覚悟を決めろ!
『モモちゃん、おはよ♡って、どうしたの?!何か顔が死んでるよ!!』
「うん、ちょっとね。昨日あんまり眠れなくって、、。」
夏休みに思わぬ事態に陥ったが、終わり良ければ全て良しということで私の最大の悩みだったモモちゃん問題は解決を迎えた。しかし、悩みと言うのは次から次えとやってくるのだ。
セナ君に感化されて、東大寺先輩に自分の気持ちを伝えると決意したのはいいものの、決めたら決めたで何時何処で?とか、何て言う?とか、どんどんどんどん疑問符が出てきて全然眠れなかった。
先輩に気持ちを伝えるって言う気持ちに変わりはないんだけど、何かねぇ、、、。いざとなるとやっぱり恐くなるよね。
『モモちゃん、早く!休み明けから遅刻しちゃうよ!』
「あっ、待ってナヨ君!!」
私とナヨ君は無事に学校に間に合い、始業式も毎度の事ながら校長先生のありがた~~い話を聞いて、新学期は幸先の良いスタートを切ることが出来ている、、と言いたいが、、な、何だ??道明寺部長が此方を物凄い形相で見ている!
『ちょっと、広瀬さん!あなた夏休み後半から部活に来なかったけどどうしたの?皆心配してたのよ!』
そう言えばモモちゃんと身体が入れ替わってから部活に行ってなかった!
「ど、道明寺部長、、すいません。あのっ、そのっ、、た、体調が悪くて、、」
『もう、体調が悪いなら悪いで連絡くらいしなきゃダメじゃない!』ガミガミ、ガミガミ。
道明寺部長は感情が高ぶると人が変わるからなぁ、これは長くなりそうだ、、。
『まぁまぁ、部長。広瀬も悪気があった訳じゃないんですから、もうそのくらいで良いんじゃないですか。』 東大寺先輩~~!
『東大寺君、あなたも教育係としてしっかりしてよね!』
『はいはい、分かりましたから。あっ、そう言えば松平先輩が部長の事探してましたよ!』
『え♡修造が♡?!こうしちゃ居られないわ!私はもう行くから後は東大寺君が指導をお願いね!』
『了解です。』
道明寺部長は怒っていたのが嘘のように意気揚々と去っていった。
「東大寺先輩、すいませんでした。私のせいで先輩まで怒られちゃって、、。」
『ん?別にどうってこと無いよ。部長もああ言ってるけど引きずる人じゃないし。』
「部長がいい人なのは知ってますが、何か申し訳ないです。」
『フッ、、もう、良いって。』
あ、笑顔! やっぱり、東大寺先輩の笑顔って落ち着くなぁ、、。
『広瀬、約束してたイギリスのお土産、覚えてるか?』
「ハイ!!私、ちゃんと宿題も終わらせて準備万端にしてました!!でも、あんなことになってしまって、、。」
『へぇ、準備万端にって、そんなにお土産楽しみにしてたのか?』
「へ?や、あのっ!お土産というか、何というか、、」
ヤバい、がっつきすぎた!恥ずかしすぎる~~!!
『プッ、、ちゃんとお土産用意してるから安心しろ!お前が大丈夫なら今日は午前授業だし、この後何処か行くか? 終わっちゃたけど夏休みらしいことしてもいいしな!』
ドキンッ! 「ハ、ハイ!!」
東大寺先輩と2人でお出かけ出来る!嬉しい!!
あれ? 東大寺先輩と2人っきり、、これってチャンスじゃ、、。
そうだ、告白するなら今日しかない!
『ヌオォォォォオ!西村ぁぁぁあ!部活だぁぁあ!部活に行くぞぉぉお!』
『部長!今日は始業式なんだから部活ないですよ!』
『ぬぁにぃぃぃい?!気合いがたりんぞぉぉ西村ぁぁぁあ!』
何やら騒々しいと思ったら、松平部長だ。あの人も変わらないなぁ、、。
「、、あれ?松平部長? でも、東大寺先輩が、道明寺部長に松平部長が呼んでるって、、」
『ん? フッ、、内緒♪』
東大寺先輩を見ると悪戯っ子のように笑い、ライラック畑の時のようにまた『シッ♡』って、、キュゥゥゥゥ♡心臓が!心臓が苦しい!!私、本当に告白出来るだろうか?!!
放課後、私は東大寺先輩との約束の為に急いで家に帰り、準備をして待合せの場所に向かった。
早く、早く東大寺先輩に会いたい!
「ハァハァ、、東大寺先輩、お待たせしました!」
『プッ、、お前、そんなに急いで大丈夫か?』
「はい!大丈夫です!どうします?これから何処に行きますか?!」
『クッ、ハハッ!いいよ、何処でも。お前は何処か行きたいところあるか?』
キュゥゥゥゥウ♡あぁぁ、尊い!その笑顔尊すぎます、先輩!!
「じゃあ、かいかい水族館はどうですか?スナメリの赤ちゃんも大きくなって他のスナメリ達と一緒の水槽に入ってるだろうし!」
『ああ、いいよ!俺もお前から話を聞いて久しぶりに行きたかったし!』
私たちは一駅先のかいかい水族館に行くことにした。
「あまり混んでなくてゆっくり見れそうですね、先輩!」
かいかい水族館はスナメリの赤ちゃんブームも落ち着いて、前にセナ君と来たときよりも混雑してなく、先輩とゆっくり観覧出来そうだ。
『そうだな。あ!広瀬、見てみろよ!このフグ怒った時の広瀬みたいだぞ!』
「ほんとだ~って、先輩ひどい!私こんなにプクプクしてませんよ!」
『ハハッ!嫌、似てるって!今の顔、そっくり!』
「も~~っ!」
「『プッ、、ハハハッ!』」
何これ、、楽しい。楽しすぎる!!
私と先輩はその後も一つ一つの水槽をあーだこーだとお互いに話しながら楽しく見て回った。セナ君と来た時も楽しかったが、東大寺先輩と見るこの空間はまるで初めて見る世界のようにキラキラしていて全てが特別な物に見えてくる。初めて来た訳でもないのに不思議だ。
「先輩!最後にスナメリの水槽ですよ!あ、イベントでライトアップもやってるみたいです! わぁ、、」
中へ入ると本当に異空間のようだった。落ち着いた藍色の明かりの中にゆらゆらと光が波打ち、天井には星空が映し出されている。まるで、深海の中から星空を眺めているようだった。
『綺麗だな。』
横を見ると東大寺先輩が私の直ぐ横に立ち天井を見上げていた。
ここが何処なのか分からなくなる。閉館も間近になり今ここには私と東大寺先輩の2人きりだ。まるでこの世界に2人だけしかいない感覚に囚われる。
「綺麗、、、」
思わず言葉に出ていた。この空間もそうだが何より東大寺先輩が他の何より綺麗だと思った。目が離せなくなり、どうしようもなく見とれてしまう。
東大寺先輩がこちらに振り返り、全てがスローモーションのように見えた。
『どうした?、、フッ、俺に見惚れた?』
「、、はい。、、見惚れました、、。もう、ずっと前から見惚れてます。」
『広瀬?』
「先輩、、私、、、」
昨日、あんなに悩んだのが嘘みたいに自然と言葉が出てくる。
「 私、先輩の事が、、好きです! 」




