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魔法とはどういうものだろうか。

簡単に言うと3つの要素から生まれるものである。

1つ目は、原料となる魔力。

これは生物は生きている間は量は決まっているが常に作り出すことができ、誰もが持っているものである。

2つ目は、手段となる術式。

自分がどういった魔法を使いたいかその現象を理解していることが必要である。

そして、最後3つ目は引き金となる言霊。

どんな言葉でも良いのだが、自分が起こしたい現象に1番当てはまる言葉を声に出して言うことで魔法が発動する。


この3つの要素を満たせれば魔法を使うことができる。

たったこれだけのことなので、ほぼ全ての人が、子供だって使えるのだが……



私は魔法が使えない。



3つ目の要素の言霊を満たさないのだ。

声を出すことができないから……。


それが私の最大の弱点であり、他人に絶対に知られてはいけない弱味である。

魔法を使えないと知られると戦いの際には不利になるどころか勝負にすらならないこともあるだろう。

剣術を得意とする冒険者や盗賊であっても多少の魔法を使うことができる。

どこで魔法を使ってくるのか警戒しながら戦うのではなく、自分だけが魔法を使えて相手は警戒しなくてもいいのでは行動の選択肢が大きく広がる。

私がエルザに腹話術をしてもらって話しているように見せているのはそのことに気づかれないようにする理由もある。



……とにかく、この状況には助かった。



ウィルが無謀にもキース魔法対無効化魔法の勝負を挑んだのだ。


私達は再び街外で森の手前であるこの場所に訪れた。

ここは私とウィルの決闘の場所でもある。

関係ない人達に危険が及んだり迷惑になったりもせず、魔獣や魔物に襲われる心配ので丁度良い場所だ。

しかし、ウィルの凄まじい諦めの悪さには脱帽する。

相手がSランクと分かっていながらも挑戦するとは。

彼は口が悪かったり尊大な態度を取っていることが多いが、弱者のみにそのように接しているわけではなく誰に対しても同じように態度を崩さないところには好感が持てる。

そして、そのウィルの性格にエルザは困らされていたけど今回はそれに助けられてとても感謝している。

本人には色んな意味で言えないけど。


「はっはっはー!俺の魔法は何人の手にも消すことは出来ない。貴様が例え無効化魔法が使えたとしても俺の前では無意味だと言うことを証明してやる!覚悟しろ!!」


「あー、うん。じゃあ始めようか。」


ウィルはいつもの調子で雄叫びをあげる。

それに対してキースは冷静というよりはただ淡々と日常の一コマを過ごすような感じで応える。


………。

なんというか、はたから見てるととても恥ずかしい。

前回はウィルとエルザで叫んでいたからそんなに気にならなかったのかも知れないけど、今は2人の温度差がありありと感じられて。

そんな雰囲気にも気づかないのか、それとも気づいていても動じない鋼の心を持っているのか、ウィルは次の行動に出る。



「よし。覚悟はいいか。……いくぞ!!《ウォーターボール》!!」


ウィルはキースが頷いたのを見ると言霊を叫んだ。

すると、上空に直径5メートルはあるのではないかというような巨大な水の玉が現れた。


「すごい……。」


隣でエルザが思わず呟いた。

私もあれほど大きな水魔法は見たことがない。

莫大な魔力を使っているだろうあの水の玉はウィルの魔力の保有量の高さも示している。


でも、あんな攻撃魔法をまともに受けたらただでは済まないんじゃないの?

水といえどもあのような量に押しつぶされては圧死してしまうんじゃ……

はっ、とそのことに気づいた時にはもう水の玉はキースの目の前まで来ていた。


そして、息を呑んだ次の瞬間……


そこには余裕な表情で笑うキースだけが立っていた。

周りに水の跡も何もなく本当は今まで見ていたものが目の錯覚だったのではないかと思えてくる。

だが、口を開けて唖然とした姿でいるウィルに向かってキースが一言


「君もなかなかやるねえ。」


と言ったことで勝負が決したことが分かった。




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