ナヨ君が来たよ、モモちゃん!
拙い文ですが気楽に読んで頂けると幸いです。 ファンタジー要素が多ので現実では無理がある事も起こります。ご了承の上お読み下さい。
私の部屋は2階の角にあった。
扉を開けるとピンクの壁紙にフリフリの天蓋付きの白のベッド。これまたフリフリ付きのカーテンに、ピンクのハート形のクッションが沢山乗ったソファが目に入った。
いや、淡いピンクじゃないよ!ショッキングピンクだよ!しかもメタリック寄りの!!!
何とも目に悪い。ここだけ異空間のようだ。
そして何よりビックリしたのは、ベット側の壁に貼られたセナ君と思しき男の子の写真だ。何と壁一面にいっぱい貼られている。
完全なるストーカーだ。怖い。怖すぎる!
あの時、セナ君の顔良く見てなかったけど、写真の中のセナ君は笑顔が凄い爽やかで太陽みたいな輝かしさがあった。きっと、ザ・陽キャラって感じでみんなから愛されてるんだろうな。本当、そこら辺のアイドルよりイケメンだよ。
ま、今の私は中身が39歳だからモモちゃんの様な恋愛感情は絶対に持たないけどね。
セナ君に対しては罪悪感しかないよ。
まずは、セナ君の写真を壁から剥がしていく。
病院から持ってきた荷物を仕舞わなきゃだけど、壁一面の人物写真ってホラーでしかないからね。早く取るに越したことはない。
本当、何考えてたんだろモモちゃん。相手にとって恐怖や嫌がらせでしかないストーカー行為をして、周りからも一線を引かれ続け、彼女は幸せを感じることがあったのだろうか。求めるだけじゃダメだって本当に気づいていなかったんだろうか。
壁一面にのセナ君の写真を剥がし終え、荷物を片付けていると。
トントン。
『モモちゃん、僕だよ。開けてもいい?』
あ、ナヨ君の声だ。
「どうぞ。」
ガチャッ。『おかえり、モモちゃん。』
笑顔のナヨ君が部屋に入ってきた。
「ただいま!ナヨ君!」
私も笑顔で答える。
ナヨ君とは病院で一度会ったきりずっと会えずにいた。記憶喪失の私に余り負担を掛けたくないと周りが気を回したみたい。私は次にナヨ君に会ったら絶対にやろうと決めていたことがあった。
『なんか、モモちゃん、別人みたい!こんなに痩せちゃって、病院でご飯もらえなかったの?虐められてたの?大丈夫?』
ナヨ君はひどい事をしてきた私の心配をしてくれている。本当に、純粋でいい子だ。そんな子をモモちゃんは大欲非道な行いで歪ませた。それは、とても許される事じゃない。
「ナヨ君。私、ナヨ君に伝えたい事があるの。」
『えっ、何?どうしたの?そんな、神妙な顔しないで!モモちゃんはどんな時も堂々としていていいんだよ!』
「ううん。堂々としてたらダメなんだよ。私はナヨ君に今までいっぱい悪いことしたんだから。」
『ーーっ。』
「ナヨ君、本当に今までの事、ごめんなさい。」
「謝っても簡単に許される事じゃないし、記憶に残ってないひどい事がまだまだ沢山あるかもしれないけど、今はこんな謝罪の言葉しか言えなくてごめんなさい。 本当に、申し訳ありませんでしたっ。」
私は神妙な面持ちで深々とナヨ君に頭を下げた。
『なに、を、言ってるの? なん、で、そ、そんな、事、言うの?!』
『モモちゃんは、モモちゃんは、こんなにダメな僕を調教してくれるって、モモちゃんだけが僕を見捨てずに側に居てくれるんだって言ってたじゃない!僕を見捨てないでぇ!何でもするからぁぁ!ぅぅっ』
酷い。たった11歳の子供をここまで洗脳するって、一体モモちゃんはどこまでこの子を追い詰めていたんだろう。
「大丈夫だよ、ナヨ君。見捨てるとか見捨てないとかじゃないんだよ。私たちは友達なんだから。お互いに言いたい事を言い合って、笑いたい時は一緒に笑って、お互いに足りないところがあれば補い合う。私たちは対等なんだよ。ずっと酷い事をしてきた私の事をナヨ君は心配してくれる。そんな優しい心を持ってるナヨ君を私は尊敬してるよ。ナヨ君には素晴らしいところが沢山あるんだよ。」
うぐっ、うぐっっ。
ナヨ君は涙を流しながら此方を見たまま何も言わない。
「ナヨ君、私はナヨ君にどう罪滅ぼしをしたらいいのか分からない。でもこの先、ナヨ君に何か困った事があったとして、他のみんなが味方をしてくれなかったとしても、ナヨ君自身が諦めかけてしまった時でも、私はナヨ君を助けるよ。ナヨ君が道を踏み外しそうになったとしたら、ナヨ君が正しい道に行けるように私はナヨ君の隣を歩むよ。そうやって、私がナヨ君につけてしまった傷を直させてくれないかなっ?!」
私はナヨ君の手を取り、ナヨ君の心に届くように心を込めて自分の思いを伝えた。
『・・・側にいてくれるの?僕を見捨てるわけじゃないの?』グスッ、グスッ、、、。
「見捨てるわけないじゃない!ナヨ君は私の大切な友達なんだから!!」
ぅうっ、なんかよくわからない感情が込み上げてきた・・・
「『うぅうわ〜ぁぁ〜〜ぁぁ〜〜〜んっっ!!!』」
私とナヨ君は手を取り合ってお互いに、心から思いっきり泣いた。人ってこんなに泣けるんだっけってくらいに。ビックリして駆けつけた大人たちからは苦笑いを向けられたけど、私たちに声を掛けることはなかった。
何か、色々察してくれたんだろうね。きっと。
ふふっ。ふははっ。
「『酷い顔っ!、、そっちこそっっ!』」
ふふっははっ。
気づいたら、私たち二人は、涙と鼻水でぐっちゃぐちゃになった顔で笑い転げていた。
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