駆け出し冒険者の1日
僕の名前は、フローレス。訳あって、一昨日から冒険者になりました!
此処は、あらゆる能力が満ち溢れる世界──インデックス。
知識こそが、自分であり、世界こそが、能力なのだ。
「おい、そこの赤毛ザル」
「……」
「だからッ! そこの赤毛ザル!」
遠くから変なアダ名を付けられた人が呼ばれている。あぁ、猿だなんて可哀想に。僕なら絶対嫌だね。
「だから、てめぇだって!」
やけに近いところから声がした。そして、次の瞬間──僕は着ている駆け出し冒険者に与えられる麻の服の襟を掴まれる。
「うへぇ!?」
ひょいっと体が持ち上げられる。馬鹿力だ。うん、間違いない。ゴリラだ!
「やめてください」
丁寧な言葉遣いで言う。いちおう、まだ駆け出しだからね。
「クソ赤毛ザルがァ! 手間かけさせんな」
「は、はぁ……」
気の抜けた返事になってしまう。だって、僕にはフローレスっていう名前あるんだもん。
それよりも、周りにいる人も何か言ってよね。
木目の入った壁と、樹木の香りから木造の建物だと分かる。置いてあるテーブルや椅子までも木目が入っており、木製だ。
そして、この建物の最奥の壁には大きな掲示板がある。そう、此処こそが皆さまお馴染みのクエスト受注できる言わばギルドなのだ!
ということは、人が居ないわけがない。少し離れてはいるが、奥の方には数人のムキムキパーティーがいて、すぐ隣では魔法少女さながらの可愛らしい女子のパーティーがいる。
細かく言えば、まだまだおひとり様で座っている人だっている。だが、その中の誰一人だって何も言ってくれない。
もう世の中終わりだな。オワター。
「赤毛ザル、てめぇ1人だろ?」
「そうですけど」
「だろうなァ!」