諦めたくない気持ち
拙い文ですが気楽に読んで頂ければ幸いです。
ファンタジー要素も多いので現実では起きないような事も起こります。ご了承の上お読み下さい。
3年半前、初めて会った彼女はまるで僕が思い描いていた女神そのものだった。
彼女がいるだけで周りが不思議と笑顔になり、まるで太陽に照らされているように自分の人生が光輝いていく。
彼女が自分で世界を切り開いて行く姿を見て、自分自身も力をもらい自ずと行動を起こしたくなる。
あの時、僕の人生は変わったんだ。 諦めて止まっていた歯車が、突然奇跡が起きたかの様に動きだした。
カナダに戻ってすぐ、自分から作っていた目に見えない壁を取り払い、周りの人間に笑い掛け、言葉を掛けた。前の僕は強がりでも何でもなく、本当に友達なんて必要無いって思ってたんだ。でも、彼女と出会い、人と関わる事への喜びを知り、勇気を貰ったから自分自身でも驚くほどすんなり行動が出来た。始めの内は、僕の地位や名声に惹かれて近付いてくる奴もいたけど、純粋に僕と一緒の時間を過ごしたいと思ってる奴も沢山いた。
両親との関係も良くなって、友達に囲まれた毎日に充実感も持てるようになった。
『ブライアン!エミリーに告白されたんだって?今月に入ってもう3人目だろ?こんなにモテモテなのに恋人を作らないなんて勿体ない!何故恋人を作らないんだ?』
「僕にはまだ、そういうのは早いよ。やりたいことも沢山あるしね。」
告白を断る僕の常套句だ。何人もの女の子達に思いを寄せて貰い、友達にも何度も交際を進められた。でも、付き合う気持ちにはならなかった。
心の奥には何時も彼女に会いたい、彼女の側にいきたいという気持ちがあって、彼女を越える人なんて現れなかったから。
余りに思いが強すぎて彼女は本当に女神だったんじゃないかって恐怖すら覚えた。毎月の彼女からの手紙が待ち遠しくて仕方がなかった。
手紙を読むとこの世界にいる彼女の存在を感じることが出来るから。
そして改めて思うんだ。彼女にまた会いたいって。
大学を卒業したら日本に直ぐに行って彼女を会いに行こうと決めていた。
自分の思いを伝えて、今度こそ彼女の側を離れないと。
その為に自分のやるべき事を頑張った。一生懸命、課題をこなし単位を取り、15歳の時には大学にも入学出来た。あともう少しで彼女に会いに行くことが出来る。そう思ってた矢先、彼女からカナダに来ると知らせがあった。
会いたかった。でも、それと同時に急に会うのが怖くなった。彼女が変わっていたら?知らず知らずのうちに僕自身で彼女を偶像化していたら?
恐怖の余り、彼女に会えないと返事を返してしまった。僕の中の彼女を失ったら自分を保てるか自信がなかった。
そして後悔の念に押し潰されていく。こんなに会いたいと思っているのに、勇気を持てなかった自分に嫌気がさす。
そんな時、何かに後押しされるかのように両親からシドニーに講演に行くと報告を受けた。その瞬間、本当に嘘みたいに恐怖が消え、ただ会いたいという気持ちしかなくなった。そこからはトントン拍子で進んでいった。
両親の付き添いで参加したパーティーで彼女に再会した時は驚いた。
心から会いたかった彼女は僕の記憶の中の彼女よりも数段に美しくなっていた。会いたくて会いたくてたまらなかった彼女が今目の前にいる。僕の偶像化した彼女なんて忘れ去ってしまうかのような彼女の姿に僕は改めて心を奪われた。それはまるで一目惚れした様な気持ち。知っている子に一目惚れなんておかしな話で、本当にどうかしてると思うけど彼女を一目見た瞬間、世界が止まったような気がしたんだ。胸が一気に高鳴って彼女以外何も見えなくなった。
僕は何でこんなにも彼女に惹かれてしまうんだろう。彼女よりも綺麗な人や可愛い子なんて今までも沢山会ったし、そんな子達からも好意を寄せられたこともあった。でも、誰一人として僕の気持ちをここまで掻き立てる人はいない。理屈じゃ説明できない。でも、分かる。
僕はきっと何度でも、こうやって彼女に会った瞬間に恋に落ちてしまうんだ。
『私、彼氏が出来たんだ。とってもカッコいいんだよ。』
頬を染めながらそう嬉しそうに言った彼女が急に遠くに行ってしまった様な気がした。
大学を卒業したら迎えに行く。そんな悠長な事を考えていた自分が悔しくてたまらなくなる。彼女の隣に他の誰かがいる。そんなこと考えていなかった。自分の事ながら僕はなんて大馬鹿者なんだ。彼女の魅力に気付かない人なんている訳ないのに。
嫌だ。 彼女を他の誰かに渡すなんて絶対に嫌だ。 彼女のいない人生なんて考えられない。 諦めることなんてどう考えても出来ない。
、、直ぐに行動しなければ。
『父さん、母さん、僕の一生のお願い聞いてくれる?....』
一生のお願いなんて言葉を初めて使ったと思う。僕は日本への留学を決めた。 両親は驚き、大学の卒業を待たずに日本に行くことに猛反対したけど、時間を掛けて説得して何とか理解を得ることが出来た。何より、大学で出会った深海教授の協力が大きかった。
彼は僕が開発している自由創造チップに興味を示し日本での研究を希望していた。研究なんて僕にとってはどうでも良いことだったけど、日本に行き彼女の側に居られるなら僕はなんだってする。
『ブライアン君、待っていたよ。この研究室は自由に使ってくれていいし、研究に必要な物資や協力は惜しまないから何でも言ってくれ。でも、本当に高校になんて行くのか?君ほどの知識があるなら高校なんて必要ないのに。』
「深海教授、聖バーナード学園に入学することは僕の日本に来た一番の目的だと言ったはずですよ。」
日本で自由に行動できるように教授には彼女の事を話してある。色恋事が本来の目的だと言えば支援の話を断られるかと思ったが、それでも来てほしいと言われた時は正直驚いた。まぁ、支援がなくても必ず留学するつもりだったが、近くに理解者がいるというのはどんな形でも心強くはある。
『分かっているさ。それでも良いと言ったのはこちらだしね。こちらとしては研究さえしっかりしてもらえれば後は君の自由にしてもらって良いと思っているよ。』
「はい。研究は必ず成功させますのでご心配なく。」
『期待しているよ。そうそう、住居の事だが本当に学生寮なんかで良かったのかい?今からでも設備の整った住居も用意することが出来るんだよ?』
「お構いなく。高校生でありながら余り派手な事をすると本来の目的から一線を引かれかねませんので。」
『ああ、前に言っていた女性の事だね。将来有望な君にここまで思われるなんて、きっととてつもなく素敵な女性なんだろうね。僕も一目会ってみたいものだ。』
「ええ。素敵な女性です。教授にもいつか僕の恋人としてご紹介しますよ。」
『ハハッ、君なら絶対に大丈夫だ!』
準備は整った。
絶対に彼女を自分に振り向かせてみせる。もう遅れをとったりなんかしない。
僕を変える、僕の特別な人。 僕の女神。 待っていて、モモ。
お読み頂き有難うございます。誤字脱字がありましたら直ぐに直しますので教えてください。
参考にさせて頂きますので感想、評価宜しくお願いします。




