番外編※欲求不満!
ガヤガヤガヤーーー
『それでは皆さん、これより第30回聖バーナード学園入学式を始めたいと思います。』
私がこの学園に入学して2年がたち、今日から私は中等部最高学年の3年生になる。
この2年間の間に色々なことがあった。1年生の時に私は完全にモモちゃんを克服し、心も体も自分の物として、本当の意味で自分の未来を考えられるようになった。
東大寺先輩とお付き合いしたのも1年生の頃からだ。東大寺先輩とは付き合って1年半たったが、今でもラブラブだ。東大寺先輩の事を好きな気持ちは増すばかりだし、先輩からも大事にされているのが分かる。先輩はこの春中等部を卒業し、高等部へ進学した。中等部と高等部は校舎が隣接されており、部活も同じ弓道場を使っているので会えない日は殆どない。ただ、以前は校舎の中でも気軽に会うことが出来たのにそれが出来なくなるのはやっぱり寂しい。
と言っても、恋愛ばかりにかまけていた訳ではない。
ちゃんと勉強と学園での活動、自分磨きも怠ることはなかった。そのかいあって、2年の時は前期生徒会に東大寺先輩と共に再選を果たし、3年生が引退する後期では私は更に高みを目指した。
『それでは、次は生徒会長からの挨拶です。生徒会長お願いします。』
「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。私は生徒会長の広瀬モモです。この学園での生活はきっと皆さんにとってかけがいのないものになるでしょう。~~~~~」
そう、私は生徒会長になったのだ!我ながら順調すぎる!まるで出世魚のようだ!フハハハハッ!!
でも、これだけは言わせてもらおう。、、、並大抵の努力じゃ無かったからね!!もう、毎日が必死だったんだから!
東大寺先輩とだって、ラブラブだけど実は恋人としての時間は登下校の少しの時間だけで、会えてはいるけど休み時間はお互い生徒会の仕事をやらなきゃならないし、部活中はラブラブなんて出来ない。プライベートでも、お互い習い事なんかでデートなんて月に1回出来るかどうか!
時間が!時間が欲しい!! なぜ1日は24時間なんだ!なぜ、日は暮れるんだ!なぜ、私達は学生なんだ!18時に家に帰らなきゃいけないじゃないか!! なぜ、私達は手繋ぎから先に進めないのだーーーー!!! ハァ、ハァ、ハァ、、
と言うわけで、ただの欲求不満です。
毎日は充実してるよ!でも、私はもっと東大寺先輩とラブラブしたいんです!一応39才の記憶がある私としては大好きな人ともっと先のこともしたい。勿論、中学生たるやピーーなんて高度な物は望みません。でも、付き合って1年半たったんだから♡キッス♡くらいはいいのではないでしょうか?相手は高校生になりましたしダメですか??
『モモさん、どうした?顔が強ばってるよ。』
話しかけてきたのは生徒会会計の寧ちゃんだ。
「寧ちゃん、何でもないよ。ただ、ちょっと東大寺先輩が恋しくなっただけ。」
『なんだ、そんなことか。いつまでもラブラブだね。私とウィンナなんて倦怠期って奴だよ。アイツってば直ぐヤりたがるからウザイ。』
なぬ?!今、ちょっと聞きずてならぬ言葉が聞こえましたぞ?
