第一戦
桜の散る通学路を歩く三人がいた。
男二人の女一人の三人組だ。
男の一人は眼鏡を掛けている黒髪で細身の男だ。
もう一人の男は背が少し高い金髪の男で、ニヤニヤしている。
女の方は明るめの茶髪で髪を後ろで一つに束ねている。ポニーテールというやつだ。
三人は真新しい制服を着て桜を踏み分けて歩いていく。
「今日からまた学校か、ダルいことこの上無いな。」
「そないなこと言うなや。聞いてるこっちまで嫌になるわ。」
「えー、空も大地も、もっと楽しく行こうよ!これから高校生だよ!女子高生だよ!。」
「俺は男だ。」
「ワイもな。」
女がふてくされたように頬を膨らませている。ポニーテールもピンと伸びて怒ってるようだ。
「もう、分かってるよバカ。それより、どう?この制服。白銀学園の制服は可愛いって女の子に人気なんだよ!」
そう言いながら女が一回転する。
髪も回る体と一緒に円を描く、スカートからもふわりと音がしそうだ。
(可愛いな。優実のすらりとした足とか、よく手入れされた髪と良くマッチングしている。)
と、そんなことを空が顔を少し赤くして考えていると先に大地が感想を言った。
「良く似合ってると思うで、特に……胸、に強烈な痛みが!」
「胸が無くて悪かったわね!」
見えなかった。大地が胸の「む」を言ったとほぼ同時に優実が大地を殴っていた。
「空の感想も聞きたいな♪」
大地が膝を着いて呼吸を整えている。
優実がこちらに歩いてくる。
笑顔だ。なんかものすごい笑顔だ。可愛いと思う。可愛い、かわいい、か……いや怖い、すごく怖い
「いや、可愛いと思うよ。すごく、うん、良く似合ってるよ!」
「本当に?嬉しい!」
良かった。大丈夫だ。
殴られたりはしない。
「うん!本当だよ。すらりとした……」
「え?今なんて?」
「だからすらりとした足が……」
「すらりとした胸で悪かったわよ!」
「そんなこと、思ってな……ぐふっ……」
そんな、ただ足を誉めようと思っただけなのに……。
「お前も大変やな。」
いつの間にか復活した大地が胸をさすりながらこちらの肩を叩いてくる。
お前と一緒にするなよ。とは口に出さない。
今日から高校生の三人は笑ったり、殴ったり殴られたりしながら学園へ向かっていった。