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勇者と姫のそれから  作者: べるこさん
第2章 地球編
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085

踊子さんの刀を片手に ゆっくりとアレティーアの魔術師達に近づいて行く。あまりにも 平然と悠然と近づく俺に 一瞬ひるむもすぐに 気持ちを建て直し 魔法を撃ってきた。魔力量もこの世界の人間にしては大きいが それでも向こうの世界の一般人程度、その程度の魔力と 短い詠唱から得られる魔法では 大きな攻撃はできない。もし 俺が一般人やジェネレーターに頼る魔法使いならば それでよかったのだろうが・・・・。

撃ち込まれた来た 火の玉や 氷や水の玉を多少強引ではあるが 踊子さんの日本刀に僅かに魔力を通し切り捨てていく。

一般人と思っている人間が たかが刀で 魔法の攻撃を無力化する姿に 今度こそアレティーアの魔術師達は大きく動揺し 数歩 後ずさるほど怯んだ。

彼らは魔法に絶対の自信を持ち 魔法が全てなのだろう。体術の類には心得がないようで、目の前で 刀を振るい 為す術もなく意識を刈り取られていった。


「ありがとう」


謝辞の言葉と共に刀を踊子さんへ返した。


「いつ刀を抜き取られたのかも分からなかったよ。しかも 刀で魔法を切るとは・・・・まったく直輝君 君は一体 何者なのだ?・・・・いや 勇者だったか・・・・。『勇者』を どう言う意味で言ったかは分からないが 確かにその力は 勇者という言葉に 負けない物があるな」


「褒められてるんだよね?その刀は 魔力を通すように作られていないから 切れ味も強度もそこまで強化はされてないけどね。その分 俺の腕でカバーしたってことかな?」


踊子さんの視線は鋭さを増す。


「ほー、魔力を通す用に作られた か・・・・そのような物は見たことも聞いたこともないな。直輝君は それをどこで手にしたのかな?」


しまった!

口が滑った!


向こうの世界では 魔力を通す刃物は一般的な物だった。普通の家庭で包丁として使うこともあったし 料理人などは 切れ味と 砥の手間とコストから魔力を通す刃物を使うことが多かった。だが、ここでは違う。


「いやー なんのことかなぁ~」


「・・・・・まあ、いい。だがな これだけは言わせてくれ。私は 直輝君に 何でも打ち明けてもらえる存在になりたいと 願っているのだ」


「踊子さん?」


「と、兎に角だ!直輝君も今はそれどころではないのだろ?」


真っ赤になり 横を向いてしまった踊子さんを見てか彼女の魅力に惹かれつつある自分を自覚していた。

とは言え 今は踊子さんの言う通り それどころではない。ここに来て マリアの魔力を感じている。しかもかなり大きなものだ。マリアの魔力量と放出している 魔力量と 時間を比べれば とっくに マリアの魔力は尽きているだろうが 尚も 放出し続け 量も増えていっている。

おそらく ジェネレーターの増幅機能を利用しているのかもしれない。だが、増幅しているとは言え 長時間にわたって これ程の魔力を放出していれば体や精神への負担も半端ではないはずだ。

急いで マリアを救出しなければならない。


ビルの中に入った途端に 俺も踊子さんも立ち尽くしてしまう。ビルの内部、 壁や柱など至るところからマリアの魔力を感じる。魔力の感知を機械に頼っている踊子さんですら 感じることができているほどだ。

ビルの下部から 屋上に向けて魔力が送られ 屋上から魔力が放出されている。その魔力を送るラインの途中で大きく魔力を増幅させている部分がある。魔力の増幅させる機械が至るところに取り付けられているのだろう。

つまり このビル全体が巨大な魔力増幅装置になっているようだ。


「魔力の流れからすると、マリアは地下階だと思うけど・・・・」


ビルの案内板を見ると 地下は三階まであり おそらくだが 一般客が入れない 機械室などのフロアーもあるはずなので 地下は四、五階まであると思ったほうが良いだろう。

魔力を辿っていけばマリアを 見つける事は可能だが 魔力を送るラインは建物の中を複雑に配管され その上 途中で増幅されているので ただ、強い魔力を辿っていけばよいと言う訳にはいかなさそうだ。見つけるだけでも 相当な時間がかかりそうだが 俺達には時間がない。マリアの身も心配だが 魔力がたまり 魔法を発動されれば この町を中心に幾つかの町が灰塵に帰すことになる。


「直輝君、どうする?しらみ潰しに調べている時間はないぞ?」


「どうするって、言われてもな・・・・WWAの力で設計図とか入手できないかな?」


「入手は可能だろうが、この様子だとこのビルの設計段階からアレティーアが関与しているだろう。となると 表に出ている図面では マリアさんの居る隠し部屋のような場所は載っていないだろう」


