092
「素晴らしいな・・・・」
出雲は 自身の手に握られた一本の剣を熱い眼差しで見蕩れている。
そして 彼の足元にはビルの建築にも使うような 大きな鉄骨が転がっていた。彼は 直輝に頼まれ家と交換した剣の試し切りをしていたのだ。実際 この剣は異世界においては安物と位置付けられている物なのだ。恐らく この安物の魔力剣で 鉄骨を切り落とす事ができる者は異世界にも数名しかいないだろう。即ち これを可能にしたのは出雲の人並み外れた剣技によるところが大きい。
地球上に存在するどのような剣でも 出雲は鉄骨を切り落とす事は不可能であり 異世界に存在するどのような剣士でも この安物の魔力剣で鉄骨を切り落とすのは不可能なのだ。
出雲だからこそ 不可能を可能にできたと言える。
「さすがに 普通の剣を振るうよりは はるかに疲れるな」
出雲は剣を鞘に収めると 副官の朝霧からタオルを受け取り汗を拭う。
「魔力を吸われている上に 一時間も剣を振り回していたら それは疲れますよ」
「一時間も・・・・これ程の切れ味の剣に 出会ったことなどなかったからな」
自分が子供のように時間も忘れ剣を振るっていたことに苦笑いを浮かべつつ もう一度 鞘から剣を抜き 刃や剣の状態を確認する。
「しかも 刃毀れ一つない。大した物だ。急ぎ 構造解析に送ってくれ。上手くすれば 例の計画が一気に進展するぞ」
「そうですね・・・・」
朝霧に剣を手渡し出雲は部屋を出ていった。
終始 ニヤニヤしていた母さんと 終始 膨れっ面のこまちから 自室に逃げ出した。
「買い物に 行こうか」
ちなみに シオンさんもサヤも既にこちらの世界の服を着ている。世界を移動する際 互いの世界に存在しない素材は 再現できない。だから 始めて世界を跨いだ際マリアは真っ裸になっていたのだが 顕現魔法はその制限がないことに気付いたので予め 衣服を準備し 持ち込んでいたのだ。
更に言えば 本当はその事を 忘れていた振りをしていたのだが マリアに指摘され渋々 準備した。せっかく 合法的に 皆の真っ裸を拝めるのに と思っていたことは Lv5クラスの 機密事項だ。
しかし いくら事前に準備していたとは言え 細かいサイズも分からず 色々 用意するのは危険なので 取り敢えずの物しかない。特に サイズが重要な下着などは・・・・。
「ナオキ様、お手数なのですが 私の荷物を出しては頂けないでしょうか?」
「構わないけど?」
シオンさんの頼みに 答えながら顕現魔法を発動し荷物を取り出す。少し大きめの旅行鞄くらいある 木製のケースだ。持っていきたい物を準備してと言ったら たったのこれだけだった。サヤは これの5倍以上はあった。女の子なんだから 当然なのだろうシオンさんの荷物が少なすぎるのだ。城住まいの侍女に与えられる部屋はとても狭いので 仕方はないのだろうが・・・・。
後に分かったことなのだが サヤの荷物も そのほとんどが 医学に関する本や道具で 身の回りの物は シオンさんと大差はなかった。
「大変 申し訳ございませんが その 外でお待ち頂けませんか?」
「いいけど?」
一旦 部屋の外に出て 10秒程だろうか すぐに呼ばれ戻ると・・・・。
「そ、それは・・・・」
目の前に居たのは 着替えを済ませ 凛とした面持ちのシオンさんだった。
「やはり これでないと 落ち着きません」
彼女は 侍女の制服、つまりはエプロンドレス つまりはメイド服に着替えていたのだった。
「いや、その服のシオンさんも好きなんだけど そ、それは・・・・それに どうやって着替えたの?10秒もかかってなかったけど」
「凄かったです」
マリアやサヤも感嘆の声をあげる中 シオンさんは澄ました顔で一言。
「侍女ですから」
緊急出動の消防士だって 着替えにはもう少し時間がかかるだろうに・・・・。
アキバや日本橋などに行けば メイド服の子が客引きをしてるようだけど
ん?
アキバは禁止になったのかな?
