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「説明は私からさせていただいてもよろしいでしょうか?」


 ウィリアム様とキースのやり取りを口を挟まずに見ていたジェラールが自ら名乗りを上げた。

 しかし、責任感のあるウィリアム様なら自ら私たちに伝えたいと思うのは必然だろう。

 思った通り、ジェラールの提案にウィリアム様は異を唱えた。


「これは俺がエクソシス王国の王子として話さなければならないことだと思う。だから、俺自身で話したいと思っていたのだが……」


「実はウィリアム様にも話していない王宮内の事情があるのです。時を見て伝えようと思っていたのですが、このような状況でお伝えする形になってしまって申し訳ありません。補足するところがあれば、お願いいたします」


「そう、なのか……?そういうことなら、よろしく頼む」


 ジェラールの真剣な目を見たウィリアム様は釈然としないような表情をしながらも、思いの外あっさりと引き下がった。

 ジェラールに何か言いたそうな様子ではあったが、ウィリアム様も事は急を要することだと分かっているためかそれを口にしようとはしなかった。

 ジェラールはウィリアム様に向かって力強く頷くと、覚悟を決めたように話し始めた。


「まず、私たちが何故この国に来たのか、その理由をお話いたします。その始まりは国王の命令により、この国にてウィリアム様の花嫁となる女性を見つけて来るように申しつけられたことからでした。国内ではとある理由により、ウィリアム様のお相手となるお方が見つけられない可能性が高くありましたので。ですが、ラミファスをそのまま出歩いて、ウィリアム様が第三王子だと関係のない人間にまで気づかれてしまうと危険が伴うので、この魔法道具を使って正体を隠していました」


「なるほど。この指輪は身につけた人物の特徴をあやふやにするような認識妨害の魔法道具だね。良い作りだよ。これをつけてればほとんどの人が君の正体に気がつかないだろうね」


 コンドラッドがウィリアム様の外した指輪をまじまじと観察しながら、感心したようにそう言った。

 魔法道具にめざといコンドラッドですら、欺かれていたのだからウィリアム様を守っていた魔法は相当強固なものであったのだろう。

 そう言ったコンドラッドにジェラールは頷いた。


「はい。そして、正体が知られてしまえば私たちに危険が増えるのと同時に、それを知った方達にまで被害が及ぶことが分かっていながらこの度私たちが正体を明かしたのは、王宮の中枢の人間にしか知り得ない情報を皆様に知って頂くためでした。それは、王宮に潜む悪魔は第二王子であるクラレンス・エドモンド様と関わりを持っている可能性が高いということです」


 彼のその言葉はやけに通り、耳に残った。

 それはウィリアム様にも同じだったようで、酷く驚き、傷ついたような顔をしていた。

 ジェラールは一同の表情を確認すると、誰かが疑問を口にする前に言葉を続けた。


「エクソシス王国では現在、クラレンス様を次期国王にと望む声が平民、貴族を問わず多くなっています。それも、異常なほどに。そして、それに反するようにウィリアム様の評判は不自然なほどに地に落ちています。ウィリアム様についての脚色された悪い噂が飛び交っていると言うこともありますが、ここまで皆が口をそろえて言うことには違和感を感じます。何か裏があるのではないかと思っていたのですが……」


「ここで悪魔という存在の事実を知ってそのことに結びつけたというわけか。だけど、それだけで断定するのはまだ早いんじゃない?」


 キースはジェラールの顔をのぞき込むように問いかける。

 その問いに、ジェラールはいえ……と否定し、付け足した。


「実は、エクソシス王国では昨年、第一王子であるディオン・エドモンド様がお亡くなりになったのですが、国王陛下の調べによりはっきりとした証拠は掴めないものの、その原因はクラレンス様にあるかもしれない、といった一つの結論を導き出しました。そして、王の口から次期国王にクラレンス様は相応しくなくクラレンス様には王位を継承しないとも聞いておりました。そのため、この記事に当然のようにクラレンス様が国王となると書かれているということは、彼が何か手を下したのだとしか考えられません」


「なるほど……。他の可能性を考えられなくもないけど、そう考えるのが自然か」


 キースはジェラールの考えに納得したように頷いた。

 しかし、それが本当だとしたら相当に悪い状況になってしまっている。

 それほど大きい国ではないものの、一国のトップが悪魔に支配されているのだとしたら、この世界への影響はすぐに大きいものになるだろう。

 そんな未来を想像するだけで、背中に汗がつたった。

 だが、キースは焦るような様子は一切出さずに、いつもの軽い調子でジェラールに問いかけたのだった。


「それで、君には何か考えがあるんだろう?君がそれだけの情報を俺たちに教えるだけで終わるとは思えないからね」


 そんなキースにジェラールはうんざりとした目を向けながらも、一つ息を吐いた。

 そして、立ち上がり机に手をつき身を乗り出すと、ある提案をしたのだった。


「はい。通常通りであれば一週間後、エクソシス王国の王都にて新国王即位のパレードが開かれます。絶対とは言い切れませんが、高い確率で悪魔もそこに現れるはずです。その時を狙いましょう」





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