なさっていましたよ。』
『 ...。 』
『何をお持ちになってるんですか? それは、学生証ですか?』
『 落とし物だ。 』
『では、私が預かりましょう。』
『 嫌、その必要はない。 』
『しかし、』
『 黙れ。 行くぞ。 』
『 はい。 ーー 社長 ーー。 』
お読み頂き有難うございます。誤字脱字がありましたら直ぐに直しますので教えてください。




