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勇者と姫のそれから  作者: べるこさん
第2章 地球編
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アラート音を聞きながら 響が呟いた。


「まだだ・・・・まだ、終わらない・・・・終わらせない!」


しゃがんだまま 操作パネルの幾つかのボタンを押すと 狂ったように笑いだす。


「はは、ハハハ、ハハハハハハ!これで、勝ちだ。これで、俺の勝ちだ!俺が、最強なんだ!!!!」


「この期に及んで、何をしたんだ?」


「もう、遅い。もう、誰にも止められない!広域殲滅魔法 ハルマゲドンは起動した!」


なんだ、そんなことか。しかし ハルマゲドンとは また、大層な名前だ。

最終戦争、世界の終末 そんな感じの言葉だっけ?感じる魔力や術式からすると 破壊力は 名前に見劣りするものでは なさそうだけど・・・・。

だけど もう、地球の魔法を 見下したり 侮ったりはしない。俺の傲慢さが 踊子さんや遥を苦しめたのだから。

だが、今は 取り敢えず 響は放置し 遥に声をかける。


「大丈夫か?」


「ええ」


遥は平気そうだ。今度は床に貼り付いたままの踊子さんの横まで行き 術式無効の魔法を行使する。

術式無効とは 簡単に言えば 術式に 落書きする感じで 発動中の魔法の術式に対し無理矢理に別の術式を組み込み意味のなさない術式に書き換えるものだ。但し それには発動中の魔法より強い魔力が必要となるが 俺にとっては児戯に等しい。


「踊子さん 大丈夫?」


「大丈夫だ。直輝君、すまない。私は何の役にもたたなかった・・・・。魔法が発動してしまった。もう 民間人の避難も間に合わない。どうすれば・・・・」


「うん。まあ、なんとかなるよ」


安心してもらうために 明るく楽観的な言葉をかけるが 効果はなかった。彼女は俯き 体を震わせ涙を浮かべている。

俺は 彼女の体を強く抱き締め 耳元で囁く。


「俺に任せてよ。俺は勇者なんだから」


「・・・・直輝君」


顔を上げた踊子さんは 小さく微笑んでくれた。

よし!後はマリアを。

今度は マリアを閉じ込めているカプセルの前に移動し 剣を抜く。魔力を通し 剣を振るうとカプセルは 音もなく 割れ崩れていく。

マリアに駆け寄り 体を抱き起こす。


「マリア、マリア しっかりしろ!」


体を数度 揺すり声をかけると マリアは目を開いた。


「マリア、平気か?ごめん、迎えに来るのが遅くなった」


「来てくださると信じていました。体のほうは 少し頭痛がするのと 軽く倦怠感があるくらいです。それより!遥さんが!」


「遥も無事だよ」


言いながら マリアの視線を促すように 遥を見る。マリアは安堵の笑みを浮かべた。魔力の枯渇による 頭痛 倦怠感なのだろうが これだけしっかり受け答えできるなら 完全に枯渇したわけでもないようだ。

それならば 平気だろう。


「さて、それじゃあ 外を片付けに行こうか」


俺 マリア、遥に踊子さん 4人で集まる。表情は 三人それぞれだ。遥は あからさまに 不安そうにし 踊子さんは 俺の言葉を信じたいが 信じられない 微妙な感じで マリアは ニコニコと笑顔だ。

そして、響は「俺が最強だ」と、ブツブツ呟き 時折 高笑いしている。若干、壊れ気味だ。


さて、


「行くよ」


声をかけ 響も含め ここに居る 全員をこのビルの屋上へと転移した。

マリア以外の全員が 何が起こったかとキョロキョロしている。最初に 声を上げたのは 響だった。


「これは お前が?」


「ああ、転移した」


響は空を見上げ 勝ち誇ったように言う。


「どうだ?もう 俺にだって止めれない。これで、俺の勝ちだな!」


この場に居る全員が、空を仰ぐ。ハルマゲドンとは よくいったものだ。空中に 7つの隕石 いや、五芒星の陣で強化されたそれは もはや天体と言ってよい大きさとなっている。その7つの天体はゆっくりと だが、確実に地表へと向かっている。

