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序章一節

 細い月に照らされながら、ぼんやりとした影が走っていた。

 闇にまぎれた影は五つ。たまにきらきらと何かがかすかな月明かりを反射している。


 荷物を抱えているため、少しいびつな形をしているが、二本足で駆け抜けるそれはどう見ても人間だった。

 月明かりを反射しているのは、抜き身の刃と返り血だ。

 五人とも闇に溶け込みやすくするためか、はたまた返り血を目立ちにくくするためか黒い服を纏っている。服から覗く白い肌には、赤い液体を適当にぬぐった跡がはっきりと見て取れた。


「やったね、アニキ。これで村の人たちも生き延びられるよ」


 短めの槍を持った小柄な影が息を切らせながら言った。


「武家の奴を殺して奪うってのは、あまりいい気がしないがな」


 そう言った長剣を持つ影は、息を切らせながらも声を漏らして苦笑した。


「てめぇら、息を切らすくれぇならしゃべんな」


 そんな二人に、斧を背負った一番大きな影が低くすごむ。先頭を走る彼が、この集団の(かしら)らしい。


「わりぃ、アニキ」


 長剣の方が短く謝罪の言葉を口にした。短槍の方は何も言わないが、軽く頭を下げている。

 血を浴びた彼らの姿も、会話の内容も普通ではなかったが、ある程度の規律を持った集団のようだ。


 五つの影が、闇の濃いところを選んで駆け抜けていく。

 先頭には、斧を背負った盗賊の頭。その後ろにかたまって他の四人が続く。

 足音をしのばせ、辺りの気配を探るのも怠らない。

 起伏のある地面にはほとんど季節がひとめぐりしようとしているにもかかわらず、腐らずに残った落ち葉が敷き詰められている。彼らに暗闇を提供する木々も、盛りは過ぎつつあった。


 乾いた落ち葉を踏みつけているにもかかわらず、その足音はとても小さい。誰かに見つかることを避けるためだ。

 こんな山の中にも集落はある。夜に出歩く者がいる可能性はかなり低いが、用心に越したことはない。


 そう思った矢先、先頭を走る頭の視界の隅に、何かが入った。

 はっとして足を緩めながら、そちらをうかがう。その手は静かに背負った斧へとのびていた。


「火か……」


 頭が小さくつぶやいた。その足はすでに止まっている。

 急停止にいぶかしんだ残る人影も、そろって彼の視線を追った。

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