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勇者と姫のそれから  作者: べるこさん
第2章 地球編
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男の手からは 氷の弾丸が発射される。

魔法だと!?

咄嗟に避けたが 壁に当たった弾丸は その周囲を凍らせる。


「ハハハハ・・・・ど、ど、どうだ・・・・死にたくなかったら 俺に近づくな!」


「お前 そのジェネレーターはどうした?どこかの組織の者なのか?」


「ジェネレーター?組織?お前 訳の分からないこと言うな!兎に角 動くな・・・・・」


自分の付けているブレスレットが何をするものかも分かっていないようだ。


「そのブレスレットは どこで手に入れたんだ?」


「う、うるさい!黙れ!!」


半狂乱となった男は さらに魔法を発動し氷の弾丸を発射する。

この男から話を聞きだすには 力の差を分からす必要があるようだ。魔力を集中し 手のひらに結界を張り氷の弾丸を受け止め握る。握ったまま弾丸を結界の中に封じ込めた。


「ば、ばかな・・・・お前はいったい 何なんだ!!!!」


壁からナイフを引き抜き 顔をひきつらせ 後ずさる男にゆっくりと歩み寄る。何度か魔法を放つが そのことごとくを手のひらで 弾き飛ばす。


「く、来るな!」


叫ぶ声を無視し正面まで行き立ち止まり ナイフを持った手を振り上げ 振り下ろす。


ポトッ


男の手首を切り落とした。


「うわあああああああーーーー!!!!」


泣き叫ぶ男を一瞥し切り落とした手首から ブレスレット型のジェネレーターを回収する。あまりに うるさいので うずくまった男の腹を蹴り上げ意識を刈り取った。

さて、さすがにこのまま放置するのはまずいだろう。

まず 手首をなくした男に回復魔法をかけ 手首を再生させる。次に 便器に顔を突っ込んだ男たちにも回復魔法をかけ 骨折を治してやる。

最後に女を見るとうずくまり 震えている。この惨状を見て 意識を保っているとは 案外 女性の方が精神的にタフなのかもしれない。

近づき厳しい表情で見下ろすと

「ヒィッ」

小さく悲鳴を上げ 気絶した。惨状を見るのと直接 敵意を感じるのでは 全く違うのだろう。


彼らを放置し 掃除中の看板もそのままに トイレを後にした。正直 ちょっと やり過ぎたような気もするが 彼らは常習的にあんなことを しかも 魔法まで使って やっていたのだから自業自得だ。

だけど 魔法を使っていた奴の様子だと 恐らく アレティーアやWWAとは 関係ないようだが だとしたら どこでこれを手に入れたのだろうか?

しまった・・・・。

肝心な事を忘れていた。ジェネレーターについて尋問するつもりだったのに つい イラッとして気絶さして・・・・。でも 今更トイレに戻っても 騒ぎになってるだろうし。まあ 誰にでも簡単に作れる物ではないだろうし 取り敢えず 後日 出雲さんにでも報告して 渡しておけば良いだろう。場合によっては あの人なら お店の防犯カメラなんかの映像で 身元まで探り当てるだろう。

そうして 俺は マリアたち三人の元へと戻った。


「ナオキさん 遅かったですね。何かありましたか?」


「いや 別に?」


しかし マリアは じっと俺を見詰めた後 小さく溜息をつき ハンカチを手渡してきた。

手は洗ってきたし ちゃんと拭いたぞ?


「お顔に血がついています」


「えっ・・・」


慌てて 手渡れたハンカチで顔を拭く。見ると 純白のハンカチは薄っすらと赤く染まっていた。


「取れたかな?」


「はい・・・・。ナオキさん 何があったのですか?」


「いやぁ トイレに入ったら えっと なんて言えば分かりやすいかな・・・・強盗みたいなのにあったんだ。しかも 一人は 魔法まで使ってきたから ビックリしたよ」


マリアは 真剣な面持ちで、何か怒っている様にも見える。


「他に やりようはなかったのですか?ナオキさんなら 返り血を浴びるようなことをしなくても すんだのではありませんか?」


「うん・・・・だけど 常習犯だったみたいだし 魔法まで使ってきたし」


「ですが、それはナオキさんが 正さなければならなかった事なのでしょうか?」


「えっ?」


「ナオキさんは正しいことをしたと思います。ですが、この国には 優秀な警察や公平な裁判があると言っていたではありませんか。襲撃者達を警察に引き渡し 裁判で 公平な罰を与える、それが、この世界でのあるべき姿ではないのですか?」


「それは、そうだけど・・・・だけど 魔法まで使ってきたし・・・・」


「それでも ナオキさんなら 何とでもできたのではないかと申しております。

・・・・・

最近 ナオキさんは 力に溺れてはおりませんか?」


マリアの言葉に ハッ とする。まるで 冷水を頭から浴びせられたような気分だ。

だけど やらなきゃ やられていた。

俺だって 無防備にナイフで刺されれば 怪我もするし 場合によっては死ぬだろう。魔法に当たって氷漬けも勘弁してもらいたい。


力に溺れている。


確かにそうかもしれないが そうしなければ ならなかったのだ。それくらい マリアにだって・・・・。


「俺は・・・・俺だって・・・・」


「兎に角 お食事を続けませんか?ナオキ様も マリア様も 少し落ち着き よく考えてからお話ししても遅くはないも思います」


俺の言葉を遮り シオンさんが言った。シオンさんの冷静さにはいつも助けられる。確かに 頭を冷やす必要があるのかもしれないけど・・・・。


俺は 力に溺れているのか・・・・?




