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室内はお静かに

作者: ふしお

どこにでもある高校のどこかの高校。

図書館に行くこの男女も普通の二人である。

これからおこる珍事も普通の事である。

俺は幼馴染の新聞部部長の女の子と図書室に来た。

本を借りに来たのではない。

こいつが図書委員の学校一のイケメン先輩とやらに取材を申し込んだからだ。

俺は何となく人手が必要かなという幼馴染の適当な考えのもと呼び出された。

部員を使えばいいだろうと思ったが今日は全員欠席らしい。


 俺が嫌々に図書室特有の重い扉を開くと涼しいクーラーの風が肌に吹き付けた。

室内はまるで映画館で上映前に静まり返るあの時間が延々と続いてるような感じだ。

人がポツポツとしか居ない閑散とした中をずかずかと歩く幼馴染。

幼馴染の歩く先には貸し出しバーの中にちょこんとパイプ椅子に座るパンダのように優しい目をしたイケメンが居た。

顔は俺とは似ても似つかない。猿とゴリラぐらい差がある。

わかりにくいだろうがそんな感じだ。

取材が始まったが俺の出番は無い、適当に室内を散策しよっと。

俺は貸し出しバーから離れて本棚に目をやった。

小難しいタイトルの小説が並ぶ本棚を上から下に流し見した。

すると丁度真ん中の段に目が辿り着くと

軽いタイトルの小説がその段と一段下の段まで並んでいた。

へぇ、ラノベも置いてあるんだ。

お、これはハル○の憂鬱じゃないか。

懐かしいなおい。

ペラペラとめくると小さなメモ用紙がページの間に挟まっていた。

何々え~っと


「賢者よ勇者にジョブチェンジしたくはないか?」


汚い字だなおい、達筆ぽく書きやがってよう、厨二丸出しだな。

続きはっと


「ジョブチェンジしたくば教えて賢者、何とかなるさ、ニートの心理の三冊を借りよ」


 誰がこんなめんどい事考えたか知らんがやることねーし暇つぶしにやってみっか。

教えて賢者は「お」の段だよな、あ〜この棚の上に教えてシリーズがあるな。

俺は三段の階段状の台を見つけた。


「この台借りてもいいですか!」


「し〜」


あ、大きな声出しちまった。

いかんいかん。


「借りますねぇ」


よいしょっと、何々、教えて僧侶、教えて賢者、教えてどらえも○。

あ、この真ん中のか、たっく埃くせぇな。

表紙も白一色に黒文字でタイトル書いたやつだし。

紙も古くなってら〜。まぁいいや次は~っと

お、すぐ隣の段じゃん、しかも同じ棚にある〜ラッキー。

俺は棚の上に片手を置きもう片方で隣の棚に手を伸ばした。

あと少し、君に届け俺の人差し指。

届い••••••ったけども。


「ガコン!」


いてて、台から落ちちまった。

腰いて〜。


「君、大丈夫かい? ••••••その二冊まさか」


 ん?誰だこの声は。

顔を上げるとそこにはイケメンがいた。

隣には見慣れた幼馴染のイラついた顔。

俺が落ちたから心配して来たのかイケメン。


「あっはい大丈夫っす。気にせず取材しててください」


「そ、そうですかわかりました」


あ〜あ、心配なんてしてねー鬼の顔してやがったな幼馴染。

取材の邪魔したからだよな~。

後で何か機嫌取り戻さないと俺の恥ずかしい過去を校内の掲示板に貼り付けるやもしれん。


まあ気を取り直して最後の本を見つけよう 。

ニートの心理、ニートの心理。

心理学の本棚にあんのかな。

えーっとピルゲイツ、性交の心理、メンタリズムDAIKON、ニートの心理っと。

あ、これか。

ニートの心理、何かFXで全財産溶かした人の顔みたいな絵が表紙だな。

まぁいいやこれを持ってくとどうなんのかな。

お、取材も終わったか。


「終わり、帰るわよ」


「これ借りてくから待ってくれ」


「チッ、あんた今日なんかうざったいわね、取材の邪魔するし連れてくるんじゃなかったわ」


好きで邪魔してんじゃないやい。

さ、イケメンよ貸し出してくれ。


「やはりあなた、これを借りるのか。でもいいかい、借りるにはキーワードを答えてもらおう」


え、めんどくさ。

何だろキーワード、教えて、何とかなる、ニート。

オシエテ、ナントカナル、ニート。

オナニート、オナニー。

いやそんな訳ないか。

ま、暇つぶし出来たしこれで答えてみっか。


「オナニー」


••••••


この沈黙、軽蔑してるんだろうか。

まぁそうだろうなオナニー何て人に向かって言うことなんてないわな。


だが俺は小学生の時、女の先生にママって呼んでしまった。

クラスのみんなに笑われて済んでればまだ傷は癒えていただろう。

だが幼馴染のあいつは話を拡散して親戚のおばさん、家族とママと呼んだ事をおもしろそうに聞いてくる。

数日恥ずかしくて寝込んだあの時から俺の心は鋼で出来ている。


「いいでしょう、あなたは今日から勇者です。 冒険の書を授けましょう」


 ん?

何だこの展開、イケメン先輩が意味わからんこと言い始めたぞ。

まさか本当にオナニーがキーワードだったのか。

なんか奥の引き出しから持って来たし。


「これが冒険の書です」


大人の階段の〜ぼる、何だこれ。

ただのエロ本じゃねーか!


「実はね、この図書委員では代々カクガク童貞な伝統があるんだよ」


あ、よくアニメとかにあるなーそういうの。

本当にあるんか。

そういう事なら貰おうかな。


「ってもらう訳ねーだろ。おい幼馴染! 大スクープだぞ!」


ふん、目をキョトンとさせやがって、悪いがイケメンは俺の敵だ。

それにあいつもこれで機嫌良くなるだろう、一石二鳥だ。


「何だよ早く借りろっ••••••よ」


 目を輝かせちゃって幼馴染ちゃ~ん、たっぷりそのオキニのカメラで収めてくれよ~。


「パシャパシャ」


幼馴染は隠し持っていたデジカメでイケメンがエロ本を持ってる所を激写した。


「おい止めてくれ、これはその違うんだ。おい君、男同士の暗黙の了解を捨てる気なのか!」


「暗黙の了解? そんなもん最初から無いですよ暇つぶしなんでね。あと、室内はお静かに」


 こうして幼馴染の機嫌は戻り、俺は1人のイケメンを葬り去ったのであった。

めでたしめでたし。

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