こんなものが落ちてくれば この町どころか 日本の半分くらいが 海に沈むことになるだろう。


「そ、そうだ!直輝君 先ほど 私の拘束をといたあの魔法は 魔法を無効化するものだろ?あの魔法で!」


「あれね、あれじゃあ無理だ」


よい方法を思い付いたと 喜ぶが 一瞬で打ち砕かれて 項垂れる踊子さん。


「やはり 規模が大きすぎるのか・・・・」


「規模の問題じゃないよ」


「どういうことだ?」


「えっと、例えば 水道から水を出すってのが 魔法だとしたら あの魔法でできるのは 蛇口を捻って水を止めることだけなんだ。バケツに溜まった水までは消せないんだ。魔法の部分を消すことによって 威力はかなり押さえられるだろうけど あの物体が衝突することによる被害までは・・・・」


「そうか」


「さて、では俺は失礼させてもらうよ。俺はこんなところで死んでよい人間ではないのでな」


「駄目 お前もここで見てるの!」


指を鳴らすと 潰されたゴキブリのように地面にへばりつく。お返しとばかりに響が使った 重力操作を使ったのだ。


もう一度 迫ってくる 7つの天体に目を向ける。物理的に破壊すれば 結局 破片などで被害が出るだろう。

ならば!


「響、よく見ておけよ。本物の魔法ってやつを 見せてやるよ!」


意識と魔力を集中する。すると 周囲が いや、日本中 世界中が光の粒子で溢れかえり 屋上に居る皆が 眩しさに 目を細める。世界中に広がった光の粒子は 再度 集まり凝縮され俺の遥か頭上で、巨大な7つの光の玉となった。まるで、7つの太陽が現れたかのようだ。


「行くよ!」


声をかけ 皆を見る。愛する少女達に対し 少々失礼な物言いだが、口を開いたまま 呆然と空を仰ぐ姿は 間抜けな感じがする・・・・。

苦笑いを浮かべつつ指を鳴らすと 7つの太陽は 7本の光の筋となり 落ちてこようとする天体を呑み込む。

呑み込まれた7つの天体は 一瞬で、蒸発し7本の光の筋は空の彼方へ消えていった。


静寂が、周囲を支配する。先程 以上にあんぐりと 口を開き 呆然とする少女達、重力操作を解いてやった響も 膨大な魔力にあてられ 解放されたにも関わらず 腰が抜け立ち上がることもできず 四つん這いでプルプルと震えている姿は 小鹿のようだ。

いち早く 立ち直ったのは マリアだ。


「ナオキさん・・・・今のは?」


「こっちで、覚えた魔法だよ。すごいだろう!」


「え、ええ。さすがに 驚きました」


マリアは まあ、いいだろう。俺のことを知っているのだから。

今は 遥と踊子さんだな・・・・。


「後で 全部 話すから 今は何も聞かないで」


色々と聞きたそうにしている二人を制し声をかける・・・・が、

改めて 遥を見ると下着姿のままで 何とも艶かしい。目のやり場に困る。


「直輝、なに見ているの?ちょっと こっちに来なさい!」


遥を見ないように それでいて下着姿を脳内メモリーに焼き付けようと チラチラと見る。

遥の目の前まで行き、一発 殴られるのかと 身を固くするが 両手で頭を抱えられ 顔を豊かな胸に埋められる。

や、柔らかい・・・・。


「直輝、ゴメンね。それから助けてくれてありがとう。私 今回のことで 何が誰が一番 大事なのか 分かったわ。自分の命をかけてまで 助けたいなんてね・・・・。

これからも 私が直輝を助けてあげるからね!

でも それとこれとは 別問題だから」


胸から俺の顔を引き離すと

パシー!

平手打ちされました。


「何をジロジロ見てるの!」


「はい、すみませんでした・・・・」


男のチラ見は 女のガン見だと再認識しつつも下着姿と胸の感触はしっかりと 脳内メモリーに記憶させた。


気がつけば 今回の元凶が コソコソとしている。


「で、踊子さん。そこで這いつくばったまま逃げようとしているやつは どうするよ?」


歩き そばまで行って 背中を踏みつける。

踏みつけられた響は顔だけ こちらに向けると 畏怖に支配された表情で見詰めてくる。


「今の力、まさかお前が魔王だと言うのか!?」


「違う。俺は勇者だ!」





その後 俺たちは 転移魔法で学校に戻り 響は どこかに 連れていかれた。尋問なり 幽閉なり されるのだろう。マリアを連れ去り遥を泣かした罪で手首一本とは軽すぎる気もするが 二人にはやりすぎだと怒られた。二人が納得しているのなら これで良いのかな?