昼食後も買い物を続けたが 重い空気はそのままだった。サヤが一生懸命 場を和まそうと色々 話を振ってはくれていたのだが どうしても話が続かず 沈黙が長くなった。

サヤには ちゃんと 謝ってお礼を言わなければ。


家に戻り 俺は一人 部屋にいる。

マリアの言葉が 胸をチクチクと突き刺す。


力に溺れている・・・・


そうなのか?

・・・・いや、自覚はある。

ジェネレーターを持っていた あの男、魔法を使ってはいたが魔法使いではない事は なんとなく分かっていた。桜さんと同じように 使わされていたのだろうと。言ってみれば 一般人だ。俺はその男の手首を切り落とした。再生したからと言って いくらなんでもやり過ぎだろう・・・・。しかも 情報を聞き出すこともなく イラついた心のまま 蹴り上げ気絶させてしまった。他の男達もそうだ。骨を折るまでやる必要はなかっただろう。

だけど 彼らは 刃物を持ち出し 魔法まで使った。


やらなければ やられる


異世界はそう言う所だった。

戦いの中 情けをかければ死ぬのは自分だ。

もう 俺は不老不死ではないのだから。


不老不死?


あれ?異世界では俺は不老不死だった・・・・よな?

何故?


胸だけでなく 頭まで チクチクしてきた。


コンコン


その時 ドアがノックされた。


「ナオキさん よろしいですか?」


マリアの声だ。正直 まだマリアには会いたくなかった。自分の心が分からない。

・・・・・だけど


「どうぞ」


「失礼します」


マリアは部屋に入り ベッドに腰をかけ椅子に座っている俺と 向き合った。


「ナオキさん、先程は 言い過ぎました。申し訳ありませんでした。

ですが・・・・

・・・・・

私は 知っています。ナオキさんが お力を使いになるのは いつも人のためだと。今回も 常習犯だと判断し 今後の被害をなくすためにも 力をお使いになったのでしょ。それも 人のためだと思います。

しかし この世界には この世界のルールがあるはずです。ナオキさんの今回の行動は それに照らし合わせてどうなのでしょうか?」


「この世界のルールには 反している・・・・だけど やらなければ やられる。向こうの世界では そうだったよ。手を抜けば怪我をするのは自分であり 他の人も傷付くこともある」


「ですが ここは 地球 日本です。向こうの世界ではありません」


そう、ここは異世界じゃない、日本だ。でも 手を抜けば 情けをかければ 怪我をするのは自分だし あんな奴らを野放しにすれば 他の被害者も出るだろう。

だったら・・・・・


「だったら どうすれば良かったんだよ!」


声を荒げてしまった・・・・。マリアは俯き目には涙を溜めている。


「ごめん・・・・怒鳴るつもりはなかったんだ・・・・」


「私は よく覚えています。夕日が射し 茜色に染まった道すがら 向こうの世界のため 何かをしたいと仰ったこと みんなが 笑顔になるようにと オセロを紹介してくださったときのことを・・・・。私は 力に頼るでなく みんなのために 何かをしたいと言うのがナオキさんの本質だと思っています。ですが 今のように 力でねじ伏せ 言う事を聞かせるのであれば それは 魔王と同じではありませんか!」


「魔王と同じ・・・・・?魔王?・・・・・魔王・・・・」


力に頼るだけでは 魔王と変わらない。マリアの言う通りだ。

俺は魔王じゃない!

魔王なんかには ならない!

ずっと そう思ってきたんじゃない・・・・か・・・・?

ずっと?

なんで 俺が魔王になるんだ?


不意に 昔の記憶が蘇る。

近所の公園で 俺と遥が遊んでいる。

ん?もう一人いる。顔がハッキリとしない。

誰だ?

遥も俺も そのもう一人と仲良く楽しそうに遊んでいる。

誰だ?

もう少し 近づけば 顔が見えそうなのに。

誰だ?

でも 何で今こんな事を思い出したんだ?

魔王?

魔王?

魔王?

一緒に遊んでいるのは・・・・・

魔王?

そこで 俺の見ていたビジョンは一気に鮮明になる。

そうだ・・・・

俺たちは 魔王と遊んでいた。

いや 違う 魔王なんかじゃない。

あれは・・・・

あれは・・・・

ゆ・・・

・・・・・・う・・・・・


痛い!!!!!!!

頭が 割れそうだ!!!!!!!!!!

そこで 強烈な 頭痛が襲ってきた。


俺は 頭を押さえ 椅子から 転げ落ちる・・・・。


「ナオキさん! ナオキさん!?しっかり!!!! 大丈夫ですか?・・・・誰か・・・・・ナオキ・・・・さんが・・・・・」


そこで 俺の意識は プツリと 途絶えた。





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