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勇者と姫のそれから  作者: べるこさん
第2章 地球編
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ある日の夕方 ファーストフード店の一画に 制服を着た数名の男女が顔を付き合わせ 相談をしている。その話の中心に居るのは 直輝のクラスメイトの桜だった。彼女達は 踊子の ファンクラブもしくは 親衛隊と言った存在の中心メンバーなのだ。しかし 彼女たちがしているのは試験勉強ではなかった。


「姫様にも意外に乙女なところがあったんだな」


「あんな、熱烈な告白を聞いて 認めないわけにはいかないわね」


「そうだな。姫様の幸せな顔を見れば 俺達も幸せと言うものだ」


皆が、踊子の幸せを願う言葉を掛け合っているなか ただ それを聞き黙っていた桜が 神妙な面持ちで口を開いた。


「みんな 本当にそれでいいの?」


「えっ?」


「私は・・・・私も姫様の幸せを願う気持ちはみんなと一緒よ。だけど・・・・だけど直輝君は、彼は 以前から遥さんとも噂があって それにあの留学生のマリアさんとも 婚約者だって言うじゃない!本当に 彼みたいな人と姫様が・・・・」


「そうだな・・・・」


「確かに・・・・もし 姫様を泣かすようなことがあれば その時こそ・・・・」


皆の気持ちが自分の側に傾いてきたことを確信し桜は 畳み掛ける。


「そうよ!姫様に悲しい思いをさせないためにも 今のうちに彼を・・・・彼を排除したほうがいいと思うの」


桜の言葉に一同は息を飲む。


「彼の排除に 反対の人は居る?」


しばらくの沈黙が続く。沈黙は是と 桜は納得したが どうしたものか?一同も 意見は統一されたが どうしてよいのか 悩んでいるようだった。


「排除するのはいいが どうする?」


メンバーの一人が 疑問をそのまま口にするが それを 今 悩んでいるのだと 冷たい視線を集めることとなった。

特に 良い意見も出ないまま 時間だけが過ぎさって行く。トレイに乗せられた紙コップの表面は汗をかき トレイを濡らし 中の氷がほとんど溶けた頃 一人の陰気な雰囲気の男が いつの間にか立っていた。

期末考査直前 7月に入って間もないこの時期に その男は 古臭い ローブを羽織っている。


「お困りのようですね。宜しければ 知恵を授けましょうか?」


突然 現れ 突然 声をかけてきた男に 一同は 不信に思いながらも 何故か 目を離せないでいる。


「あなたは?」


「僕ですか?僕は 魔術師です」





マリアの転入から数日が経った。日々 様々な視線を浴びつつも ようやく 少しはなれてきた。踊子さんの告白もあったがそれ以降 特に何かがあると言うわけでもなかった。強いて言えば 以前より 話す機会が増えたのと 軽いスキンシップくらいだ。

遥との話し合いも うやむやのまま まだしていない。

しかし、平穏とは言いがたいが 落ち着いた日々は終わりを告げた。その日もマリアと共に帰宅すると 玄関の中でこまちが仁王立ちで居た。

玄関の扉を開けるやいなや掴みかかる勢いで詰め寄ってくる 妹。


「お兄ちゃん 説明してくれるかな!」


「いきなり 何だ?まず、何を説明するのか 説明しろ」


「とぼけないで!舞姫様のことよ。付き合ってるの!?もう 中等部でも その噂で 持ちきりよ。しかも何?マリアさんとは婚約してるって?どうなってるの?更に はるちゃんは 愛人なの?美人を侍らして ハーレムでも作るの?どんな ジゴロなのよ!」


「おいおい ハーレムって、ジゴロって まあ、兎に角落ち着け」


「これが、落ち着いてられるわけ ないでしょ!学校中から 真相を聞き出そうと 質問責めにあうは、姫様のファンクラブの人には 睨まれるは、私はす凄く迷惑してるんだから!」


