表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者と姫のそれから  作者: べるこさん
第2章 地球編
88/135

088

時は遡り 場所は異世界の大国 タラクシャ・・・・

ナオキとマリアが 世界を跨いだ日の翌日 シオンは 二人が旅立った事を聞かされた。その後 シオンは 彼女らしからぬミスを連発し 見かねたヨーヒムが 休暇を申し付けた。

ちなみに タラクシャ城内では 緘口令(かんこうれい)が敷かれ勇者と姫の事は 公にはされていない。

シオンは 休暇を利用し旅に出ることにした。目的地は モニリの町、そう サヤに会いに行ったのだ。

シオン サヤ そしてマリアは 身分を越え 友情で結ばれ 尚且つ同じ男を愛している。故に マリアは ナオキと結婚を望み 二人を側室に迎えようと密約まで交わしていたのに ナオキとマリアは 二人だけで 旅立ってしまった。


「マリア様のアホぉ~~~~ ヒック・・・・」


「姫様だけ抜け駆けして・・・・・ウップ・・・・」


シオンはモニリの町に着き その足で サヤの家に向かった。サヤに ナオキとマリアの事を話 その夜二人で遅く・・・・いや 朝方まで飲み明かした。

慣れない酒を 大量に飲んだ事により 次の日 二日酔いでまともに動けなかったのは言うまでもない。しかし、最後には 


「ナオキ様は 必ず 迎えに来てくれます」


「ナオキさんに 愛想を尽かされないように しっかりそれぞれの道を 極めていきましょう」


と、前を向くことに成功し シオンはサヤと固く握手を交わした後城へと戻っていった。

シオンが旅立ち 一週間もしないうちに 勇者と姫の話は 噂話となり瞬く間に世界中へと広がった。心配されていた勇者の加護がなくなることで起こるかもしれないタラクシャの物資を狙った略奪戦争も タラクシャ王が国が倒れるのではないかと思われるほどの 援助活動が功を奏し回避された。



それから二ヶ月ほどの月日が経ったある日・・・・

タラクシャ領内の とある漁村


「今年のワカシオは 長いな」

「今日で 1週間か・・・・漁ができなきゃ 食っていけないぞ」

「その昔 一ヶ月も続いた年もあるらしいが・・・・」


この世界の海は とても潮の流れが速い。魔法を使った 大型の船ですら潮に捕まると抜け出せなくなり最終的に沈没する。大陸間を移動するには その海流の間を縫い限られた海路を通るほかなく、タラクシャから他の大陸に向かう事はできない。

漁村でも 海流の位置に気を付けながら漁をしている。

しかし 一年に一度 ワカシオという時期があり 世界中の潮が止まる。止まっている期間は 毎年区々で早ければ数時間 記録に残っている物で一ヶ月も止まった事あるという。しかも 潮が流れ出すと 微妙にその位置が変わる事があり 潮が止まっている間に漁に出て 安全だった場所のはずが 潮の位置がずれ 潮に流されたと言う事故も少なくないため タラクシャではワカシオの期間は 漁を禁止しているのだ。


海を見ていた 数名の漁師が声を上げた。


「おい、ありゃ 何だ?」

「船か?」

「どんどん 増えていってないか?」

「お、おい・・・・あれはまさか!?」


「魔物!?」


最初 小さく見えたそれは 時間が経つにつれ 水平線を埋め尽くした。船に乗っている者 空を飛んでいる者 はたまた 泳いでいる者。

人の姿でないその異形の者たちは・・・・

海を埋め尽くすその大群は まさしく・・・・


「魔物だ!魔物の大群だ!!ま、魔王軍が攻めてきた!!!!!」


知らせは 漁村から近くの町へ そこから何人もの転移魔法の使い手を経由し 数時間後にはタラクシャ王城へと伝わっていた。


「それは、まことか!?」


王は狼狽する。それもそうだろう、既に魔王は倒されているのだ。それが 魔王軍と紛うことのない軍勢が攻めてきたのだから。


「しかし どうやって?」


「今はワカシオの時期です。潮が止まった海を渡ってきたようです」


「まさか、ワカシオを利用して・・・・」


いつ 動き出すか分からないワカシオを利用して海を渡るなど 普通は考えられない もし海を渡っている最中に潮が動き出せば 全滅の道しかない。それを強行したのだから誰もが 並々ならぬ意思を感じられずにはいられなかった。


「時に その漁村の民達は避難したのであろうな?」


「はい、最寄の町へ避難したようです」


「で、魔王軍の進行方向は?」


「真っ直ぐ この城を目指しているとの報告が・・・・」


辛そうに答えたのは 騎士団長マキシムだ。マキシムは 操心の玉で操られていたとは言え 重罪を犯した。自ら命を絶とうとしたが 罪は職責を全うする事で償うよう王に命じられたのだ。元より マキシムは タラクシャを 民を そして王のことを 深く思っている。そして そのことは 王も良く知っていたのだ。

