運動会が始まるよ!
拙い文ですが気楽に読んで頂けると幸いです。 ファンタジー要素が多ので現実では無理がある事も起こります。ご了承の上お読み下さい。
『お前生意気なんだよ!』ドンッ!!
「痛ッ!!」
ガラガラーー
「え?!ちょ、まっ」 ガシャン!!
「・・・」
私は今、小1時間ほど、備品庫に閉じ込められている。なぜこんな事になったかと言うと、、。
運動会当日、私とセナ君は事前に話し合っていたように会場整備の仕事を役割分担して進めていた。
セナ君は駐車場誘導と保護者席の管理。
私は備品管理とグラウンドの準備だ。
各責任者のチームに6年生の生徒は割り振られ、私達責任者はテキパキと指示を出す。順調に仕事をこなしていたはずだった。
でも、私の方に割り振られた一部の生徒の中には私の言う事に従ってくれない子が何人かいた。
「伊藤君、次はこの三角コーンとポールをA-1の位置に持っていってね。」
『はぁ?さっきからお前なんなんだよ!えらっそーに!お前が持ってけよ!そもそも、俺はお前のチームになんか入りたくなかったんだ!広瀬のくせに人に指図出来る立場かよ!』
まただ。あー、いちいち面倒くさい奴だなぁ。
「偉そうになんてしてないじゃない。私はただ仕事をこなしてるだけだよ。私のチームに入りたくなかったって言うけど、6年生は全員誰かしらのチームに入って仕事をしなきゃいけないんだし、他のチームに入っても仕事はするんだからさ。皆んなもやってるんだから頑張ろうよ。」
『そうよ!伊藤君ワガママだよ!さっきから仕事もノロノロしてさ!ちゃんとやってよ!モモちゃんに謝りなさいよ!』
最近話せるようになった女子達が味方をしてくれる。
「ま、まぁまぁ。仲良くしようよ。伊藤君、別に謝らなくていいからさ、頑張ろ!」
『うっせーよ!持ってきゃいいんだろ!』
はぁ、男の子って本当にお子ちゃまだよね・・。
そのまま次々に仕事をこなし、お昼休みの前に次の備品を取りに備品庫に向かった時だ。
『お前生意気なんだよ!』ドンッ!!
完全に不覚だった。後ろから突然突き飛ばされ、備品庫に閉じ込められたのだ。犯人は伊藤君。
私にイラついてるのはわかってたけど、まさかここまでされるとは予想してなかった。
「あー、どうしよう。まだ、仕事終わってないのに。お弁当も食べられないじゃん。」
もう少ししたらお昼休みが終わり、備品がない事にセナ君が気付いて探しに来てくれるはずだ。
「くっそ〜、伊藤のヤロー、この恨みどうしてくれようか。さっき転んだ時に怪我した膝も痛いしさー。」
ガチャ。
おっ!セナ君?!良かったぁ、思ったより早かった!
『広瀬君、こんなとこでどうしたの?』
「!」
現れたのはセナ君ではなく木茂井さんだった。
『怪我してるのかい?』
木茂井さんが私に近づいてきて、怪我の具合を見てくれた。手つきが何とも気持ち悪い。
「き、木茂井さん、大丈夫ですから!ひぃっ!」
私は木茂井さんにだき抱えられ、連れてこられたのは用務員室だ。
「あ、あの木茂井さん、怪我なら大丈夫ですから!
私、もう戻らないと。」
『怪我をちゃんと手当てしないとダメだよ。女の子なんだから痕が残ったら大変だよ。
ほら、足を出して。』
いやいや、なんか怖いですから。別に悪いことされてるわけじゃないけど、何故かこの木茂井さんがやると気持ち悪いことされてる感じになる。
あんまり近づかないで。だから近いって!
ガチャ!!
『なにしてるんだ!!広瀬から離れろ!!』
あっ、セナ君だ。ヤバイ、何か勘違いしてる?
側から見たら私が襲われてるように見えなくもない。
ボカッ!!
止める間も無く、セナ君は日頃培った剣道の腕で渾身の一撃を木茂井さんに打ち付けていた。
「うわぁぁ!!ちょ、ちょっとセナ君落ち着いて!
木茂井さんは手当てしてくれてただけだから!」
『うっうっうっ、ご、ごびぇんなさい。ちょっと懲らしめるだげのづもりだったんでず。うぇっぐ、うぇっぐ、、』
伊藤君は今、先生達に叱られ猛反省中だ。
私が居ない間に事態は大事になっていた。
お昼休みになって、私が居ないことにナヨ君が直ぐに気付き、皆んなで大捜索が行われていたのだ。
伊藤君は自分のやった事を言い出せなくなり、コソッと倉庫の鍵を開けに行ったがそこに私はいなかった。何か事件に巻き込まれたんじゃないかと顔面蒼白でセナ君に相談したのだ。
セナ君は木茂井さんの日頃の行いを見ていて不信感を持っていたようだ。伊藤君に先生達に伝えるよう言い、真っ先に用務員室に向かったら先程の場面に遭遇したという流れだ。
木茂井さんは肩にセナ君の一撃を食らったので今は保健室で手当てを受けている。
あ、木茂井さんの異様な行動の原因がわかったよ!
木茂井さんは、視力がとても悪くてここ数週間コンタクトを無くしてしまってたんだって。だから、距離も近くなり手つきも手探り状態だったのだ。
正直、私は木茂井さんは変態じゃないかと疑っていた。ごめんなさい、木茂井さん!あんた、只の良い人だったのね!
「セナ君。あのっ、誤解だったけど助けに来てくれてありがとう。ヒーローみたいでかっこよかったよ!」
『助けるの当たり前だろ。仲間なんだから。』
えっ、仲間?!それって、友達と思ってくれてるって事だよね?!
『木茂井さんの事は誤解だったけど、閉じ込められて怖かっただろう?涙の跡がある。』
スル・・・
セナ君が優しく涙の跡を拭いてくれた。
そうだ、私は怖かったんだ。緊張状態で訳が分からなくなってたけど、怖かった。
セナ君の優しさに触れて一気に涙が溢れてくる。
「、、怖かった。セナ君が来てくれて本当に安心した。私なんかのために誰も探してくれないんじゃないかとか不安だった。来てくれて本当にありがとう。」
頑張って落ち着こうとするけど、涙が止まらない。
ギュッ。
『もう大丈夫だから。また何かあっても俺が助けてやるから。もう泣くな。』
ドキンーーー
私を安心させようと優しく抱きしめてくれるセナ君に一瞬だけど激しく心臓が鳴った。
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