そう簡単にはいかない。設計図か・・・・設計図・・・・


『よろしければ お手伝いいたしましょうか?』


と、突然 頭の中にアイリスの声が響いた。最近 かまってやってないから若干 存在を忘れていた・・・・。


『手伝いって?』


『私は 時間と空間の魔法を得意としています。空間認識は お手の物です』


『つまり、マリアの居る場所を特定できると?』


『直接 マリア様の居場所は分かりかねますが 建物の構造は把握できます。魔力の道筋を辿っていけばマリア様の下に行く付くのでしたら 特定できると言えます』


『それでいい!頼む!!』


『ただ・・・・』


『なんだ、分かっているだろうが 急いでいるんだ!』


『ただ、実体化しませんと 構造の把握が難しいのですが・・・・』


んんんん・・・・・。踊子さんが居るしな・・・・と 悩んでいる場合ではない!一刻を争う状況なのだから・・・・・。


『止むを得ない。許可する!いや!!!ちょっと待て・・・・。出てきて良いが この前のアラブの踊り子のような服はやめろ』


『承知しております。今回もちゃんと ご主人様の趣味に合わせますので ご安心を』


その言葉を最後に 何もない空間から突然 一人の少女が姿を現した。今回は・・・・俺達の通う学校の女子の制服 つまり セーラー服を着ている。

うん!俺の趣味だ!!って・・・・・・。

まあ 前の服より断然この方がイイが・・・・いろいろな意味で・・・・。

しかし 目を白黒させ アワアワしている踊子さんに なんと言ったものか。


「な、直輝君、そ、そ、その子は何だ!一体 どこから 現れたのだ!?」


もう、踊子さんには 誤魔化しのきかない所まで 来てしまっている様な気がする。いや、多分 俺自身が 踊子さんに見せたいだけなのかもしれない。俺自身の全てを・・・・。


「この子は アイリスって言って えーーーと・・・・俺の・・・・・使い魔なんだ」


「使い魔!?」


「うん。使い魔。

アイリス それじゃあ 頼む」


「仰せのままに ご主人様」


アイリスは 俺から必要な魔力を引き抜き 目を閉じ 手を広げ建物の内部を 走査し始める。


「直輝君・・・・色々聞きたいことがあるのだが・・・・」


踊子さんは アイリスに視線をやり しばし彼女の様子を観察した後 その視線を俺に戻す。少し 寂しげな表情をしながら呟いた。


「私には 教えてもらえないのだろうな・・・・」


「踊子さん・・・・・俺は人の好意を利用したり 見て見ぬ振りをしたり もう そんなことは したくないと思っているんだ。踊子さんが俺の全てを見て それでも今と同じ気持ちでいてくれるなら 俺もちゃんと踊子さんと向き合いたい」


「それは いずれ近いうちに全てを語り 全てを見せてくれると言うことか?」


「うん」


「ご主人様 構造解析が終わりました」


アイリスは 体を擦り付けながらも視線は踊子を値踏みするように 向け言った。


「コラ!離れろ」


「もっと私にもかまってくれませんと 拗ねますわよ。それにしても さすがはご主人様です。ご主人様は世界中の美姫を手中に納めるつもりなのですね!」


「バカ!お前は何を・・・・」


俺の反論も聞かないまま アイリスは姿を消し 俺の意識下に沈んでいった。


『ご主人様、これがこの建物の構造です。ご主人様のお役にたてるのが私の何よりの喜びです』


アイリスは 記憶を受け渡すと 更に深い所へと沈んでいった。

ジトッとした視線を感じる。小さなため息の後 踊子さんは言った。


「直輝君には 聞かなければならないことが 山ほど増えたが 兎に角 今は急ごう。居場所が分かったのだろ?」


「・・・・うん。そうしよう」


目的の場所は 一般客の入れない機械室の更に下に位置していた。WWAの指令室のように秘密基地のようになっているのだろう。しかも 地下にあるにも関わらず 一旦 上の階に上がったり下がったり 何度も繰り返さなければ その部屋に通じるエレベーターには辿り着けなかった。簡単に言えば 迷路だった。アイリスが居なければ 見つけるのに 数日 いや、一週間 一ヶ月かかっていたかもしれない。アイリスの手柄は大きい。今度 しっかりかまってやろう。


長いエレベーターを降り 通路を歩く。WWAの通路と違い 薄暗い。如何にも 秘密基地と言った雰囲気を醸し出していた。

突き当たりの扉の前で立ち止まり 踊子さんを見る。


「この中だ。行くよ?」


「ちょ、ちょっと待ってくれ。正面から乗り込むのか!?」


「だって 正面からしか 入れないし」


「だからと言って・・・・せめて作戦くらいは?」


「なんとかなるよ!踊子さんは 何かあったときは 自分の身を守ることだけ考えて行動してね」


あまりの緊張感の無さに踊子さんは呆れた様子だ。

アレティーアの連中が直輝や WWAの人達 魔法を使えない普通の人を 見下しているように 直輝もどこかで この世界の魔法使い 魔術師達を 見下していたのだろう。だから 何も考えず ただ正面から突っ込もうとしている。

この後 その傲慢とも言える行為を後悔することになるのだった。




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