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ブライアン、帰る!

ブライアンが優勝旗を持って手を振ってくれた。

皆んなから祝福されて幸せそうだ。


前世の私は世の中には努力しても報われる事なんて殆どないと何処かで思っていたと思う。

ブライアンの様に皆んなに愛されて、認めてもらえる人は極一部の人だと。そういう人は生まれながらに恵まれているんだと羨んでいた。


でも、身近でブライアンを見ているとそれだけではないと分かる。ブライアンは何に対しても純粋に物事を考え、自分の出来る事を何の疑いもなく頑張る事が出来る。

きっとずっと前からそうやって一つ一つ問題をクリアして来たんだ。決して恵まれているだけではない。

努力した結果が魅力になり周りの人はブライアンに惹かれる。


私もこの先ずっと今と変わらず目の前の目標に向かって頑張る事が出来るだろうか。

今の気持ちを忘れたくない。ブライアンと一緒に過ごし、感化されたこの気持ちを忘れたくない。

私は今のこの気持ちを心に刻み込むようにブライアンを目に焼き付けた。








ブライアンは明日カナダに帰る。

今日は特別にトレーニングはお休みして皆んなでお泊まり会をする事にした。

メンバーはナヨ君とユナちゃんと伊藤。

セナ君にも一応声をかけたけど家の手伝いがあるからと参加出来なかった。


夜御飯はブライアンの優勝お祝いも兼ねて日本食パーティを計画した。

ブライアンは主役だからゆっくりしてもらおうと思ってたのに、思い出作りに一緒に料理を作りたいって言うから快く手伝ってもらう事にした。


「ブライアン、後は醤油とみりんを入れて煮込めば完成だよ!私は食べてくれる人の笑顔を想像して『美味しくなあれ』って呪文をかけるんだ!」


『モモは本当に可愛いね。きっと、モモの家の料理は愛情がこもってるから美味しいんだろうね。僕はこの家に来て初めて料理が温かいって感じたんだ。』


「え?でも、ブライアンのママも料理を作ってくれるでしょ?きっと愛情も沢山入ってるよ!」


『僕の家はそう言う感じじゃないから。』


ブライアンの表情が一瞬曇ったような気がした。

どう言う事だろう?家族と何かあるんだろうか?

そういえば、ブライアンの家族の事は余り聞けていない。嫌、正確には家族の話になると話を逸らしていた気がする。


「それって、どう言う事か聞いてもいい?」


『別に大した話じゃないよ。只、両親共忙しくて余り時間がないってだけ。あっ、モモ、吹きこぼれそうだよ!』


「ヤバイ!ブライアン、鍋の蓋を取って火を弱めて!」


やっぱり、詳しくは話してくれない。もうこれ以上は話す気がないのが分かる。気になるけど、ブライアンが話したくないなら興味本意で聞くべきじゃないよね。

そうとなれば私はブライアンに最後まで日本での生活を楽しんでもらうまでだ。


「ブライアン、待ってる間に手巻き寿司のネタを準備しておこう!」


『僕、手巻き寿司って初めて食べるんだ!楽しみだな!』


ブライアンに笑顔が戻った。それでいい。大切なのはブライアンが笑ってる事だから。


皆んなが集まりパーティが始まる。

モモちゃんママの協力もあり、色んな種類の日本食が用意出来た。ブライアンは手巻き寿司が気に入ったみたいで、簡単だからカナダでも作ってみると喜んでくれた。


その後は、用意していた花札やカルタをしたり、枕投げ大会なんかもして思いっきり楽しんだ。罰ゲームで伊藤に腹踊りをさせた時は皆んなで大爆笑したよ。ブライアンも終始笑顔で良かった良かった。


伊藤を呼ぶのは最後まで渋ったけど大いに盛り上げてくれたので呼んで正解だったな。

中々やるな、伊藤!お前を盛り上げ隊長に任命しよう!








翌朝、ブライアンを皆んなで空港まで送って行く。


『ブライアン、カナダに帰ってもお前は俺の友達だ!忘れるなよ!』


『私、ブライアンに会えて良かった!カナダでも元気でね!』


『僕もブライアンと友達になれて良かった。会えなくなるの寂しい、、うっうっ。』


『僕も皆んなと友達になれて嬉しかったよ。皆んなと出会えてもっと日本が大好きになった。絶対に忘れないよ。』


伊藤とユナちゃんとナヨ君が別れの挨拶をする。

皆んなブライアンの事が大好きなのだ。




「ブライアン。私、ブライアンの考え方や努力する姿に沢山学ばせてもらったよ。日本に来てくれてありがとう。私達の友達になってくれてありがとう。」


もうブライアンに会えないのだと思うと胸が苦しくて涙が出そうだった。長い人生の中の、たった1ヶ月。だけど、私はブライアンの事を忘れる事は無いだろう。


「カナダでもブライアンには笑っていて欲しい。きっと大丈夫。ブライアンはとても魅力的な人だもん。」


こんなに人に影響を与えられる。きっとカナダでも大丈夫だ。


『ありがとう、モモ。モモに会えた事は僕にとって、何にも変えられない宝物だよ。絶対に忘れない。モモも忘れないでね。』


「うん。忘れない!私にとってもブライアンとの思い出は宝物だから!」


涙が溢れてくる。笑顔でお別れしたかったのに。





『モモ、最後におまじないをしてあげる。モモが僕を忘れないように。』




『プチュゥ・・・』




『バイバイは言わないよ。また、絶対にモモに会いにくるから。』




・・・プチュゥ?












ブライアンは帰って行った。事故じゃない、私のファーストキスを奪って、、、。



・・・・え?「えぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!!!」


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