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 ポイズンビー。

 それは蜂のような外見でそれでいて子猫くらいの大きさはある危険な魔獣である。

 蜂と同じように毒針を持ち、その毒は強力で象すらも殺せるという。

 それに加えて電気魔法で攻撃することもでき、その危険度からランクBの魔獣に登録されている。

 しかし、ポイズンビーの恐ろしさはそれだけにとどまらない。

 昆虫の蜂と同じように群れをなして生活し、集団による連携攻撃でランクAやランクSの格上の魔獣と互角に渡り合うこともあるのだ。

 そう、だから絶対に複数で行動しているときには近づかず、気づかれないように逃げるのが鉄則であるのだが……


 隣を歩いていたはずのウィルがポイズンビーの群れに向かって走り出していた。


 え!?なんで!?

 私、ちゃんと説明したよね?

 ウィルがどうしてもついてくると言って聞かないので、ポイズンビーがいかに危険なのかということと、どう行動すればいいかを先ほどきちんと説明したはずだ。

 あんなに念を押して、そしてそれをウィルも理解していたようにみえた。

 だから、ウィルを連れてポイズンビーが出現するポイントまで一緒に来たというのに。

 私一人ならどんな目にあっても構わないが、ウィルに何かあったら私の責任だ。

 とにもかくにも、一人で走り出したウィルを追いかけた。



「な!?お前もついてきたのか?俺一人で十分だ。危険だから離れていろ!」


 ウィルは、私が後ろからついて走ってくるのに気づいてそう叫んだ。

 どうやら危ないことは理解していたようだ。

 それなら、何故………


 あ!あれは……!

 そうか、彼はあれに気づいたから危険を顧みずに行こうとしているんだ。


 私たちの向かう先、ポイズンビーの群れの中に人影が見えた。

 ここからではポイズンビーに埋もれてよく分からないが、恐らく襲われているのだろう。

 ポイズンビーの毒にやられればひとたまりもない。

 一刻も早く救出しなければならない。

 だが私は、急ぐウィルの腕をつかんでポイズンビーに見つからないように近くの茂みに引っ張った。


「何をするんだ!早く行かないと!」


 無理に引っ張ったせいで倒れてしまったウィルは素早く立ち上がり、また走りだそうとしたが私はつかんだ腕を放さなかった。

 このままウィルを行かせてしまったら確実に危険な目に遭う。

 それを回避して助け出せる方法もあるのだ。

 しかし、声が出せないために伝えられないもどかしさと手を離してしまったら走り出してしまうのではないかという焦りで、私はウィルの腕をつかんだまま何もできずにいた。



「……何だ?何かあるのか?待っているから伝えろ。」


 言葉は乱暴でいつものウィルと同じように上から目線だけれども、暖かく優しい、そう思えるような声音で俯いている私の顔をのぞき込みながらそう問いかけてくれた。

 私の言葉を待っていてくれる。

 そんな安心感をエルザとガブリエル以外の誰かが与えてくれるなんて初めてだ。

 この人は私のことを待っていてくれる人なのだと分かった。

 私はいつもの筆談用の紙とペンを取り出して素早く書き綴った。


 “ポイズンビーは水魔法がほとんど効かないんだ。そのかわり、炎魔法には弱くて羽に擦っただけでも大ダメージになるよ。”


「なるほど。それなら、まずは離れたところから炎攻撃をして弱ったところを近距離から叩くのが得策だな。」


 ウィルが言ったのは、私が考えていた方法とほぼ同じ方法だった。

 戦闘経験は意外に豊富なのかもしれない。

 それならば話は早い。

 私はうなずいた。


 “ウィルは炎魔法をお願い。僕はその後すぐに剣で攻撃できるように待機してるから。”


「よし!任せておけ!」


 ウィルは自信に満ちた表情でそう言い放った。

 ウィルが魔法発動の準備に入ると同時に私はポイズンビーの群れに掛け出す。


「《ファイヤーボール》!!」


 言霊によっていくつもの炎の玉が現れ、ポイズンビーに襲いかかる。

 さすが、ウィルは水魔法も凄かったが炎魔法の威力も強力だ。

 しかも、コントロールも抜群で上空のポイズンビーのみを狙い地上にいる私や襲われている人には絶対に当たらないようにしている。

 群れの中心へと斬り込んでいくとやっとその人の元へたどり着いた。


 って、え?

 この子が?

 ここは並の大人でも一人では滅多に来ない危険な森の奥地。

 そこに倒れていたのは小さな男の子だった。




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