その後 マキシムは それまでよりも職務に邁進し 更なる信頼を得る事となった。


「そうか・・・・では 城下の民は違う町へ避難させろ。病気や動けない者は城へ避難させ できる限りの国軍を呼び戻せ。国境警備や 各町の警備兵も全て 呼び寄せるのだ。それと ダリーンに使者を!援軍を頼むのだ」


「御意!」


「後どれくらいだ?」


「大軍の進行速度を考えれば 一週間くらいかと」


「・・・・・そうか。民の避難を優先させろ。城の物資もできる限り 民に持たせるのだ」


「ですが それでは 戦線を維持するのが難しくなります」


「戦線か・・・・一週間の猶予では こちらの軍勢は 対抗できるほど集まらないだろう・・・・

しかし!民が避難するための時間だけは 稼がねばならん。よいな?」


「・・・・・御意」


マキシムは 王の言葉の裏の意味を正確に理解していた。王は 兵達に死ねと命じたのだ。命を懸けて 時間を稼げと・・・・・。王が 心の中で血の涙を流し そのことを表に出さないでいる事も 理解していた。だからこそ マキシムは決意する。命に代えても民を守るのだと。


シオンが愛用のダガーを手入れしていると 突然サヤが訪問してきた。


「サ、サヤさん!?どうして 城に?」


「私は医者ですよ。この戦いで傷付くであろう人を助けるために来ました。シオンさんも戦場に出るおつもりなのでしょ?」


サヤはシオンの手元に握られている 手入れの行き届いた刃物をみて言った。


「ここで、逃げ出せばあの方に合わせる顔がありませんから」


「そうですね」


二人は顔を見合わせ笑い合う。お互いに ここで逃げ出しても ナオキもマリアも二人を責めたりしない 寧ろ何故逃げなかったのかと返って怒られるだろうと分かっていた。だが、二人は逃げ出す事などできなかった。愛する者が 帰ってくる場所を失いたくはなかったから・・・・。


シオンとサヤは 再会を約束し別れそれぞれの持ち場へと向かう。シオンは その途中今度はヨーヒムと出会った。


「シオン お前も行くのか?」


「はい」


「止めはせんが 少し付き合いなさい」


連れてこられたのは ヨーヒムの執務室だ。


「シオン これを使いなさい」


執務机の上に置かれたケースを開けると 防具一式が入っている。


「私の家系は代々文官なので大した武具はないのだが、これは我が家の家宝といっても良い品だ。それにお前の戦い方にもあっているだろう」


ケースから中身を出すと 篭手や脛当て肘当てその他にも急所を守るものなど一式が入っていた。ヨーヒムの言うように シオンは身軽な動きで敵の攻撃をかわし隙を突いて敵にダメージを与えていく戦い方をする。重い鎧などの防具だと寧ろシオンの長所である素早さを殺すことになる。ヨーヒムの渡そうとしている防具は 防御力こそ鎧には負けるが軽さと 動きの邪魔にならない点でシオン向けの物だと言える。


「この防具には 効果は小さいが それぞれのパーツに 体力回復や魔力の回復 敵からの視認阻害など様々な魔法効果が持たせてある」


「ヨーヒム様、この様に高価な物 私などには勿体無いです」


この防具は 旅人などがする程度の簡易的な物ではあるが 魔法効果を持たせているとなれば話は違う。しかも それぞれのパーツに違った効果が持たせているとなると この一式だけで 貴族の屋敷が買えるほどの価値になるだろう。それを 惜しげもなくシオンに使わせようとしている。


「良いのだ。眠らせていても仕方のないのだからな。寧ろ国の一大事に使わずしていつ使うのだ」


「ですが 使うにしても もっと相応しい人が」


「・・・・・・。

そうだな・・・・・・。

・・・・・・・・。

職務とは言え お前には色々辛い思いをさせた。

だがな・・・・

私は お前に死んで欲しくないのだ。幼少の頃に拾い育ててきた。いわば お前は私の娘も同然・・・・。

死ぬな!生きて帰ってくるのだ。あのお方は 必ずお前を迎えに来る」


「ヨーヒム様・・・・・」


ヨーヒムの真の姿を知り シオンは涙をとめる事ができなかった。



城の外 タラクシャ軍は 城壁に沿って布陣している。その数 約1万・・・・と言えば聞こえは良いが そうの内訳のほとんどが 町の警備兵や 国民からの義勇兵だ。国軍のほとんどが 物資輸送やその護衛の任に就き 国内外へ散らばっているのだ。現代のような通信手段もないため 輸送途中の部隊に対し連絡の方法もなく 国の窮地を知る術がないのだ。部隊がどこかの町に着き そこでようなく事態を知り タラクシャ城に戻るがその時点では かなりの時間が経っていることになる。

それでもいくつかの部隊は 決戦に間に合い戻る事に成功したが 敵の数からすれば焼け石に水。


魔王軍の総数は5万を超えると言う報告もある。

魔物は1体でも 人間の力を大きく超える物がほとんど、それが5倍の数 しかもタラクシャ軍は 寄せ集めの烏合の衆・・・・戦う前から結果は明らかだった。

それでも 人間たちは 必死に抗おうとしている・・・・自分達の住む世界を守るために・・・・。



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