009
「とりあえず、昼ごはんにするか?」
「そうですね」
腕を組んだまま ニコニコと 嬉しそうに答える。
「と言っても この世界に来た頃 世話になった 食堂だけどな。いいのか?」
「ナオキ様と一緒なら どこでも 構いません」
そんな会話をしながら 俺とマリアは城下町を散策していた。マリアは 相変わらず
腕にしがみつき 密着してくる。恥ずかしいので 離れて欲しいのだが
この状況では仕方がないと 諦める。噂どおり 町はすごい人の量で、
差し詰め 大きな神社の初詣くらいの人混みなのだ。
なんとか、行きつけの食堂にたどり着いた。昼ごはんにしては 少し遅い時間なのだが
それでも 店内は 満席に近い状態だった。
「オヤジさん 久しぶり。繁盛してるね」
「勇者様!ご無沙汰しています」
どうぞ、どうぞと 空いてる席に案内され、すぐできるものを お任せで
2人前注文した。オヤジさんは マリアのことを チラリと見て 小さく溜息をつく。
そして 厨房へ向かって 大きな声を出した。
「リリア」 「リリア!」
「何よ?中も忙しいんだから」
厨房から顔を出したのは オヤジさんの娘の リリアだった。
俺が軽く 手を振ると リリアは 引きつった笑みを浮かべながら
オヤジさんの襟元をつかみ 厨房へ引きずっていく。
「ちょっと、バカ親父 勇者様が来てるなら そう言ってよ!!」
怒鳴り声が聞こえてから数分 さっきと違うこぎれいな服を着たリリアが現れた。
「勇者様 お久しぶりです。お元気にしてましたか?」
「うん。なんとかやってるよ。それより何で、わざわざ着替えてきたの?」
「女性にその様なことを聞くもではありませんよ」
リリアの刺すような視線が怖い。
「はぁ・・・」
挨拶も終わり リリアは ナオキの前に座る女性に気が付く。
「勇者様 そ、そちらの方は?」
「えーと なんて言うか」
「私は ナオキ様の 公私とものパートナーです」
俺の言葉に被せるように 言ったマリアの言葉に リリアは持っていたお盆を落とす。
周囲からも どよめきや悲鳴が聞こえた。回り見てみると 勇者が来ているという噂を
聞きつけた近くのものたちが(8割が女性)店内や 店の窓から覗いていたのだ。
リリアは 涙目になって 厨房へ走っていってしまった。
厨房の中から 勇者様はマリア様と結婚するとか 後宮の侍女になって
側室の座を狙えとか オヤジさんの声が聞こえてきた。
オヤジさん 自分の娘に 何言ってるんですか・・・。
食事を終えた俺たちは そのまま少し町の様子を見て回ることにした。
「マリア あまり町の人をいじめちゃ ダメだよ」
「あの娘 ナオキ様に馴れ馴れしくするからですわ。それに 私 嘘は申してませんし。
それより 勇者様は とても おもてになって よろしいですわね」
「そ、そんなことないと思うけどなぁーー・・・」
あぁ 女の嫉妬って怖いです・・・。
この話を深く 突っ込むと ヤバそうなので 話題を変えるため
雑貨店が見えたので 入ることにした。店内には アクセサリーや生活雑貨などが置かれ
ている。その中に パステルカラーの色鮮やかなマグカップを見つけ
そこから 黄色 黄緑 ピンク 水色の4つを購入した。
店を出て すぐに、
「何を 買われたのですか?」
興味津々に聞いてきた。
「シオンさんたちに お土産。いつもお世話になってるからね」
「ナオキ様 先ほども 申しましたが 私でも嫉妬することくらいあるのですよ?」
マリアさん 食堂のことを見ても良くわかります。そして 目が怖いです。
「いや・・・マリアの分も 買ったんだけど・・・」
「えっ 本当ですか?では 今回は 不問に付します」
さっきまでの ジト目から一転 とても嬉しそうになる。
えーと 侍女と同列に扱って喜んでるマリアさんは大丈夫なんだろうか・・・。
嫌な汗をかきました。喉もからからです。
「そこの屋台で 何か 飲み物を買ってくるよ。待ってて」
道の脇に マリアを待たせ 屋台で飲み物を二つ買い 戻ると
マリアが 居なくなっていた。
一瞬 怒って帰ったのかとも 思ったが さすがに ないか。
名前を呼び 周囲を探したが 見つからない。
「ヤバッ」
俺の中に 少し 焦りが生まれる。いや、戻った時点で マリアが居なかった
ところから 相当 動揺してたのだろう。ビーコンを持たせているので
探知魔法を使えば すぐに見つけれたのだから。
今の俺の力があれば 世界の反対側にいたって 見つけることができる。
心を少し落ち着かせ 探知魔法を発動した。
「短時間で 思ったより 遠くに居るな。と考えると 連れ去られた可能性が高いか」
もう一度 大きく息を吸い込み 吐く。
「よしっ」
今度は 転移魔法を使い 反応のあった地点に 転移する。
そこは 狭い路地 目の前に屈強そうな男が3人。その内 1人が気を失っているであろう
マリアを抱えていた。
「俺の連れを 返してもらおうか」




