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端午の節句

『じゃあ、モモちゃん。 ママはケーキを取りに行ってくるから後はお願いね!』


「うん。 行ってらっしゃい。」


潮干狩りから数日後の5月5日、我が家ではブライアンを招いて端午の節句のお祝いをすることになった。 パパが、1人日本で頑張っているブライアンを、我が子に見立ててお祝いをしようと言い出したのだ。



トントントントン.... グツグツグツ....     


あの日以来、先輩の声を聞いていない。 電話は毎日してるが、繋がらないのだ。 忙しくて会えなくても、今まで電話やSNSのやり取りは出来ていたのに。 不安な気持ちを周りに気付かれないよう気を付けているが、どうしても1人になると先輩の事を考えてしまう。 

   

「...ハァ...声が聞きたいなぁ...」



『モモ。 僕も何か手伝おうか?』

パパとリビングにいるはずのブライアンがキッチンに顔を出した。


「へ? あっ、、大丈夫だよ、ブライアン。 今日はブライアンが主役なんだからパパとゆっくりくつろいでてよ。」


『何か今日モモ疲れてない? 何時もより元気がない気がする。』

「..え? そんなことないよ。 料理に集中してるだけ。」

先輩の事を考えていたからか上手く笑うことが出来ていなかったかもしれない。 普通にしないと。  しっかりしろ、私!


『ホントに? 体調が悪いとかじゃなくて?』 コツッ..

ブライアンが近づいてきて、私の顔を両手で挟んだと思ったらおでことおでこをつけてきた。


えッ!! 不意をつかれて一気に注意を引き戻される。

近い近い近い!! 何やっとんじゃ、コイツは!!


「ブ、ブライアン! 私、熱なんてないから!!」


『うん。 熱はないみたいだね。(ニコッ♡)』

うっ、、何なのこの子、顔面凶器か! その両手を私の頬から離せ! 今すぐ離せ!!


「もう! 分かったなら、その手を離しなさい!」

『フフッ♡ モモ、顔が真っ赤。 熱がないのにおかしいね!』

「グフッ、、」


『ブライア~~ン! 将棋あったぞ~~!!』

パパがリビングからブライアンを呼んでいる。


「ほら、パパが呼んでるよ! 早く、行った行った!」


『クスッ、、やっと何時ものモモに戻った。』

「え?」


『何があったのか知らないけど、モモは元気なのが一番だよ。』


今さっきまでふざけてたと思えば、急に真面目な顔で笑いかける。 ブライアンは本当に不思議な子だ。 学園で先輩にお弁当を渡せなかった時も、潮干狩の時もそうだ。 何時も私の気持ちが沈んだとき、こうやって突拍子もない行動で私を救ってくれる。



『ねぇ、モモ。 僕がいること忘れないで。 僕は何時でもモモが必要とするなら駆けつけるよ。 モモが笑えるまでずっと側に居てあげる。』


ドキッ... カァァァ~~....

お、おい、、見つめるな。天然タラシ、やめろ。 無意識って怖! これ、私じゃなかったら勘違いしちゃうやつだかんな!!


『(ニコッ♡) 分かった?』

「分かったから! もう行って!」

『クスッ、、じゃあ、ご馳走楽しみにして待ってるね!』


モヤモヤした不安な気持ちが軽くなる。 そうだよね、、笑ってないと人生損だ! 先輩の事は心配だけど、何かあったらに連絡をくれるはず。 ゴールデンウィークが終われば先輩に会えるんだし、あの後どうなったかはその時に聞けば良い。








~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


『それでは、ブライアンの健康とこれからの成長を祈願しまして、』


『『『「かんぱーーい!!!」』』』



「ブライアン、これはチマキっていって端午の節句に食べるんだよ! 中国から伝わったもので、難を避ける厄払いの力があるとされてるから、沢山食べてね! それと柏餅もあるから後で食べようね!」

『うん♪ チマキって、面白~い! 葉っぱで包まれるんだね~! モグモグ‥モチモチしてて美味しい!』

「フフッ、もち米だからね。 私もチマキ好きなんだ♡」


『モモは何でも好きだろぅ。』

「パパ、私が食いしん坊みたいに言わないでよね。 自分で料理を作るようになったら、作る側の愛情に気付いて、全部がおいしく思えてるだけだからね。」


『そうなんだ! じゃあ、僕に毎日作ってくれるお弁当にはモモの愛情が沢山入ってるんだね! 嬉しい~~♡』

「ウグッ、、そうだけど。 ブライアンが特別って訳じゃないからね。先輩にも、、」モヤァ..

あ、、また墓穴を墓ってしまった。 先輩のことを考えると不安になるのに、、。


『え~~。そこは僕が特別って言ってほしかったな~~。 ブーーッ!』


ハッ、、『も、もう、ブライアンは~~!』

『フフッ、、まぁ、僕はモモが笑顔でいてくれるならそれだけで嬉いんだけどね! 何時もありがとう、モモ♡(ニコッ)』 ナデナデ..


ブライアンが私の頭を撫でる。

うっ、、出たな、このっ天然タラシ! イケメンは彼女以外の女子の頭撫でるの禁止令を出すべきだ! ...でも、また救われた。


「敵わないなぁ、ブライアンには、、。」

『へ?』 キョトン...


「プッ、、アハハッ! なにそのマヌケ顔! イケメンが台無しじゃない!」

『ハハッ、ホントだな! 随分男前になったもんだと思っていたが、小学生の頃の面影を見れたな! 可愛いもんだ!』


『『「ハハハッ...」』』  ワイワイ...








お祝い膳を沢山食べて、一息ついた私とブライアンは2人でリビングで柏餅を食べながら将棋をしている。 パパとママは2人でシッポりとテラスで晩酌中。夜空が綺麗に見える日の2人の定番だ。 


『王手!!』

「あっ、待った! やっぱ、今のなし!」

『ダメだよ、モモ。 これは本気の勝負何だから。』


そう、この勝負は、負けた方が勝った方の願いを1個だけ叶えるという本気の勝負。 何かかけた方が面白いとブライアンが言い出したのだ。 初心者なのにバカな奴めとたかをくくっていたが、まさか負けてしまうとは。


「ウグッ、、ブライアン、本当に今日初めて将棋をやったの? 強すぎだろ! さてはお主、計ったな!」

『フフッ、、モモ、往生際が悪いよ。 さて、モモに何をしてもらおうかなぁ~~。』


ブライアンはニヤニヤ楽しそうに笑っている。 クソッ、、絶対嵌められた。 でも、勝負は勝負だ。 私は一諾千金を信条としている。 ここは潔く負けを認めようじゃないか。

 

「...覚悟は出来たぞ。 さぁ、どんとこいやーー!」


『フフッ、良いねぇ、、よし、決めた!』

「うっ、、やっぱりお手柔らかにお願い出来ないでしょうか..。」


ブライアンの場合、何を言い出すか予測不能だ。 何だ? 昼飯だけでは飽きたらず朝食もか? それとも意表を突いてデコピンさせろとか?


う~~、、ドキドキドキドキ....




「モモの1日を僕に頂戴♡ 僕とデートしよ♡』



なぬ??!  デ、デート~~?!!


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