「おい!お前 変なことされてないだろうな!」


俺は思わず興奮してしまう。あまりの勢いにマリアもこまちも 呆気にとられている。だが、確かに落ち着いてなどいられない!俺のこまちに何かあれば・・・・。


「お兄ちゃんこそ落ち着いて!」


「これが、落ち着いてなどいられるか!」


「何もされてないから」


「直輝さん お気持ちは分かりますが 兎に角 今は落ち着きましょう」


二人に宥められ 少し落ち着きを取り戻すが これは憂慮すべき問題だ。


「お兄ちゃん 今のところ 本当に何もないから。でも このままだと ちょっと・・・・。だから 本当の事を聞きたいのよ」


俺のせいで こまちに何かあれば・・・・あまり気乗りはしないが ここは踊子さんに頼むしかないか。俺の面倒事とこまちの安全を比べれば 答えは明白だ。

ただ、今はこの場をどう 切り抜けるか・・・・。


「えっと 踊子さんとは 何もない。ただ、踊子さんに言い寄られているだけだ。マリアとは その なんだ ・・・・まあ、色々あるんだ。遥は・・・・」


「全然 答になってない!

まあ、いいわ。姫様とは何もないんだね?」


「ああ」


こまちは踵を返し数歩 歩き立ち止まり 背を向けたまま ポツリと呟く。


「それと はるちゃんのこと ちゃんと考えなさいよ」


「ああ 分かっている・・・・」


そう言い残し 今度こそ自分の部屋へと戻って行った。

俺は 妹の一言に 返す言葉もなく マリアに声をかけられるまで ただ、その場に立ち尽くしてしまう。

全く 情けない話だ・・・・。


夕食が終わり 俺は一人 部屋に居た。マリアは 今 風呂に入っている。軽く溜息をついたあと スマホを手に取り指を滑らせ 目的の名前を表示させた。『踊子』最後の抵抗とばかりに 躊躇うが諦め その名前をタップした。ちなみに 連絡先は 半ば強制に登録させられた事は ここで 明言しておく。バカな友人が 踊子さんの番号を1万で売ってくれたとか言い出すので ビックリした。自分で本人に聞けばタダだし 買った番号では 連絡できないだろうに・・・・。

踊子さんは ほぼコールもしないうちに電話に出てくれた。


「直輝だけど 夜分にごめん。今 大丈夫かな?」


「もちろんだ!直輝君に閉ざす扉など私は持ち合わせていないさ」


なんと言うか 踊子さんは 一々物言いが大袈裟だ。


「ちょっと 相談と言うか お願いがあるんだけど」


「直輝君に頼られるとは 感激の至りだ」


・・・・・。踊子さん 花組みとか 星組とか似合いそうだ。


「こまち・・・・妹の事なんだけど、うちの学校の中等部に通っているんだけど そこでも 俺と・・・・その・・・・踊子さんとの噂が・・・・で、中等部のファンクラブの子達に睨まれているらしくて」


「なんと・・・・私達の所為で こまちさんが いじめにあっているというのか!?」


「いや、まだ実害はないみたいだけど 少し怖い思いはしているみたいだ。だから 踊子さんから 一言言ってもらえないかと思って」


「分かった!明日にでも乗り込んでその様なファンクラブなど 私 自ら潰してくれるわ!!」


「いやいや、そこまでしなくていいから。過激な事をして かえって暴発されてもこまるし」


「うむ。そうだな・・・・では 桜にでも言って ファンクラブの統率を取る様に指示しておこう」


「うん。そうしてくれるとありがたい」


「その・・・・それでだ・・・・お詫びといっては何だが・・・・一度 こまちさんと お会いできないだろうか?」


「それくらい 構わないけど。こまちも 踊子さんのファンだから きっと喜ぶよ」


「おお!そうか・・・・それでは 将来の小姑殿との関係も良好で やっていけそうだな!」


「・・・・・・・・・・」


「モシモシ 直輝君 どうした?」


「兎に角 ファンクラブの事は よろしく頼むよ」


「ああ、任せてくれ」


「それじゃあ お休み」


「また 明日 学校で・・・・お休み」


どっと、疲れた。だけど これで こまちの方は何とかなるだろう。もし これでも駄目なら 踊子さんじゃないけど 俺が乗り込んで潰してやる。こまちを 傷付けるやつは 俺が許さない。




翌朝

玄関を出ると いつものように遥と踊子さんが待っていた。お互いに 挨拶を交わし 学校へ向かい歩き出そうとするが 踊子さんが うちの家を気にして 歩き出そうとしなかった。


