5-2
通路の最奥までたどり着いたマキナ達は電子ロックで施錠された鉄の扉を目の前にしていた。
そそっとメアリーが電子ロックのカバーを外すと自分の端末に接続をした。
「解析~解析~♪ マキナ様の為に~解析~」
数秒後、画面に表示されたのはErrorの文字だった。
「うわあああ! なんで!? 私の端末ちゃんどうしちゃったの!?」
「さあ皆行こうか」
“ATS起動。高周波ブレード”
電子ロックを解除しようとしたメアリーがいたたまれないが、この扉も高周波ブレードの前ではバターの様にスライスされてしまったのだ。
「ちょ、ちょちょ待ってください! 危ないところに入るのは私からです!」
そんな事を言いながらメアリーが先頭に立つ。
入った部屋の先は一面魔導コンピュータで埋め尽くされており、画面にはデータ削除100%と表示されている。
すると突然声が聞こえてきた。
マキナには忘れもしない声だ。
一番奥にあった椅子が回ると少女が腰掛けていた。
「また会いましたね。DEM001PT……デウス・エクス・マキナ。お仲間連れてやり返しに来たのですか?」
「ああ、そうだよ。DEM001BT」
“ATS起動。高周波ブレード”
“近接戦闘プロファイル改”
「落ち着きなよ。私の名前はアルコーン」
「偽の神か。グノーシス主義における低位霊の存在」
「そう。私は地上の支配者、故に神!」
「ほざけ」
マキナは一瞬にしてアルコーンに近づくと高周波ブレードを振るった。
新しい未来予測システムが複数のポイントに表示される。
その中から一番確立の高い1つが厳選され、マキナはそこめがけて振るう。
アルコーンは驚いた表情で高周波ブレードを剣で防いでいた。
「魔鉱石の剣か、私も持っているぞ。故に弱点もわかる」
「何を!」
「ダイダロスツインアサシン」
マキナがアルコーンを抑えている間に脇からダリアが攻撃を叩き込む。
“オーバードライブ、制限時間20分”
マキナは一気に出力を上げると魔鉱石でできた剣を切り裂いた。
アルコーンには避けられてしまったが、相手の武器を破壊することには成功した。
「これはだめですね。前とは大違いの戦闘力です。リソースを戦闘用に割り振ったのですか? それともリミッターでも外しましたか?」
そう言うと剣を放り投げる。
マキナは答えずにそのまま斬りかかる。
「ではこれはどうでしょうか?」
高周波ブレードに合わせて衝撃魔術を発動する。
一点集中で放たれたそれはマキナの手から高周波ブレードを吹き飛ばす。
だがそれに目もくれず、横へ避ける。
後衛の3人から魔法が繰り出されるのだ。
「レ・ヴァイエスオルタ!」
「エン・ボイド・エクスカーションアルファ!」
「デスオブダークネス!」
戦略級魔法がアルコーンへ直撃する。
シールドが既に展開されており、シールドとせめぎ合っている。
そこへダリアが近づきマキナを破った技を行使する。
「ダイダロスオーバーノヴァ!」
「その程度で私を倒せるとお思いですか?」
「思ってないね! WLCS起動!」
“World Line Connection System起動完了。”
“自己保存領域からロード完了。スピアオブブリューナク”
マキナの手に一振りの槍が具現し、それをアルコーンに投げつける。
シールドを貫通し左腕を破壊することには成功した。
「くっ! シールドを貫通!?」
“自己保存領域からロード完了。ラグナロク”
「シールドに負荷が……! あっ! あああああああ!」
シールドが砕け、魔法に飲み込まれるアルコーン。
壁に亀裂が入り、地響きが聞こえ始めてきた。
「皆、私に掴まれ!」
「マキナ様にダイブ! ふべえ!」
「皆掴まったな! マキナギア!」
“自己保存領域からロード完了。上空に転移”
“ATS起動。フォトンウィング”
「ひええぇぇぇぇ! 落ちるぅぅ!」
メアリーがマキナの足に捕まり暴れている。
その下では地下が崩壊したため地上の建物が崩れ落ちていた。
幸いなことに生命反応は無かったため死人はいなかった。
「とりあえず下ろすか」
「今のうちにマキナ様の足をスリスリしておかなければ! あーっ! 揺らさないで! 落ちるー!」
近くの建物の上まで来ると、4人を屋上へ下ろした。
すると、大規模な揺れが首都を襲った。
「なんだ!? 俺の筋肉がついに大地を揺らしているのか!?」
「ダリアさん……こんな時に冗談は……」
「す、すまん」
ダリアがアリサに怒られている時シュペルとマキナは異変を感じ取っていた。
首都全体に流れていた魔力が無くなっているのである。
2人がどういうことか考える前に結論が出た。
崩壊した地面から砂埃を巻き上げ、アルコーンが空へと上ってきたのだ。
「私としたことが少し手を抜きすぎてしまいましたね。魔力は主様に転送は終わった。この町は用済み。デウス・エクス・マキナと共に消え去りなさい!」
“警告。大規模な魔力反応”
「エーテルスタンビート!」
「アンチマジックインバケーション」
首都全体に全ての魔力を暴走させ崩壊させる魔法が空から掛けられた。
崩壊した魔力は放射性魔力波となり降り注いだが、マキナが発動した対抗魔術により放射性魔力波は魔素に変換され魔法自体も無効化された。
「なんですって……? どこにそんな魔力が!」
「悪いね。こっちは世界が味方してくれているのでね」
マキナはアルコーンと同じ高度まで上がる。
高周波ブレードは瓦礫に埋もれてしまっているため使用できない。
「決着をつけようか、アルコーン?」
「何を偉そうに! PersonalType風情が!」
“ATS起動。ノワール”
アルコーンはガンブレードを取り出しマキナへ斬りかかる。
システムがアルコーンの動きをシュミレーションし、次の動きを予測する。
「どうしたアルコーン? 当たってないぞ?」
「どうして当たらない!? スペックではこちらが勝っている筈なのに!」
「それはソフトウェアと長年の感だ。それに機体ダメージで遅くなっているぞ?」
「くっ!」
アルコーンは離れ、銃撃モードにするとマキナを狙って撃ってきた。
銃弾の未来予測は難しく、距離が開くほどばらつきがでる。
それ故に大幅な回避を強いられた。
「これですね! これが弱点ですね! 今のうちに回復を……」
「離れればいつから安全だと思った?」
“自己保存領域からロード完了。イチイバル”
手元に弓が現れ、アルコーンの銃撃を躱しながら弓を引く。
「そんな弓ごときで……」
「普通の弓と勘違いしないことだ」
矢を放つ。
オーバードライブ状態の力で放たれた矢は一瞬にして極超音速を超えアルコーンの腹部を貫いていった。
続いて衝撃波がアルコーンを襲い空中に静止している状態を乱したのだ。
「あ……が……私が、負ける? そんなはずは! 主様……!」
マキナはアルコーンの頭を掴むと衝撃魔術を発動した。
出力100%プラスオーバードライブのだ。
アルコーンの頭部は一瞬にして砕け散ると頭脳を失った体はそのまま地上へと落ちていく。
地上に被害が出かねない重さゆえ、マキナはその体を空中で受け止めると4人のもとへと戻っていった。