★★★彡 『黒い三連★』 「あれ? 一つ動いてない?」
夏のある日、歯磨きしに洗面所へ行った。まー、いつも行っているが。
洗面所は風呂の脱衣所も兼ねている。だからその隣は風呂だ。
風呂場の戸が開いていた。乾燥させるために開けていたのだろう。
その戸の隙間から風呂のタイルが覗く。
壁に使われているのは正方形のピンクのタイル。
だが、床は違う、丸い石のようだ。色も2種類ある。濃い緑と壁と同色のピンク。
視力の悪い私にはこの緑色のモノが気に入らない。眼鏡がないと確認できないからだ。
黒いアレに思えるからだ。
しかも風呂によくいる。
排水口から侵入したのかと考えて封鎖したりもした。
が違った。
窓の上にある換気口の横の隙間らしい。
タイルの上から四か所、枠の角を留めている。
その「辺」の所、無理やりだからか、少し隙間がある。
奴らなら、通れるだろう。
髪が長くなった時、髪を洗っていると髪がウロチョロとすると気になった。
奴らに思えたからだ。
実際にいたときには浴槽へと逃れてから、シャワーで熱湯攻撃。
奴らも生物。
タンパク質の変形からは逃れられない。
火傷など、もっと分かりやすいのは玉子焼きとかかな。
不可逆の変形。
普通の部屋では使いにくいが風呂や台所のシンクとかなら出来る。
問題は片づけだ。
めんどくさい。
そして冒頭。動くやつが見えたのだ。戸の隙間から。
電灯の点いていない浴室、タイルの緑は黒く見える。
三つ並んでいるように見えたものが、一つ動いた。
とりあえず殺虫剤を用意。
電灯を点け、周りを確認。目標に噴霧!
殺虫剤だと即死はしない。
暴れながらヤツはサンダルの陰に隠れる。
出てきたところをもう一撃、オーバーキルだ!!
しかし、もがき逃げる先に更に新たな標的が現れた。
バカな!? デカブツが2匹もだとぉ!!
こんなことは初めてだ。だが、今この手には武器がある。
てめぇも死ね! 噴霧噴霧!!
まさか、二匹も同時展開するとは!
だが、固まっていたことが敗因だ!
そうこうするうちに二手に分かれた。
元気な方に追撃だ。
洗剤のボトルの陰に逃げるヤツ。
そこで、さらに更に角から現れた第三の刺客!
さ、三匹目だとぉ!!
慌て逃げ惑っている奴では無い。動きがゆっくりだ。別の奴だ。
ここは魔窟かぁ!
もう一度噴霧ぅううう!!!!
ついでに見えない部分にも噴霧しておいた。新たに死角にいても死滅するぐらい。
この後、姉が風呂に行くだろう。退治はしたのだ、片づけは任せよう。
そして私は、そっと扉を閉ざし、その場を後にした。
あっ、歯は磨いたよ。
それからガサゴソと密室からの物音がしばらく続くのだった。
物音だけで鳥肌が立ちそうだ。
因みに「俺を踏み台にした」ような行為は出来なかった。
だってアレを踏みつけるんだろぉ? そんな無理!
そして姉の叫びが響き渡る。