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フェーズ:017『ラブラブ★タペワム』

「なろう……アナリティクスにアクセース!

接続完了っと!

それから、アクティブユーザーをかっくにーん!」


「ではでは、今日も元気にぃ~!

『S:I:R:E:N』! Initializing! Ready!」


「ん? むむむむむっ……なーんかヘンだなぁ。」


「ああっ! 不正パッチを使って、

謎を解こうとしてる悪い子はっけ~ん!

ねぇ、神楽! そっちでも確認できてる?」


「……ターゲット補足。

鎮圧執行システム、オンラインに切り替え……。

トリガーをオープン……。

クッキングブレインパラライザー射出準備完了……。

美琴、落ち着いて照準を定め対象を無力化してください。」


「おっけー! アタシにおまかせ~!

そんじゃ、クッキングブレインパラライザーはっしゃ~!

びびびびびぃ~! どっかーんっ!!!」


「……お見事です。

対象の沈黙を確認しました……。」


「ふぅ~! すっきりしたぁ!」


「鎮圧執行システム、オフライン……。

それでは、謎解きバトルモードに移行します……。」


▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

Title:『ラブラブ★タペワム』


「これが、いま流行りのラブラブ……タペワム?

 こんなので本当に効果あんのかな……。」


1ヶ月で劇的ダイエット!

効果がなければ全額返金!

お友達紹介キャンペーン実施中!

おひとり様ご紹介ごとに10万円プレゼント!

まずはお試しください!


そんな謳い文句につられた私の手元に届いたのは、

風邪薬を彷彿とさせるただのカプセルだった。


「ま……無駄に期待せずに試してみるか。」


月々の支払いは10万円。

有名海外セレブも御用達。

厚生労働省より正式に治療薬として認可。


本当なんだか嘘なんだか疑わしい文言が、

マニュアルにズラリと並んでいるけれど、

私にはどうしても痩せたい理由があった。


「お見合いパーティーまでに痩せないと、

 せっかく買ったドレスが着れなくなっちゃう……。

 それに……大企業の御曹司が来るって噂だから、

 本気で勝負しないと……。」


ダイエットと美容に給料の全てを注ぎ、

セレブ婚を望む友人達と臨む決戦の場。

私は高校からの親友である奈津美と恵子に

負けたくないという一心で、

この『ラブラブ★タペワム』に賭けたのだ。


「カプセルを飲んで、

 およそ2週間で効果が出るんだ……。

 で……特に何もしなくていいの?

 うーん……胡散臭いことこの上なしね。」


ぶつぶつと文句を零しつつ、

カプセルを口に放り込む。

だが――私が抱いていた疑念は、

たった1週間で消し飛んでしまった。


「……痩せてる。」


やつれることなく体重が減る。

その感激と実感は日を重ねるごとに増し、

私の体を愛されボディへと変化させてくれた。


しかし、更に数日経過した頃――。


「うぅっ……頭がクラクラする。」


私は強烈な空腹感と目眩に襲われ、

立っているのもやっとという状態になっていた。


「おぶっ……うぷっ。

 これ……まさかラブラブ★タペワムの副作用?」

吐き気と倦怠感が押し寄せる中、

私はある都市伝説を思い出していた。

それは、痩せる薬と称して渡されたのは、

胃の中で繁殖するゴキの卵だったという話だ。


「とにかく……お医者さんに行かなくちゃ。」

ふらつく足に力を入れ、最寄の大学病院へと急ぐ。

私は担当医にラブラブ★タペワムを服用したことを告げ、

ここ数日の状態を説明した。

瞬間――。


「おぼろぉっ! うげげぇっ!」

私は吐き気を堪えきれなくなり、

処置室の床に吐しゃ物を撒き散らした。


「ず……ずびばせん、ずっと……こんな調子で。」

涙と鼻水にまみれながら謝り、頭をさげる。

と、その時――私は自分の唇の端に、

紐のような物体がぶら下がっていることに気づいた。


「えっ? 何……?」


「キルキルキルゥゥゥ……。」

細長くて眼のない芋虫。

例えるならそんな形状の生物が呻き声をあげた。


「いやああぁっ! 先生っ! 先生!

 な……なんなんですか、これは!」


「ラブラブ★タペワムですね。」

「……へっ!?」

パニックに陥る私とは対照的に、

担当医がニコニコ顔で答える。


「厚労省が認可しているんで、

 最近、頻繁に見るんですよね。

 どうします? 切除されますか?」


「は……はい! ひゃやく! すぐに!」

汚れた衣服のままで、担当医にすがる。

すると、ベテランの風格をまとったその医師は、

ラブラブ★タペワムを手に取り、

残念そうに目をしばたかせた。


「一度、切除すると……今後二度と、

 ラブラブ★タペワムを服用できなくなりますが、

 それでも構いませんか?」


「……二度と?」


「ええ……。

 こいつは確かに不気味ですが人畜無害。

 寄生虫を使ったダイエットというのは、

 海外では珍しい話じゃあないんですよ?

 まぁ……月々の支払いのことも考えると、

 一般人には、なかなか厳しいですがね……。」


順調に痩せられたこと、

間近に迫っているパーティーのこと、

『二度と』という制約が私を悩ませる。


「さぁ、どうします?」


「切除……しません。」

担当医に聞かれ、

私は私のラブラブ★タペワムを手で包み込み――。


「おごふっ……おぶっ……ごぼえっ。」

飲み込んだ。

そして、支払いの問題を解決する為に

奈津美と恵子に電話をかけた。


▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△


「……出題、完了。

正解者確認……。

脱落者確認……。

ユニークPuzzlerを確認。

テクニカルPuzzlerを確認。

それぞれにポイントを付与します……。」


「ねぇねぇ、神楽~!

ちょっぴり気になってたんだけど、

クッキングブレインパラライザーって

どんな効果があんの?」


「……仮想マグネトロンを用いた、

電波の一種である強力なノンコヒーレントマイクロ波を放出し、

対象Puzzlerにダメージを与えます……。」


「むむぅ? それって、つまりどういうこと?」


「……脳細胞を溶かして破壊します。」


「ひぇえ! Puzzlerのお脳だいじょぶかなぁ……。」


「……気に病む必要はありません。

不正やチートには代償がつきもの……。

Puzzlerも、そのことを理解しているはずです。

それでは……謎解きバトルモード終了します。

謎解き、お疲れ様でした。」

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