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 はぁ……


 もう、何度目か分からない溜息をつく。

 宿に戻ってからというもの今日あったこと、明日起こることを考えると気が滅入るばかりだった。


「もう。そんなに溜息ばっかついてると幸せが逃げちゃうわよ!明日は、1人の女性を巡っての決闘なんだから気合い入れなきゃ!」


 “それが、憂鬱だから溜息が出るんでしょ。まったく、君が承諾しなければ決闘なんてしなくてよかったのに。”


 決闘はこちらが承諾しなければ成立しない。

 それを思い出し、私は何か理由をつけて拒否するつもりだったのだが…


『ああ、望むところだ。受けて立つ。返り討ちにしてやるぞ!覚悟していろ!』


 などと、エルザは私の口で言い放ったのだった。

 それも随分と楽しそうに。

 そして、明日の正午に街の外で行う事となった。


「何言ってるの!決闘を受けないなんて男の恥よ!それに、あいつリュカのことバカにしたじゃない?イラッときちゃって。明日、絶対勝たなきゃだめよ!」


 “陰気とかのこと?でも、まったくその通りだし。別に気にしてないから。”


 私の今の姿は、陰気そのものだった。

 幼少期あれほど付いていた体の肉は今や跡形もない。

 食糧に限りがある旅では極力2人に食糧をまわしていたので、自分はあまり食べていなかった。

 そのため、旅の過酷さも相まってみるみる痩せていき、そのことに2人が気付いた時には怒られてしまったのだが。

 まあ、そんなこんなで、私は今は細身と言える体型であり、口元をマフラーで隠しフードを深くかぶり長いローブを羽織っているので暗い男と言われても仕方ないだろう。


「そんなことないわ。リュカはかっこいいわよ。まあ、ちょっと痩せ過ぎな気もするけど……」


「そうだぞ!男はどっしりしてるってもんだ!」


「あ、お父さんおかえりなさい。」


 そう言いながら、部屋に入ってきたのはガブリエルだった。

 彼は護衛や魔獣討伐の依頼を受けていて、私達とは別行動だった。

 旅には色々と資金が必要で、時々街に滞在して稼いでいるのだ。

彼は何か買って帰ってきたらしく、それらを机の並べ始めた。


「ほら、もっと食べろ。今日は報酬の良い依頼だったから奮発して色々買ってきたんだぞ!」


「あー、また無駄遣いして!でも、そうよ!リュカ、明日は決闘があるんだからいっぱい食べなさい!」


「お?リュカ、お前決闘するのか。いいな、男のロマンだもんな。なに、俺の一番弟子だから大丈夫だ。行ってこい!」


 ほんとに賑やかな親子だな。

 テンポのいい2人の会話は聞いていて心地よい。

 こんな2人を見ていると憂鬱さも無くなっていく。


 “明日、頑張るよ”


 そう告げることができた。

 剣術、体術はガブリエルにも認められている。

 だが、私には1つ大きな弱点がある。

 そのことに、不安を抱えながら夜を過ごしたのだった。








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