「え?えええ?ちょっと待ってくださいよ、寧さん。今、ヤりたがるって言いましたか?それってまさかのあの事ですか?」
『何いってるのモモさん。ピーー以外何があるのさ。』 ボフッ!!♡
『え?まさか、モモさん達まだなの?余り焦らしてたら東大寺さん取られちゃうよ!』
「えええ?!私達まだ中学生だよ!中学生と言えば子供だよ!」
『ちょっと、静かにしなよモモちゃん!まだ式の途中だよ!寧ちゃんもモモちゃんに変なこと吹き込まないでよね!』
注意してきたのは生徒会書記のナヨ君だ。
「ナヨ君!寧ちゃんとウィンナ君ったら不良だよ!こんなに可愛い顔してこの子ったら怖い子だよ!」
『もう、モモちゃん落ち着きなよ!今時、珍しいことでもないでしょ!』
「ヒッ!!ま、まさかナヨ君まで...。」
『そんなわけないでしょ!僕はモモちゃん一筋なんだから!』
『お前らいい加減にしろ!皆に聞こえるぞ!』
副会長のセナ君に注意され周りを見ると近くに整列している生徒数人が此方をクスクス笑いながら見ている。
「コホンッ。さっ、式ももう終わるわ。皆、生徒会役員として気を引き締めてちょうだい。」
『『お前が(モモちゃんが)それを言うか!』』
途中、予期せぬ事で風紀が乱れはしたが入学式は無事に終了した。
因みにもう一人の生徒会書記は、まだセナ君を諦めきれていないミルクちゃんです。
今日は入学式ということもあり部活はないため、私は高等部と中等部のあいだの花壇で東大寺先輩を待っている。
ハァ、まさか寧ちゃんとウィンナ君が大人の階段を登っていたなんて、、。
私なんてキスどころかハグだってろくにしたことないのに、、。別にイヤらしいことをしたい訳じゃないけど、先輩の事が好きだから触れ合いたい。もっと先輩を近くに感じたいのだ。これって、私だけ?先輩は私に触れたいとか思わないのかなぁ。
『広瀬、ごめん待ったか?!』
「東大寺先輩、私も今来たところです。」
『そっちの入学式は無事にすんだか?』
「はい。先輩のアドバイスのお陰で挨拶も無事に出来ました。」
『そうか。良かったな!さぁ、帰ろう。』
「はい。....。」うっ、、ダメだ。何か悲しくなってきた。
『どうした広瀬?何かあったのか?』
先輩は相変わらず優しいし、私の事を大事にしてくれている。それなのにこれ以上を望むなんて贅沢なのかもしれない。でも、、自分だけが先輩を求めてる気がして寂しい気持ちがどんどん膨れ上がっていく。嫌だ。こんな気持ち先輩に知られたくない。
「、、何でも。何でもありません。私、ちょっと学校に忘れ物したので、先輩やっぱり先に帰って下さい。すいません。」
『広瀬!!』
先輩から逃げてしまった。こんな事、始めてだ。先輩はこの後、塾だって言ってたしもう帰ってるはずだ。私、感じ悪かったよね。明日、ちゃんと謝ろう。
涙も落ちつき、一人校門へ向かうと校門の所に見間違うはずのない人影が見えた。
「何で、、何で帰ってないんですか?今日は塾があるって言ってたのに。」
『塾より広瀬が大事だろ。何かあったんだろ?一人で解決できないなら一緒に考えるから、一人で我慢するな。それとも、俺じゃ頼りないか?』
「違います。先輩が頼りないとかじゃなく、私がおかしいんです。私、どんどん欲深くなっていく。先輩が高等部に行っても一緒に帰ったり出来るのに、それだけじゃ満足出来なくて、もっと一緒に居たいって思っちゃう。先輩を好きな気持ちがどんどん大きくなって、もっと触れたい、もっと触れて欲しいって思っちゃう。なのに先輩は今まで道り変わらず優しくって、私だけが、、私だけが先輩を求めてるみたいで悲しくなって、、ウグッウグッ、、」
知らず知らずのうちに溜め込んでいた不満や不安が涙と共に一気に溢れだした。
ギュッ
『バカだな広瀬は。俺だって、広瀬を好きな気持ちがどんどん大きくなってるよ。でも、同時に凄く大事にも思ってる。だから、広瀬を傷付けるような事はしたくなかったんだ。 何時も広瀬に触れたいと思ってるし。隠すのに必死なんだぞ。』
「ウグッ、本当ですか?私に気を使ってるとかじゃなくて?」
『本当だよ。 好きだよ、、モモ。』
東大寺先輩に初めて呼ばれた私の名前。「モモ」、、東大寺先輩の口から発せられた瞬間、私の名前が特別な意味を持った気がする。
先輩の顔が近付いてくる。
プチュ♡
始めてのキスは学生らしくソフトなキスだった。初キスの味は、なんて良く言うけど、そんなの頭が真っ白になって分かるはずがない。でも、本当に好きな人との初キスは今まで味わったことのないほどの幸福感に包まれるってことだけは言える。きっと、この先も東大寺先輩と2人で沢山の幸せを経験していく。この人と人生を歩めることが私の一番の望みだと心から思った。




