塔への侵入
第2話です。
サクサク進まないですねなかなか。
『アッシュ殿、陛下より小包が届いております』
『そうか、そこの机に置いておいてくれ』
『失礼します』
王国一の魔導師、アッシュは昔のことに想いを馳せていた。
普通、魔導師の平均寿命は50歳だ。
人間は生命を維持するために食事をとったりするが、
魔導師は体内の魔素と呼ばれる物質を使用して生命を維持している。
そのため、食事をとる必要はないし、呼吸さえも必要ない。
(それでは生きる楽しみが減るため、大半の魔導師は常人と同じ生活をしている)
体内の魔素の量は生まれつき決まっているため、当然魔法を使えば寿命は縮む。
天災をもたらすほどの大魔法ならば、使用した瞬間に死ぬ。
どれだけ長寿になるかは本人の魔力内包量によるのだ。
だが、アッシュは違う。
魔法が誕生する以前から生きている唯一の人間である。
魔法が誕生したのはおよそ400年前。
何歳かは決して言わないので本当かどうか怪しいところだが、
歴代の王全てを支えてきた記録があるので嘘ではない。
なぜそんなに長寿なのか?
それは並の魔導師を遥かに凌駕する圧倒的な魔力があるから。
ただそれだけだ。
幾ら長生きできたって、常人は自分に付いてこれない。
絶対に好きになった相手が先に死んでしまう。
唯一無二の親友も。
愛すべき両親も。
将来を誓ったはずの相手も。
力を呪ったこともある。
だけれど人に感謝されるのは悪くない。
一人で全てできればいい。誰の力も借りずに…
はぁ…
陛下は一体何を考えているんだ…
塔は一向に攻略の気配もなし、
一方犠牲者は増えるばかり。
その遺族に渡す金も税金の無駄遣いだろう。
国民は不満があって当然。
そしてついに僕をこんなくだらないことに使うとは。
使うなら最初の犠牲者が出た時点で僕を使えばいいじゃないか。
まぁ褒賞は高くつくらしいし、行って損はないだろう。
…
……
そして1週間後
アッシュは塔に入る事となった。
『それでは、武運を祈っております』
『では、出陣だ!!』
アッシュと部下20人は塔へと入っていった。
塔の内部は何の色気もない石壁の廊下が延々と伸びている。
罠魔法も幾つかあったのだがアッシュの使う防壁魔法をもってすれば避ける必要さえない。
ここで魔法の詳細を確認しよう。
この世界には7種類の魔力の質がある
火、水、風、力、治癒、毒、特異。
火、水、風が最もありふれた魔力であって、
治癒、毒、力はその次に珍しい。
特異は他の何にも属さない魔法の事を指す。
火(炎や、赤く輝いて見える魔法)
水(水や氷、青く輝いて見える魔法)
風(風や植物などを操る魔法)
力(物理的衝撃を使った魔法)
治癒(治癒力の向上や、傷の瞬間回復など)
毒(生命を侵す魔法)
特異(上記のどれにも属さない魔法。基本的に殆どの魔力を持つ)
ちなみにアッシュは『特異』だ。
重力を操ったり使い魔を召喚する事も出来る。
多大な魔力を使用するが、アッシュからすればどうでもいいほどの魔力だ。
だが、それにしても罠魔法が弱すぎる。
こんなもので熟練の兵士や魔導師がやられるはずはないのだが…