2話 運命を変えた外出
ふっ、やれやれ全く……男子大学生という生き物はなんて愚かなのであろうか。朝食を食べようとしたのだが、まさか卵の一つも残っていないうえに、買い置きすらしていなかったのだ。たしかにここ最近自炊などしていなかったためそもそも出来合いのもの以外の食品を買い出しに行ってなかったのだ。実に愚か……愚かなり、だがどうせ数日後には忘れている。仕方がないのでコンビニで弁当なりカップ麺なり買ってくるか。
そうと決まったら我は腹が減っているのだ、先程外へ出たのでわざわざ着替えをしないで済む。僕はできるだけ荷物を持たないようにするためにリュックから財布を取り出し念のため中身を確認し先程とは違い軽い玄関扉を開く。
そしてコンビニへ普段なら遅い足取りだが、腹が減っているため急ぎ足で歩く。朝は比較的涼しいとはいえ今日は少し暑いので動きたくないが背に腹は代えられぬ。だが、途中トラップとも言えるよく見かける赤い首輪をつけた少しふくよかなオッドアイの三毛猫が足元へ寄ってきて空腹であるにもかかわらず思わず無我夢中になって撫で続けていたため何分かのロスをしてしまった。数分も撫でていると満足しきった三毛猫側が飽きてどこかへ行ってしまった……猫って本当気まぐれだよなと当初の目的を思い出しコンビニへ足を向けた。
~3分後~
店内をぐるりと回り朝ということなので安くて胃にあまり重くなさそうな弁当を選んだ。そして高校時代の同級生の女性店員と弁当を温めている間数分話し店を出たところでまた先程の三毛猫が姿を現したがさっきので満足してしまったのか興味なしと言わんばかりにそっぽを向き僕の身長ほどの塀をつたってどこかへ行ってしまった。残念である。まぁ、どうせよく出会うからとりあえず気を取り直して帰宅だ。
~10分後~
コンビニは少し遠いため、気持ちぬるい弁当になってしまったがいいか……とりあえずテレビをつけて何か見ながら食べるとしたいがこの時間だとニュースしかないか。まぁ、嫌いじゃないしむしろ好きな部類であり、時事問題はある程度知っておかなければ困るのは自分だ。時事問題ではないが家が貧乏であったためテレビがなくて話題についていけないことが多々あったが、今は自分のバイト代で買った家の広さに合った小型テレビで楽しませてもらっている。
「……のニュースです。最近革命軍のテロ活動が活発になり全世界の主要都市で行われております。軍が制圧を図っていますが現在進行中で難儀しており、この波に乗って他の革命家組織が活動を開始する可能性があります。主要都市の住民は十分注意し……」
「革命家か……」
この世界には革命軍というものが存在しており原因は200年も昔に終結した戦争に起因している。その前にこの世界には大まかに分けて種族というものがある。人族と魔族である。この二つの種族は仲が悪くいざこざが歴史的にたびたび起きていたが約500年前の世界の運命を左右する大戦を最後に人族と魔族の王により①今後戦争を起こさない②種族で分け隔てない③住む地域も限定させず共存させる、という「種族の盟約」を契り長い長い平和を維持し続けた。しかし200年前に人族の過激派による魔族の虐殺により世論が変わり全面戦争へと発展。人族側の王権は事態の収拾に失敗し放棄。代わりに力を持った者たちが政府を設立。一方魔族側は伝統的血筋により王を立て徹底抗戦を掲げ人族と対立を決行。結局人族側が勝ったのだが正しき対処もせず扇動をした人族の政府はスキを突かれ人族・魔族連合軍にクーデターにより壊滅。彼らは新政府を立て魔族との共存を選び、経済を成長させ現在のメディアの発達した現代社会が発達させた。
しかし、やはり共存に反対する者も存在しそれらが革命軍として活動しているらしい。わからなくもない話だが、なぜ無関係の者達を巻き込んでまで主張する必要があるのだろうか。最初はただ種族の人族は人族の魔族は魔族で住み分けるべきという大義名分で行っていたのだろうが、集団心理とは恐ろしいもので正しき方向から舵を間違え暴走してしまう。早く鎮圧をしてほしいものだと他人事のように思う。
そのようなことを思いながらニュースを見ていると突然一本の電話が鳴った。こんな俺に電話する心当たりのある人物はあいつしかいない、面倒だと思いながらも電話に出ることにした。
「はい、もしもs……」
「おいっす、ジン。暇か?」
こいつは生まれた病院から大学まで現在進行形での腐れ縁のデイズだ。無駄に元気でうるさいし活動的な奴だがいつも僕をどこかへ連れていきたがる。僕以外のやつと行けばいいのになぜ僕を連れて行きたがるのだろうか。こいつもやはり友達いないんじゃないのか? まぁ、お陰で良い経験が出来ているからありがたいとは思っているけど。
「午前中からなんだよ、用がないなら切るぞ」
「待て待て、ちゃんと用があって電話したに決まっているだろう? 今日の13時に紅茶橋の近くの噂のカフェに行かないか? 奢るからよ~来てくれって~」
デイズはなぜだか最後裏返りそうなひ弱な声で訴えてきた。イラつきながらもしかしその話を聞き僕の心は揺らいだ、というのも実は一度下調べとして行ってみたかったのだ。なぜならば生憎僕ら2人はモテない同盟として万が一彼女ができた時のために下調べは欠かせないようにしているのだ。1人で行けって? それが出来たら今頃苦労してない。
「わかった、13時に紅茶橋集合で約束通り奢りな」
「さすがジン、くそ野郎だぜ」
一言多いなと思いながらとりあえず会話が長くなるのは面倒なのでお前には言われとうないわと返し会話を切り上げた。
さて、13時だっけなと先程の会話を思い出し携帯の時計を確認するとあと10:10前後であった。ならぶっちゃけもう行ってもいいな。どうせ家にいても何もすることもないうえに家だと寝転んで眠ってしまいそうだからとっとと行って散策するなり時間を潰そう。
そう考え、コンビニに行くのとは違いリュックに財布などの荷物を詰め駅へ向かうことにし玄関を出る。途中またあの三毛猫と再会するがそこまで急いでないけど急いでいるのですまんな、と心の中で謝り足元へじゃれてきた三毛猫をかわしながら駅を目指した……が、今回は余程相手してほしいのだろうか?まるで恨みでもあるかのようにしつこくついてきたのだ。お前……さっきはそっぽ向いてどこかへ行きやがったくせにまた撫でられたいのか。まぁ、なんだかんだ時間はある。撫でている最中突然ふっとそういえば財布の中身に不安があることを思い出したので駅の途中のATMでおろしてから向かうとしよう。さて、しばらく撫でたのでお開きとさせてもらいますか三毛猫先輩。
「ごめんな、これ以上は時間がないからまた今度な」
そういうと言葉を理解しているとは思わないがなんとなく不貞腐れた顔つきながらも素直に離れてまた今度なといわんばかりに、にゃ~と可愛い声を発した。
また撫でてやるから許してな。
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