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2-1


翌朝エルランディア(マキナ)が一人で朝食を食べていると、3人がレストランに入ってきた。


「おはようございます。エルランディアさん」

「おいーす」

「おはよう!」

「おはよう、みんな」


3人は同じ席に座り、何にするかメニューを見ていた。

そんな3人を横目にエルランディアは黙々と食べ続けている。


“監視の目はありません。魔法、魔術の類も検出せず”

「(わかった。引き続きよろしく)」

“了解”


マキナギアとの通信を終えると、ダリアが呼び出しボタンを押そうとしていた。

全力で。


「俺の渾身の一撃!」

「おいバカやめろ! 筋肉狼!」

「周りに迷惑ですよ。2人とも」

「……(やれやれ、何をやっているのやら)」


張り合っている2人を無視しつつ、エルランディアは呼び出しボタンを押す。

そうすると厨房から返事が聞こえてきた。


「今行きます」

「あ! エルランディア! 俺が押す予定だったのに!」

「よくやったな」

「ダリア、後で組み手な」

「勝てる気がしないぞ!」


その後朝食を終えた4人は街の公園にやってきた。

早朝ともあり、運動をしている人たちがちらほら見かけられる。


「よし、ダリアかかってこい」

「行くぞ!」


ダリアのスピードの乗ったダッシュパンチを右手で逸らす。

すぐに蹴りが入ってきたが、それは左手で受け止める。


「これでどうだ!」


ダリアは両手がふさがった状態のエルランディアに頭突きを繰り出すが、勢いが乗る前に逆に頭突きを返されてしまった。


「どうした? これで終わり?」

「まだまだ! シンクロ率30%!」


一旦離れたダリアは先程より早い速度でエルランディアに迫る。

怒涛の連続攻撃がエルランディアを襲うが、全て受け流し反撃していく。

ダリアもタダでは攻撃は受けない。

避けれる攻撃は避け、それでも避けれないのは受け止めている。


「ほらほら、先祖様はもっと強かったぞ」

「俺は先祖を超えるぞ! エルランディア! シンクロ率70%!」

「おっと、氷結か。迂闊に触れないな」


ダリアの氷結の拳と蹴りがエルランディアを追撃し、押し込んでいく。


「そろそろいいか」

「ん? うわ!?」


エルランディアは手にシールドを纏うと、拳を受け止め投げ飛ばした。

だがダリアも体を捻り、きれいに着地する。


シュペルが残念そうな表情をしているが、見なかったことにしたエルランディア。

近くで運動していた市民も気になって集まりだし、普段あまり戦いを見ない一般人は興味有りげに見に来ていた。


「こっちからも攻めるよ」

「こい! エルランディア! シンクロ率75%……クッ!」

「引っ張られるか。まだまだだな」

「ナメルナー!」


正面からくる氷結の拳にシールドを纏った手で受け止める。


「それ、正気に戻れ」

「ガッ! ゴッ!?」


エルランディアの膝蹴りがダリアの腹に入る。

体勢が前かがみになった瞬間頭を地面に叩きつけた。

その拍子にフェンリルとのシンクロが乱れ、引っ張られていた意識がダリアに戻ってきたのである。


「よし、今日はこれで終わりだ。ダリアはシンクロ率を高められるように」

「お……おう!」


言い終わると同時に周りの市民から歓声が上がった。

そのほとんどはエルランディアに対するもの。


「あの嬢ちゃん小さいのに男に勝っちまいやがったぞ! すげえ!」

「だよな! 惚れそう!」


などと聞こえてくるがエルランディアは無視することにした。


「おつかれさまです。タオルどうぞ」

「アリサ、ありがとな!」

「エルランディアさんもどうぞ」

「ありがとう」


汗は出ないが、演技のためにタオルを髪の毛に当て最小の魔力で水滴を作り出した。

これでタオルが少し濡れて完璧だ。


公園を離れ、ホテルに戻り荷物を持つと港町から首都へ向けて出発。

調査を進めるのは良いが、せっかく出し観光しようぜっとシュペルが言い出したためパンフレットに有った観光名所を回ることになった。


「外国はいいですね。評判に有った事が無いみたいです」

「評判? そんなもの有ったか?」

「エルフの里は情報網がないのか! 俺も知らん!」

「バカかお前は!」

「たしかにおかしいな……。普通なら愚痴の1つや2つあるはずだが……」


エルランディアは少し考えているとアリサが現地の人に直接聞いてはどうかと提案してきた。


“非推奨。公安に目をつけられる可能性”

「やめたほうが良いね。何処に誰が何者かわからない以上気安く聞くのは不味い」

「そうですか……。私もまだまだですね」

「人生そんなものだよ」


そんなことを言いつつ、観光名所を回っていく4人。

港町最後の観光名所にたどり着くとパンフレットを開く。


「なになに? 貧困で貧しい村を一躍活気づけたシンボルの土地? これエルランディアのことだよな?」

「そうだね。ここを港町にしたのも他の町と比べて1番貧しい所だったからね」

「まだなにか書いてあるな。この町のために尽くしてくれた2人の銅像……」

「ちょっとまて、私1人だったぞ。2人ってなんだ。……まさかあれか?」


エルランディアは昨晩見つけたスキャン写真を思い出しつつ、銅像がある広場へ向かっていく。

そこにはお馴染みのマキナの銅像。

と、もう1人知らない人物の銅像が並んでいた。


「誰だこいつ。プレートがあるな。名前は……」


名前を見た途端一瞬だがノイズが走った。


「っ!?」

“空間転移モジュール、DEMモジュールによる歴史改変をブロック”

“魔導量子メモリ空間内に破損発生、修復開始”

“記憶領域内に僅かな改変データ検出、破損”

“魔導量子メモリ空間内データ修復完了。”


マキナギアが起きたことを淡々と通信を介してエルランディアに伝えていく。


「エルランディアさん? どうしたのですか?」

「いや、ちょっと歴史改変が発生したみたいでね。それをブロックして修復してたんだ」

「歴史改変? それにしてもエルランディアさんとこのエドワード・グリントさんはすごかったのですね」

「は? 今なんて?」

「ですから、エルランディアさんとエドワード・グリントさんはすごかったと」


エルランディアは呆けた表情をしていた。

何を言っているのだと言わんばかりである。


“推測、先程の歴史改変の影響を受けたと思われる”

「(この名前がトリガーだったのか! 伝染病のように名前を聴いた、見た者の認識を変えてしまう。だが、誰がこんな高等な魔法……いや、魔術を)」

「おーい、エルランディア? 聞こえてるかー?」


シュペルが何か言っていた様だが、演算に集中していたエルランディアには聞こえてなかった。


「ああ、なんだっけ?」

「だから、昼飯にしようぜって話」

「……わかった。私からも話がある」


近場に有ったパスタ専門店に入ると、シュペルがキラキラした瞳で見ていた。

エルフの里は近代文化が入り込んできているが、昔の仕来りを守るため里に合わない物はあまり扱っていないのである。


「俺ナポリタンがいい!」

「シュペルさんたら子供みたいですよ」

「だってさー、族長が許してくれないからさ」

「俺はチャレンジ2キロペペロンチーノを選ぶぞ! 食いきれればタダだ!」


各々の注文を済まし、エルランディアは話に入った。


「話なんだけど、何故この国に来た?」

「何故と言われても……久しぶりに会い、観光に行こうということですよね?」

「そうだな! 俺ら久しぶりに会うから観光ついでに強いやつに会いに行くってことだったな!」

「お前違うだろ……観光だろ観光」


エルランディアはやはりかと再確認をしたのだった。



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