「踊子さん どうしたの?」


「とりあえず こまちさんに 一言 謝っておこうと思ったのだが」


「こまちは もう家を出たよ。中等部のほうが遠いからね」


「そうか・・・・」


納得した踊子さんは ようやく歩き出し 昨日の件について 話し出した。


「あの後 桜に電話をしたのだが 通じなくてな・・・・。今日 学校で 言い含めておくので 安心してくれ」


「ああ、頼むよ」


話が分からない マリアと遥が 尋ねてきたので こまちの事や 踊子さんに相談した事を説明した。


「それは 直輝が悪いのよ」


聞き終わった遥は ジトッとした目をしながら言った。


「でも 相変わらず こまちちゃんのことになると 行動が早いと言うか 見境がないというか・・・・」


「私も あんなに取り乱した直輝さんを見たのは初めてでした」


マリアも 遥の言葉に同意する。でも 家族の事なんだから 当たり前だろ・・・・・?


「本当にシスコンなんだから。昔、小学校の頃ね・・・・・・・・」


マリアと踊子さんは 遥から俺のガキの頃の武勇伝・・・・いや、黒歴史を聞き 三人で盛り上がっている。遥、止めてくれ!俺の痛々しい過去を暴露するのは・・・・。確かに 小学校の頃 こまちを泣かした同級生の男の子の家に殴り込みに行ったりしたことはあるけど。今思えば なんであんなこと したんだろう?


「ねぇ 直輝」


「なんだよ?」


昔話の最中 不意に遥に呼び掛けられた。


「ねぇ マリアさんとも 踊子さんとも 婚約者なんだよね?」


「いや、だから、それは・・・・」


必死に 言い訳をしようとする俺だが、有無を言わさず 遥は言葉を重ねてくる。


「小さい頃さ 私が直輝のお嫁さんになるって言ったら いいよって返事したよね?それじゃあ 私も直輝の婚約者って事でいいんだよね?」


「おま、そ、それは・・・・そんな子供の頃の・・・・」


「もう、決めたの!」


遥はそう言った後 可愛く舌を出し 踊子とマリアに抱き付いた。


「これで、私もあなた達のライバルね」


「望むところだ!」


マリアと踊子さんは そんな言い合いをし マリアはその様子を暖かい眼差しで見守っている。

こまちの言う通り 段々 ハーレムの主のようになってきた。これで、向こうの世界にも後二人、待たせている女性が居ると言えばどうなるのだろう・・・・。




その日の夕方

授業が終わり こまちはそそくさと 校門を出て 帰宅しようとしていた。

こまちは 薙刀部に所属しているが ここ数日は部活に参加もできていない。理由は 踊子と直輝の噂で、まともな練習ができる状態ではなく 部長や顧問の先生からも しばらく 休むように言い渡されているからだ。

こまち自身 踊子の薙刀を振るう姿に憧れ薙刀部に入部したのだが 今では 薙刀自体を好きになり練習にも 必死に打ち込んでいる。

名残惜しそうに 振り返り学校を見つめた後 小さく溜め息をつき 家に向かい歩き出した。


しばらく歩くと目の前には数名の高校生の男女がいた。制服は自分の通う 高等部のものだ。少し嫌な予感を感じつつ 集団の横を通り過ぎようとしたとき 声をかけられた。


「あなたが こまちさんかしら?」


女性の一人が 優しい口調で尋ねてくる。


「はい、そうですが・・・・えっと・・・・?」


「私達は 高等部の舞姫様のファンクラブの代表なの」


こまちが怪訝そうに 見詰めると 彼女は 優しく微笑みながら続けた。


「ごめんなさいね。ファンクラブの子が迷惑をかけているみたいで。ちゃんと中等部にも 言い聞かせておくから これからは 安心して」


「はぁ、それはお手数をかけました」


こまちは まだ、飲み込めていないのかキョトンとしている。


「ただね、私達も情報が少なくて 噂だけが先行しちゃって 困っているのよ。良かったらあなたからも少しお話を聞きたいのだけど ちょっとで、いいので時間をもらえないかしら?」


「えっ?私からですか?でも私はなにも知りませんよ?」


「いいのよ。お兄さんの人柄とかだけでも 随分 参考になるし。お詫びと言ってはなんだけど カフェで、ケーキでもご馳走するから 食べながら 話を聞かせてちょうだい」


「ケ、ケーキですか!わ、分かりました!」


そして、連れられ こまちは町へと消えていった。

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