この辺でコスプレで歩いている子など見かけたことはない。ロリやゴスロリファッションの子はたまーーーーーに 見かけたりするけど・・・・。まあ そんなレベルだ。
ただでさえ マリアを連れて歩いているだけで 目立つのに メイド服のシオンさんまで連れて歩いたらと思うと 出発前から 胃が痛くなる。
でも 着替えてくれないだろうし・・・・。
覚悟するか。
「それじゃあ 行こうか」
軽く 溜息をつき出発する事にした。
「二人とも 覚悟してくださいよ!兎に角 凄いですから!!」
マリアは先輩風を吹かせて 意気揚揚だ。
二人は案の定 家を出て 町並みに驚き バスに乗るために大通りにでれば 車や電車に目を白黒させ
そして・・・・
「ナ、ナオキさん・・・・ド、ドラゴンが!!!」
サヤとシオンさんは体を寄せ 手を取り合い 少し震えながら空を指差した。その方向を念のため確認し
「もう そのネタは やったから」
「?」
不思議そうにしている二人にマリアは またも得意気に
「安心してください。あれはドラゴンではありません。飛行機と言う空を飛ぶ乗り物なんです」
ニヤリとしながらマリアを見ると また赤くなり俯いた。
「ナオキさんは意地悪です」
マリアの抗議に二人は何事と 問いかける。
「どうなさったのですか?」
「何でもないよ。さあ バスが来たよ。行こうか」
マリアの背中をポンッと叩いてバスに乗り込んだ。マリアが初めてバスに乗ったときのように 二人はキョロキョロと窓から流れる景色に目を奪われ マリアは 懸命に 説明をしている。からかってはいたが マリアは二人にも早くこの世界に慣れてもらおうと必死なのだろう。
しかし、マリアの若干 悦に入った様子を見ると ただ 知ったか しているだけのようにも・・・・。
ち、違うよね?
バスは 目的のショッピングモールに着いた。これまた、マリアの時と同じように 二人は高層マンションを見上げ固まっている。
「さあ、中に入るよ」
二人が マンションを見上げて動かないので周りの人も何かあったのかと 見上げ始めてきた。まずいと思い そそくさと モール内に逃げ込んだ。
「す、凄いです・・・・ここが全部 お店なのですか?」
シオンさんは 息を飲みモール内のお店に見いっている。そんなシオンさんをよそに 覚悟を決めあのお店に向かう。幸か不幸か あの時のお姉さんが店前に立っていた。
「あら?彼氏に マリアちゃんだったかしら?また、買いに来てくれたの?」
この場合 不幸なのだろう。今日はマリアも居るので 買い物は任せられる。となれば、できれば知った顔に会いたくはなかった。とは言え 会ったものは仕方がない。取り敢えず 返事をする。
「は、はい」
「ありがとう!ところで マリアちゃん 彼氏にはもう 脱がしてもらった?」
マリアさん!どうして 赤くなって俯いて モジモジしているのですか!ほら お姉さんがニヤニヤしながら 俺を見てるじゃないですか!完全に誤解してるじゃないですか!!!
「脱がしてませんから!!!」
強めに否定するとお姉さんはつまらなさそうに 目を逸らすが、今度は 後ろで控え目にしていた二人に気付き ニヤリとする。
「それじゃあ 後ろのコスプレちゃんと 綺麗なお姉さんのを脱がすのかな?」
シオンさんは コスプレちゃんらしい。まあ、間違いなく シオンさんのおかげで いつも以上に視線を集めている訳だけど・・・・。今日の用件を伝え話を進めようとすると お姉さんに遮られる。
「ちょっと待って!こう言うときの 言葉を思い出したわ。
えっと・・・・
今日はいつもと違う娘を連れているのね!」
「なッ!」
このお姉さんは 何をわざわざ言っているんだ!?ってか 俺をそんな安いキャラにしないでくれ・・・・それに ここには 冗談の通じない人もいるんだから!
ほら 女子三人が白い目で俺を見てるじゃないですか・・・・。話の流れで冗談だって 分かってくれても良いのに・・・・。
「ふふふふ 冗談よ!で、今日は?」
「・・・・・。
後ろの二人とマリアにも見繕ってもらって良いですか?」
「えっ?私は 今ある物で足りていますよ?」
「俺にはよく分からないけど女子的には 最低限では足りないんですよね?」
マリアの問いに 俺は視線をお姉さんに向けて 答えを求めた。
「そうね。彼氏もそう言ってるんだから 彼が脱がせたくて堪らなくなる様な物を選びましょうよ!!それに 二人も私に任せて!彼が どれを脱がすか迷うほど物をそれぞれ 選んであげるから!!!!」
お姉さん・・・・。握り拳を作って そんなに大きな声で 変なこと言わないでください・・・・。
みんな見てますから・・・・・・・・。




