表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/104

1

 


「俺はお前みたいなクソデブとは絶対に結婚しないからな!」


 そう言い放つはこの国の第三王子ウィリアム様。

 私は彼の多数いる婚約者候補の1人だった。


 “好きです。”


 お慕いしている彼に溢れる気持ちを抑えきれずに伝えた言葉は間違っていたようだ。

 心無い言葉に傷ついている私に彼はさらに追い討ちをかけた。


「俺がお前に親切にしてやったのはレイラのためだ。そうじゃなかったら誰かお前なんかに構ってやるものか。勘違いするな。迷惑だ。」




 …ああ。

 貴方もそうだったんですね。


 レイラは私の実の姉で本当に可愛らしい。

 どこに行っても振り返らない者はいなく、誰もが彼女のことを好きになる。

 私とは比べものにならないくらい…それは、両親も例外ではなく。

 表面的には平等に接してくれていると思うけれども、愛情という面では差があり過ぎる。


 そんな愛情に飢えていた私に親身にしてくれた彼を特別な人と思ってしまったのだけれど…








 どうやって帰ってきたのかわからないが王宮にいた私は気付いたら自宅の自室にいた。

 呆然としている間になんとか帰ることができたようだ。


 ふと、ドレッサーが目に入る。

 身支度はほぼ使用人に任せているためあまり使わないそこに座ってみた。

 鏡にかかっているほこりよけの布を取ると、目の前に一人の少女が映し出される。

 ドレスによって多少は補正されているものの、はっきりと分かるずんぐりとした体型。

 頭と胴体をつなぐ首は顎との境目が明確でない。

 顔には肉がつき過ぎ、そのせいで目は埋もれて細く小さくなってしまっている。


 …これが私なんだ。


 改めて自分を見て、なぜ愛されていると思ってしまったのか疑問が湧いてくる。

 こんな私を好きになってもらえるなんて思っていたなんてとんだ思い上がりだ。

 それに、彼を想うことで迷惑をかけていたなんて…

 姉のおまけの私は誰にも迷惑をかけずに生きることが義務なのに。



 …自決しよう。



 溜まっていたものが溢れるように、そんな考えが浮かんできた。

 そうだ、この世にはなんの未練もない。

 私がいなくなっても世界は不都合なく、むしろ今までよりも良く回っていくだろうし。

 そして、せめて最後は誰にも迷惑をかけずにひっそりと死にたい。



 私は“探さないでください”と書置きを残し、死に場所を目指して屋敷を後にした。







 ーーーーーこのとき、彼女、エリザベートは齢7歳。幼く、聡明過ぎるがゆえに愛情に飢えたこの少女はこのような結論を導き出してしまった。













評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