今回の顛末

踊子さんは 隕石やら 光の筋やらで、町がパニックになっていると思っていたらしいが 実は 俺が視認阻害の魔法を行使していたため 一般人には 何も見えてはいなかったし魔法使いでも 目を凝らしてようやく見えると言った感じだった。但し 世界中に広がった光の粒子については 誤魔化しようがないが 誰も魔法など信じてはいないので 解明できない自然現象として説明されることになるらしい。




そして、今 俺は 出雲さん 踊子さん 遥とマリアと共に 生徒会長室に居る。

出雲さんが代表して 皆の聞きたいことを端的に聞いてきた。


「君は何者なのだ?マリアさんでなく君が魔王なのか?」


「俺は 魔王ではなく 勇者ですよ」


「この場に おふざけは必要ないのだかな」


「ナオキ様は本当に 勇者様なのです」


俺を弁護してくれたのはマリアだった。それでも 俺とマリア以外の三人は 納得のいかない顔をする。マリアを見ると 彼女は頷いてくれた。信じてもらえるかどうかは分からないが 全てを話すべきなのだろう。


「ゴールデンウィークの登校日の帰りに 異世界に勇者として召喚されたんです。そこから三年の月日をかけ魔王を倒しました。その後 色々とあったのですが こっちに戻って来ることができて 戻ってきたのは ゴールデンウィーク初日の朝でした」


「それを信じろと?」


出雲さんは険しい表情で言うが これが真実なのだから仕方がない。


「そうです 信じてもらうしか・・・・。ちなみにマリアは異世界の国の姫様です。俺の使っている魔法や体術 剣技も向こうで習ったものです」


「私も俄には信じられませんが でも確かに ゴールデンウィーク前と後では雰囲気が 全く変わっていたのは事実です。それに直輝が嘘をついているかどうかは 私 すぐに分かります。直輝は今の話で嘘はついていません!」


次に弁護してくれたのは遥だった。


「ウム。遥さんの言う通り 確かにゴールデンウィーク前と後では 直輝君の雰囲気は違っていたな。しかし どうして 嘘をついていないと 断言できるんだ?」


踊子さんは 感情論では兄は納得しないだろうと遥の自信の理由を聞き直した。


「簡単ですよ。直輝が嘘をつくとき ある癖が出るんです。だけど 今はそれが出なかったので 嘘はついていません」


「さすがは、幼馴染みだ。ところで、遥さん その癖とやらを私にも教えてはくれないだろうか?」


「あっ 私も知りたいです!」


「いいですよ。でも 後でこっそり教えますね」


踊子さんは 納得したように何度も頷き マリアは 嬉しそうにしている。段々 俺への包囲網が完成されつつあるようだ。

って言うか そんな癖があったとは・・・・。


そんな調子で騒いでいる女性人を見ながら ふっ と何かが心をよぎる。

何だろう?忘れちゃいけないことを 忘れているような・・・・?

考えれば 考えるほど 遠くに行ってしまうような・・・・


「ナオキさん?」


不意にマリアに呼ばれ 思考は途切れ 無意識の領域へと沈んでいく。

忘れてしまった事があることを 忘れてしまうほどに・・・・。


出雲さんは 答えを保留した。突然 この世界に現れたマリア、俺の規格外の魔力と魔法 それだけでは 異世界に行っていたと納得できるだけの証拠にはならないらしい。だが、嘘をついているとも 思えない、俺の癖 以前に 嘘をつくなら もっとマシな嘘をつくだろうと・・・・。




「と言うのが 今回の顛末になります」


出雲は 一人 小さな部屋の大きなモニターに映し出された 病的にまで白い肌を持ち まるで、人形のような少女に対して アレティーアや響、そして直輝について 彼女に報告した。


「異世界ですか・・・・あなたは どう思いますか?」


「納得できるほどの証拠はありませんが 否定しきれるだけの根拠もありません。正直なところ判断しかねています」


「貴方ほどの者がわからないと・・・・面白いですね。一度 会ってみたいものです」


「メアリー様?」


「ウフフフフ・・・・」


メアリーは人形のように表情を変えないまま 笑って見せ 通信を終了した。


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